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9 最果ての国へ(6)

9ー2 家族

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 9ー2 家族

 姉弟なのに!
 でも、これが最後かもしれない。
 最初で最後のキス。
 私は、ランスロットから体を離すとグリフォン様の方へと向かった。
 私は、グリフォン様に引き上げられて地竜の上に股がった。
 グリフォン様は、私を後ろから抱くようにして手綱を握ると地竜を駆けさせた。
 私たちを乗せた地竜は、駆け続けた。
 アルカザルク王国の豊かな緑の風景が流れていくのを私は、ただ眺めていた。
 本当なら馬車で何日間もかけて旅する筈だった街道をグリフォン様は、たった一日で駆け抜けた。
 夜になってもグリフォン様は、足を止めることはなかった。
 街道が途切れて荒れ果てた景色が広がる。
 あきらかに人の行き来することのない地へとやってきたことがわかった。
 グリフォン様は、川の近くの乾いた場所を選ぶと地竜をとめた。
 「今夜は、ここで少し休もう」
 「はい」
 私は、地竜に水を飲ませているグリフォン様の横で手足や顔を洗った。
 といっても短剣しか持ち出せなかったので拭くものもない。
 私は、ぶるっと体を震わせた。
 もちろんのことだが食べ物もない。
 グリフォン様は、追ってに見つかるといけないからと火をおこすこともなかった。
 夏とはいえ、北の地の夜は寒い。
 私が体を抱き締めて震えているとグリフォン様が私を引き寄せて背後から抱き締めてくれた。
 暖かい。
 私は、昼間の疲れからかうとうとしながらラントルツォで別れたランスロットのことを考えていた。
 ランスロット。
 私の美しくて優秀な義理の弟。
 初めて出会ったとき、私は、その小さな金色の髪の少年のことを美しいと思った。
 こんな美しい弟ができると思うと誇らしかった。
 けれど。
 私は、家族ではなかった。
 父と新しい母とランスロットは、家族だった。
 でも、私は違っていた。
 私たちは、同じ屋敷で暮らしていたけど口をきくことも許されなかった。
 だけど、今は違う。
 私とランスロットは。
 「エリン!」
 私は、グリフォン様に呼び起こされてはっと気がついた。
 少し眠っていた?
 グリフォン様は、私を立ち上がらせると再び地竜に乗せ駆け出した。
 
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