ゲームメイカー

トモモト ヨシユキ

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     真っ暗な夜の中だった。
    私は、隔絶された場所にいた。
    深い森の奥にあるその神の社の中で、神は泣いていた。
    何故、泣いているのか?
   それは、私には、わからなかった。
   私は、神に問う。
   何故、あなたは、泣いているのか、と。
    神は、森の果てを指差した。
   そして、私に言った。
   「行け」
    神が、私に、去れと言ったのか、それとも、指差した方へ行けと言ったのか。
    私は、理解出来なかった。
    だが、神は、それ以上は、何も言うことは、なかった。
    私は、神の指差した方へと歩き出した。
    しばらく、森の中を行くと、草も生えていない不毛の地へとたどり着いた。
   そこは、墓場だった。
   見渡す限り、墓があった。
   「墓地」
   「そうだ」
    いつの間にか、私の側に立っていた神が言った。
     「そこが、そうだ」
     私は、神が指し示した墓を見た。
   そこは、まだ、新しい墓のようだった。
   「そこに、お前が欲しがっているものがある」
    私は、その墓の前に立っていた。
   神は、私に言った。
   「掘り出すがいい。お前は、それを手に入れるために、この世界を創ったのだから」
   私は、素手で土を掘り返していった。
   やがて、両手が傷み、血が滲んできた。
   それでも、私は、掘ることを止めなかった。
    何故なら、ここに、私が欲してやまない何があるのだから。
    両手が血だらけになっても、私は、土を掘り続けた。
    やがて、土の中から何かが現れてきた。
    それは、見知らぬ少年、いや、少女の死体だった。
     黒髪の、その少年か、少女だったものを、私は、見下ろして立ち尽くした。
    こんな筈では、なかったのに。
    立ち尽くす私に、神は、言った。
    「どうだ、欲しかったものが手に入った気持ちは。これで、満足か」
     この世界を創造する程に、お前は、これが欲しかったのだろう?
    だが、私には、何故、こんなものが欲しかったのかが、わからなかった。
     本当に。
    私は、考えた。
    私は、これが欲しかったのだろうか?
    だとしたら、これは、いったい、何なのか?
    この子供の死体は、何を私に伝えたがっているのか。
     わからない。
    私は、神に言った。
    私には、これが何なのか、わからない。
    神が涙を流しながら言った。
    「わからないだろう」
     神は、言った。
    「お前には、これが何なのか、決してわかるまい」
    神の叫びに、周囲の空間が巻き込まれ、渦に飲まれていく。
   お前の、知らないもの。
   知ることの出来ないもの。
   「これは」
    
   私は、目を開いた。
   もう、夜は、終わっていた。
   私は、天井を見つめて呟いた。
   「これが、愛?」
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