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9 迷宮とドラゴン

9ー7 おかえりなさい!

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 9ー7 おかえりなさい!

 眩しい朝の光が俺たちを照らす。
 どこからか美味しそうな朝餉の匂いが漂ってくる。
 さわかやかな夜明けの風に吹かれて俺たちは、顔をあげた。
 トカゲの谷の朝だ。
 どこからか鳥たちのさえずりが聞こえる。
 俺は、空腹で腹がぐぅっと鳴った。
 クローディア母さんの作った朝御飯が食べたい!
 「あっ!若様だ!」
 広場の水場に顔を洗いにきた小さな子供たちが俺に駆け寄ってくる。
 「帰ってきてたんだ!」
 きゃっきゃいってる子供たちの頭を撫でてやりながら、俺は、そこにいる全員の姿を見回す。
 みな、呆気にとられている。
 まあ、無理もないな。
 急に地下に押し込めれて、その次に、ここに現れたんだ。
 驚かないほうがおかしいよ。
 「ここは、天国か?」
 セツラが囁く。
 俺は、微笑んだ。
 「トカゲの谷へようこそ!」
 不意にどこからか竜の鳴き声がきこえてきてオウラが天を仰いだ。
 「ダルメス?」
 黄金色に輝く美しいトカゲの谷の夜明けに竜の群れが降りてくる。
 なんだ?
 風圧に飛ばされないように俺は、体を低くして耐えていた。
 風が収まると、俺たちは、信じられない光景を目の当たりにした。
 竜たちが白狼と灰色の狼たちを取り囲んでいる。
 やばい!
 俺は、一触即発になるのを感じてオウラに止めさせようと思った。
 「オウラ!」
 「大丈夫だ」
 オウラが囁く。
 「竜たちは、あの狼たちに敬愛の情を表している」
 マジですか?
 俺は、竜たちが白狼と灰色の狼たちを囲んで踞っているのを見つめた。
 もしかして?
 「ヴォルツさん?」
 俺が呼び掛けると白狼が一瞬、俺の方を振り向いた。
 そして、次の瞬間には、ヴォルツさんと飛竜騎士団の面々がそこにいた。
 信じられない!
 ヴォルツさんは、ホッと胸を撫で下ろしている。
 「よかったよ。もう少しで坊主を食わなきゃならないところだった」
 「あら、あら、あら」
 広場へとやってきたクローディア母さんとティミストリ父さんがあきれたように立ち尽くす。
 「朝からずいぶん賑やかだこと!」
 「母さん!」
 俺は、クローディア母さんに抱きついた。
 「ただいま!母さん!」
 「おかえりなさい、クロージャー」
 クローディア母さんは、俺を抱き締めてくれた。
 「おかえり!」
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