73 / 86
8 異界との狭間
8ー3 意趣返し
しおりを挟む
8ー3 意趣返し
翌日。
僕は、美しい白色の礼服を身に付けてルーデニア兄上の隣に立っていた。
王位継承の儀式は滞りなく行われルーデニア兄上は、無事にこの国の王となった。
民も王宮の者たちもみな口々に新しい王を褒め称えていたが僕は、無言だった。
僕の首には、沈黙の魔道具がつけられていて僕は、声を出すことができなかった。
「新しい王と王妃に祝福を!」
王宮のバルコニーから見下ろす人々の歓声に僕は、圧倒されていた。
本当なら僕もこの人たちと一緒になってルーデニア兄上の王位継承を祝っていたことだろう。
だが。
今の僕にはそれはできないことだった。
王位継承式の祝いの宴がすみ僕は、離宮のいつもの部屋へと戻された。
ロナが僕のために湯を用意してくれて僕は、風呂で体を洗われていた。
ロナが僕のもとに自分以外の使用人を近づかないため今でも僕の身の回りの世話はロナ一人でしてくれていた。
「湯加減は?」
僕は、頷いた。
首に巻かれた魔道具が僕の声を奪っていた。
「マクシア様・・お痛わしい」
ロナが僕の濡れた体を布で拭きながら涙ぐむ。
僕は、裸の全身を写す姿見の前でふと自分の腹を見つめた。
ここに。
僕は、目の奥がつん、と痛むのを感じた。
僕は、妊娠していた。
もちろんヴェルデの子を、だ。
それをルーデニア兄上が命じて神官に殺させた。
僕も知らない内に全ては行われた。
僕の子供は、まだ人の形すらしてなかったのだとロナは話した。
ロナは。
神官とルーデニア兄上によって記憶を奪われた。
筈だった。
ロナは、オメガとなった僕の側に仕え続けるために自ら隷属の首輪を身に付けていた。
そのために主以外のもののかける術から守られたのだ。
全てを覚えていたロナは、悩んだ末に僕にそれを話した。
ルーデニア兄上は、怒りロナを殺そうとしたけど、もしもそんなことをしたら僕は、兄上を許さない、そう伝えた。
魔境に封じられたヴェルデのためにルーデニア兄上の形ばかりの王妃となりその子を成すことを了承した僕は、今夜からルーデニア兄上の妃として兄上を受け入れなくてはならない。
僕は、ルーデニア兄上が用意した美しい夜着を身に付けることを拒むと、いつもと同じ白いドレスシャツとスパッツという姿で寝室に向かった。
ベッドに腰かける僕を泣きそうになっているロナが見つめているのに気付いて僕は、微笑んだ。
大丈夫。
僕は、やれる。
ヴェルデのためになら、なんだってできる。
たとえ、ヴェルデと僕の子供を奪った男にだって抱かれるし、その子供も産んでやる!
僕の首もとにつけられた魔道具をロナが外そうとしたのを僕は拒んだ。
今夜、僕が声を発することはない。
兄上に抱かれて声を漏らすつもりはなかった。
それがせめてもの僕の意趣返しだった。
翌日。
僕は、美しい白色の礼服を身に付けてルーデニア兄上の隣に立っていた。
王位継承の儀式は滞りなく行われルーデニア兄上は、無事にこの国の王となった。
民も王宮の者たちもみな口々に新しい王を褒め称えていたが僕は、無言だった。
僕の首には、沈黙の魔道具がつけられていて僕は、声を出すことができなかった。
「新しい王と王妃に祝福を!」
王宮のバルコニーから見下ろす人々の歓声に僕は、圧倒されていた。
本当なら僕もこの人たちと一緒になってルーデニア兄上の王位継承を祝っていたことだろう。
だが。
今の僕にはそれはできないことだった。
王位継承式の祝いの宴がすみ僕は、離宮のいつもの部屋へと戻された。
ロナが僕のために湯を用意してくれて僕は、風呂で体を洗われていた。
ロナが僕のもとに自分以外の使用人を近づかないため今でも僕の身の回りの世話はロナ一人でしてくれていた。
「湯加減は?」
僕は、頷いた。
首に巻かれた魔道具が僕の声を奪っていた。
「マクシア様・・お痛わしい」
ロナが僕の濡れた体を布で拭きながら涙ぐむ。
僕は、裸の全身を写す姿見の前でふと自分の腹を見つめた。
ここに。
僕は、目の奥がつん、と痛むのを感じた。
僕は、妊娠していた。
もちろんヴェルデの子を、だ。
それをルーデニア兄上が命じて神官に殺させた。
僕も知らない内に全ては行われた。
僕の子供は、まだ人の形すらしてなかったのだとロナは話した。
ロナは。
神官とルーデニア兄上によって記憶を奪われた。
筈だった。
ロナは、オメガとなった僕の側に仕え続けるために自ら隷属の首輪を身に付けていた。
そのために主以外のもののかける術から守られたのだ。
全てを覚えていたロナは、悩んだ末に僕にそれを話した。
ルーデニア兄上は、怒りロナを殺そうとしたけど、もしもそんなことをしたら僕は、兄上を許さない、そう伝えた。
魔境に封じられたヴェルデのためにルーデニア兄上の形ばかりの王妃となりその子を成すことを了承した僕は、今夜からルーデニア兄上の妃として兄上を受け入れなくてはならない。
僕は、ルーデニア兄上が用意した美しい夜着を身に付けることを拒むと、いつもと同じ白いドレスシャツとスパッツという姿で寝室に向かった。
ベッドに腰かける僕を泣きそうになっているロナが見つめているのに気付いて僕は、微笑んだ。
大丈夫。
僕は、やれる。
ヴェルデのためになら、なんだってできる。
たとえ、ヴェルデと僕の子供を奪った男にだって抱かれるし、その子供も産んでやる!
僕の首もとにつけられた魔道具をロナが外そうとしたのを僕は拒んだ。
今夜、僕が声を発することはない。
兄上に抱かれて声を漏らすつもりはなかった。
それがせめてもの僕の意趣返しだった。
12
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました
こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。
魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!
松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。
15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。
その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。
そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。
だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。
そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。
「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。
前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。
だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!?
「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」
初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!?
銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる