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8 最果ての国へ(5)
8ー6 一人じゃない!
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8ー6 一人じゃない!
グリフォン様は、ベッドから枕を一つ取ると私に告げた。
「ベッドは、エリンが使うといい。俺は、床で眠るから」
「そんな!床でなんてダメです、師匠」
私は、グリフォン様に言った。
「ベッドで一緒に眠りましょう、師匠」
「エリン、しかし」
「大丈夫ですよ」
私は、にっこりと微笑んだ。
私は、ベッドの真ん中に結界を張った。
「この結界は、魔物の攻撃だってなかなか通さないものですから、師匠も安心して休まれてください」
私が言うとグリフォン様は、なんだか複雑そうな表情を浮かべた。
「何も結界まで張らなくても」
「大丈夫です」
私は、ふんすっと意気込んだ。
「師匠の身の潔白は、私がお守りします!」
そうして私たちは、眠りについた。
私は、夢を見ていた。
夢の中で私は、どこかふかふかした白い空間の中を漂っていた。
ぽうっと光が灯り、私の心に声が届いた。
『エリン、そのままじゃ君は、今生でもまた一人ぼっちのままだよ?』
声は続けた。
『いつか、その心の檻を破らなくては君は、永遠に一人のままだ』
私は、声に反論したかった。
「だって私には、それがわからないのよ?愛も恋もわからない。どうすれば人を愛せるの?どうすれば恋することができるの?教えて!お願いだから」
光は、ゆらゆらと揺れながら告げた。
『君は、人のことを大切にすることができる子だ。きっといつかわかる筈だよ。恋も愛も、みな、君の心の中に答えはあるんだから』
「エリン?」
私は、誰かの呼び声にゆっくりと目を覚ました。
少し離れたところから覗き込んでいる心配そうな顔をしたグリフォン様。
うん?
私は、はっと気づいた。
私は、泣いていた。
グリフォン様は、私に訊ねた。
「大丈夫か?エリン」
「だ、大丈夫です」
私は、すぐに涙を拭った。
「ちょっと夢を見てて」
「夢?」
「はい」
私は、答えた。
「昔の夢、です」
私は、昔からいつも一人だった。
お母様がなくなってからは、ずっと一人ぼっちだった。
だけど、今は違う。
実は優しくて過保護だった義弟ランスロットや、ちょっと変わり者の師匠がいてくれる。
それにリリスさんとラッシーもいる。
私は、大丈夫だ。
私は、一人じゃない。
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「ベッドで一緒に眠りましょう、師匠」
「エリン、しかし」
「大丈夫ですよ」
私は、にっこりと微笑んだ。
私は、ベッドの真ん中に結界を張った。
「この結界は、魔物の攻撃だってなかなか通さないものですから、師匠も安心して休まれてください」
私が言うとグリフォン様は、なんだか複雑そうな表情を浮かべた。
「何も結界まで張らなくても」
「大丈夫です」
私は、ふんすっと意気込んだ。
「師匠の身の潔白は、私がお守りします!」
そうして私たちは、眠りについた。
私は、夢を見ていた。
夢の中で私は、どこかふかふかした白い空間の中を漂っていた。
ぽうっと光が灯り、私の心に声が届いた。
『エリン、そのままじゃ君は、今生でもまた一人ぼっちのままだよ?』
声は続けた。
『いつか、その心の檻を破らなくては君は、永遠に一人のままだ』
私は、声に反論したかった。
「だって私には、それがわからないのよ?愛も恋もわからない。どうすれば人を愛せるの?どうすれば恋することができるの?教えて!お願いだから」
光は、ゆらゆらと揺れながら告げた。
『君は、人のことを大切にすることができる子だ。きっといつかわかる筈だよ。恋も愛も、みな、君の心の中に答えはあるんだから』
「エリン?」
私は、誰かの呼び声にゆっくりと目を覚ました。
少し離れたところから覗き込んでいる心配そうな顔をしたグリフォン様。
うん?
私は、はっと気づいた。
私は、泣いていた。
グリフォン様は、私に訊ねた。
「大丈夫か?エリン」
「だ、大丈夫です」
私は、すぐに涙を拭った。
「ちょっと夢を見てて」
「夢?」
「はい」
私は、答えた。
「昔の夢、です」
私は、昔からいつも一人だった。
お母様がなくなってからは、ずっと一人ぼっちだった。
だけど、今は違う。
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私は、大丈夫だ。
私は、一人じゃない。
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