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夢の中の神の別の姿である女は、彼女のいる世界を創造した神によって救われた。
女の存在する世界を創造した神は、だいぶん古い神なのらしい。
つまり、女の存在する世界もまた、古より存在するものだった。
神が言うには、それだけの長い時の流れる間、一つの世界を整合性を保ちながら、維持し続けるにたる力を持つ神なのだ。
きっと、かなり名のある神に違いなかった。
しかし、その神は、女に自らをKと名乗った。
「古い神ほど、その名を秘するものだ」
そう、神は、言った。
神の夢の中で、Kは、女に言った。
彼女が初めて新しい世界を創造したのは、彼女がまだ7歳の頃のことだった、と。
それは、小さな世界だった。
暗闇の中に咲く蓮の花のように、ぽかりと浮かびでた小さな世界。
だが、実に、優しさに満ちた世界だったのだという。
古き神が、その腕に抱き寄せたくなるほどに愛しき世界だった。
「その世界は、どうなったんですか?」
僕がきくと、神は、答えた。
「たぶん、もう、消滅してしまったのだろう。何しろ、その世界の創造は、彼女の仕事の内には、入っていないと、古い神は、言っていた」
古い神が言うには、女が、世界創造主保護機構によって創造主として認定されたのは、二つの世界を創造したためだった。
一つは、華姫と呼ばれる現人神の治める世界だという。
それは、白い男が産まれた世界だった。
白い男は、今の華姫の兄だった。
「華姫というのは、その世界を支える柱のような存在らしい。そして、その華姫が、最初に異変に気づいたのだ」
華姫は、自分たちの世界の創造者である女が、新しい神になるだろうことに気づいた。
そして、同時に、新しい神に殺意を持つものがいることにも、彼女は、気づいた。
世界の創造者たるその女が死ねば、華姫の世界もまた、終焉を迎えることになる。
己れの守るべき世界のために、すくにでも、女の側に駆けつけ、新しい神を守る盾と成りたかったが、いかんせん、華姫は、世界の柱としてその世界から離れることは、かなわなかった。
「だから、華姫は、あの、白い男を自分の身代わりに新しい神の元へと送ることにした」
白い男は、華姫の最も信頼できる兄だった。
「だが、問題は、男の持つ能力だった」
その白い男は、ある意味、最強の男だった。
しかし、彼自身には、特に何の力もなかった。
彼の持つ能力は、その特殊さ故に、忌避されていた。
彼自身も、その能力を嫌い、自ら、それを封じていた。
その能力とは、何だったのか。
「彼の能力は、他の全ての生命体に、彼自身を守るために、犠牲になることを強いる能力だった」
事実、新しい神である女を守るために、彼が敵の前に立った時、女を守ろうとする彼を守るために、関係のない多くの 人々が身を犠牲にして殺された。
それは、呪われた能力だった。
そのために、白い男は、華姫の兄であり、その身を守るべき兵士でもありながら、一人、世界の果てのような地に隠れ住んでいた。
そんな彼が封じていた能力を解放して異世界にいる女の元へとやって来たのは、その女のためでは、なかった。
全ては、華姫である妹のためだった。
彼の世界においてただ一人、彼を愛した妹。
その妹のために、彼は、戦うことにしたのだ。
例え、その敵が何者であるにしても、彼には、関係がなかった。
全ては、ただ一人のために。
女の存在する世界を創造した神は、だいぶん古い神なのらしい。
つまり、女の存在する世界もまた、古より存在するものだった。
神が言うには、それだけの長い時の流れる間、一つの世界を整合性を保ちながら、維持し続けるにたる力を持つ神なのだ。
きっと、かなり名のある神に違いなかった。
しかし、その神は、女に自らをKと名乗った。
「古い神ほど、その名を秘するものだ」
そう、神は、言った。
神の夢の中で、Kは、女に言った。
彼女が初めて新しい世界を創造したのは、彼女がまだ7歳の頃のことだった、と。
それは、小さな世界だった。
暗闇の中に咲く蓮の花のように、ぽかりと浮かびでた小さな世界。
だが、実に、優しさに満ちた世界だったのだという。
古き神が、その腕に抱き寄せたくなるほどに愛しき世界だった。
「その世界は、どうなったんですか?」
僕がきくと、神は、答えた。
「たぶん、もう、消滅してしまったのだろう。何しろ、その世界の創造は、彼女の仕事の内には、入っていないと、古い神は、言っていた」
古い神が言うには、女が、世界創造主保護機構によって創造主として認定されたのは、二つの世界を創造したためだった。
一つは、華姫と呼ばれる現人神の治める世界だという。
それは、白い男が産まれた世界だった。
白い男は、今の華姫の兄だった。
「華姫というのは、その世界を支える柱のような存在らしい。そして、その華姫が、最初に異変に気づいたのだ」
華姫は、自分たちの世界の創造者である女が、新しい神になるだろうことに気づいた。
そして、同時に、新しい神に殺意を持つものがいることにも、彼女は、気づいた。
世界の創造者たるその女が死ねば、華姫の世界もまた、終焉を迎えることになる。
己れの守るべき世界のために、すくにでも、女の側に駆けつけ、新しい神を守る盾と成りたかったが、いかんせん、華姫は、世界の柱としてその世界から離れることは、かなわなかった。
「だから、華姫は、あの、白い男を自分の身代わりに新しい神の元へと送ることにした」
白い男は、華姫の最も信頼できる兄だった。
「だが、問題は、男の持つ能力だった」
その白い男は、ある意味、最強の男だった。
しかし、彼自身には、特に何の力もなかった。
彼の持つ能力は、その特殊さ故に、忌避されていた。
彼自身も、その能力を嫌い、自ら、それを封じていた。
その能力とは、何だったのか。
「彼の能力は、他の全ての生命体に、彼自身を守るために、犠牲になることを強いる能力だった」
事実、新しい神である女を守るために、彼が敵の前に立った時、女を守ろうとする彼を守るために、関係のない多くの 人々が身を犠牲にして殺された。
それは、呪われた能力だった。
そのために、白い男は、華姫の兄であり、その身を守るべき兵士でもありながら、一人、世界の果てのような地に隠れ住んでいた。
そんな彼が封じていた能力を解放して異世界にいる女の元へとやって来たのは、その女のためでは、なかった。
全ては、華姫である妹のためだった。
彼の世界においてただ一人、彼を愛した妹。
その妹のために、彼は、戦うことにしたのだ。
例え、その敵が何者であるにしても、彼には、関係がなかった。
全ては、ただ一人のために。
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