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お嬢様との脱出③ & 注意すべき国道
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「国道を南下するよ」
7時半になろうかとしている時刻。車の通りは昼に比べれば多くは無いが、横断歩道や信号がこの南の逃走経路に選んだ都市通りの他は、かなり北に行かないと無い。そのため、車の速度は思ったより速いため、このまままっすぐ走り抜けることは出来そうに無かった。
人通りは国道に出るとそこそこ居るため、最悪この場所で見つかるかも知れないと思うが、横断歩道を渡ってから直線距離で約200メートル。それだけ無事であれば脱出は成功するのだ。
「協力者の店がここから何軒かある。気を引き締めて、そして、できるだけ早くいくよ」
「わかったわ」
彼女の足を心配して今までゆっくりと歩いてきたが、万が一ここで見つかった場合、すぐに会社に連絡が行くだろう。そして、監禁ビルから走って逃走経路の横断歩道まで向かわれた場合、距離は長くても時間的にはこっちの方がかかってしまう。それを考え、少しでも早く歩いて欲しいことを伝えたのだ。
知佳子もそれがわかっているため、短く同意する。そして、二人はゴールに向かって歩き始めた。
国道に出ると、今までゼロだった人通りが一気に増える。見渡す限り、こちら側に10人、向かいたい反対側の区域にも10人ほどだろうか。それだけの人数がぱっと確認できた。
もし、この中に協力者が居た場合、逃げ出すことが困難になってしまうだろう。そのため、注意深く周りの者達を確認するが、スマホやケータイで話しているモノは一人も見当たらなかった。だが、幾人かは危険な歩きスマホをやっているため、100%協力者では無いとは言い切れない。だが、そこまで警戒しすぎれば、歩みも遅くなってしまうため、諦めて自分が盾になる方向を考えるしか無いだろうとも思っていた。
だが、そちらの方向ばかり集中していて、完全に失念していた部分があった。
突然、閉まっていたお店のシャッターが上がり、中から人が出てきたのだ。
ほんの一呼吸の間でしか無かったが、その出てきた人物は、確実にこちらを見て固まっていた。
そして、外に出てきた要件を全て投げ捨て、慌てたようにして店の中に入っていった。
「知佳子! 見つかった!」
「え?! どこ?!」
「右の店から出てきた店員がこちらを見て慌てて戻っていった。すぐに追っ手が来ると思って良いだろう」
「不味いわね……」
「足が痛いかも知れないが、急ぐよ」
「うん……」
若干歯切れの悪い返事をする知佳子。それほど痛みが響くのだろうか。だが、彼女を背負って走ったとしても、たいして距離を稼ぐことは出来ないだろうし、他の人達に紛れ込むことも出来なくなる。そのため、彼女には足を引きずってでも歩いて貰わなければならなかった。
二人が早歩きを始めてすぐ、大きな差が開いてしまった。
そこまで痛いとは思っていなかった俺は、どうにか出来ないものかと頭を悩ます。
しかし、色々なリスクを考えると彼女に歩いて貰う方が良いと判断せざるを得なかった。
タクシーも考えたのだが、この早朝の時間に居るわけも無く、そして、二人にはお金も無かった。
スマホを利用してタクシーを配送して貰う事も本来は出来たのだが、スマホは依然取り上げられたままだ。パソコンからデータを盗み取るよりそちらを優先するべきかとも考えたことがあったが、もし上手く逃げられた後の展開を考えると、情報こそ有利になると判断しての事だ。
しかし、今ばかりはスマホを選ぶべきだったかも知れないと思い始めていた。
それ以降は協力者と思われる怪しい人物に遭遇すること無く、交差点までたどり着く。だが、渡る前に赤信号になってしまい、何台もの車が往来してしまっていた。
知佳子の顔を見ると、太った先輩に会ったときに比べればまだましだが、若干青くなってきていた。
痛みからなのか、捕まってしまうかも知れないという恐怖心からかわからない。だから、俺は彼女の背中に手を回し、軽く背を叩く。
「大丈夫」
短くそう伝えると、彼女は驚きこちらを見る。だが、すぐにまっすぐ歩行者信号に視線を戻す。
何も反応が無いと言うのに違和感を覚え、表情をしっかりと見てみると、唇が震えていた。
そこで思い出す。彼女はまだ18歳の女子高校生なのだと。それを考えれば、この状況に耐えているだけで本来は褒められるだろう。
しかし、今褒めても全く意味は無い。
確実に逃げられる事。それを最優先にするべきなのだと。
長い、いや、実際にはそこまで長い時間では無い。だが、今の俺達二人にとってはとても長い赤信号が終わり、歩行者信号に青い色が灯る。
区画としては安全な区画にたどり着ける。それを思い、二人で急いで横断歩道を渡る。
右には両車線、車が数台停まり、俺達を通す。そして、左側にも数台、車が信号で止まっている。都市通りの方からは、一台も車が来ることが無い。逃げることに成功した! と思えた瞬間、後ろから大きな声が聞こえた。
「ツヅキィィィィーーーー!!!! そこ、動くなぁぁぁぁーーー!!!!」
怒りのあまり、はっきりとした発音では無かったが、俺にははっきりとそう聞こえた。
俺と彼女の体はこわばり、横断歩道の中腹でいったん立ち止まってしまう。
そして、俺は恐るおそる振り返ると、声の主である金本、そしてそれより後ろから太った先輩が走りながらこちらに向かっていた。
本来であれば、金本はまだ出社するはずの無い時間だった。だが、運悪くか、それとも今日一人入ってくるからなのか、早い出社となっていたようだ。そして、例の協力者からの連絡か、もしくは太った先輩が俺達のことを伝え、怪しんだ金本が追いかけてきたのか。正直わからない。だが、緊急事態になったことは間違いなかった。
「知佳子! 急ぐよ!」
慌てて彼女の背を押し、歩き始める。
そして、もう少しで横断歩道を渡り終えると思った辺りで予想だにしなかった轟音が鳴る。
その轟音は俺達を追っている二人の方から聞こえ、そして、俺達の逃げようとした北側に赤信号で停まっている車から、ガラスの砕ける音が続いた。
まさか!? と思い、彼女を俺の前に移動させ、そして振り向くと、金本の手には黒光りする拳銃があった。
持っているかも知れないとは思っていた。だが、こんな衆人環視のある中、使用する暴挙に出るとは微塵も思っていなかったのだ。
恐怖で走り逃げ出したくなる。だが、つかんでいた知佳子の肩は堅くこわばっていた。そして、彼女の俺のことをからかう時の笑顔がふと思い浮かんでは消えていった。
俺は、彼女を逃がさなくてはならない。その使命を思い出し、俺の体を盾にする様にして彼女の肩を押し歩かせる。
そして、横断歩道を渡りきり、タイミング良く赤の点滅に変わった。
逃げ切れると思い、金本の方向を見ると、もう一度銃を俺達に向かって放つ。
さらに轟音が鳴り、俺達の後ろにある店のシャッターに穴が穿たれる音が聞こえた。
しかし、彼らが渡る前に信号は赤になり、車を止めていた信号は青になる。
ガラスを割られた車は走り出すことが出来ず、運転手は怯えたままだったが、それ以外の車はここから逃げ出すかのように走り出していた。
おかげで俺達は逃げることが出来、体の緊張がほぐれていく。
しかし、このまま歩みを止めることは出来ないため、彼女のこわばった肩を押しつつ歩き続けた。
だが、すぐに俺達は緊張を強いられてしまう。
車が何台も通った辺りで銃の発砲音が2回鳴り、その直後に2回、大きな物がぶつかる音が聞こえた。
横断歩道の方を見ると、停めた車の方に銃を向けつつ歩いてくる金本と太った先輩が見えた。
「知佳子! 急ぐよ!」
そう言うと、彼女の肩をつかみつつ、早歩きを再開させた。
金本達が横断歩道を渡りきってしまえば、俺達は銃口の的になってしまうだろう。
俺達が横断歩道を渡っている時の銃の音で、近くに居た歩行者は全て蜘蛛の子を散らすかのように逃げ去ってしまっていたのだから。
彼女の後ろに立ち、銃口から守るかのようにして歩く。しかし、彼女の足取りは思ったより悪く、何度も俺の足が彼女の足にぶつかり、お互いに転びかけた。
恐怖心から、より足の運びが悪くなっているのだろう。それは俺もそうだ。しかし、彼女を守るという一心があるため、多少はマシになっている程度だ。
「ツヅキィィィィーーー!!!!」
とうとう横断歩道を渡りきってしまた金本。太った先輩もなんとか渡りきり、膝に手をついて息を整えていた。だが、金本は俺達の方向に銃口を向け、殺さんばかりの視線を向けていた。
撃たれる!! と思った辺りで、俺達に救世主というわけでは無いのだが、一条の光、いや、発光とでも言うくらいの小さい出来事が起こる。
それは、俺達の後ろに、横道から車が出てきたのだ。
思ったより横断歩道から歩けていたようで、幾つか小さな小道を渡ってきていた。
こんな所から車が出てくるのか? と思えるような所からの小さな希望の光。
俺達はそれを利用して少し先の小道に逃げ込んだ。
7時半になろうかとしている時刻。車の通りは昼に比べれば多くは無いが、横断歩道や信号がこの南の逃走経路に選んだ都市通りの他は、かなり北に行かないと無い。そのため、車の速度は思ったより速いため、このまままっすぐ走り抜けることは出来そうに無かった。
人通りは国道に出るとそこそこ居るため、最悪この場所で見つかるかも知れないと思うが、横断歩道を渡ってから直線距離で約200メートル。それだけ無事であれば脱出は成功するのだ。
「協力者の店がここから何軒かある。気を引き締めて、そして、できるだけ早くいくよ」
「わかったわ」
彼女の足を心配して今までゆっくりと歩いてきたが、万が一ここで見つかった場合、すぐに会社に連絡が行くだろう。そして、監禁ビルから走って逃走経路の横断歩道まで向かわれた場合、距離は長くても時間的にはこっちの方がかかってしまう。それを考え、少しでも早く歩いて欲しいことを伝えたのだ。
知佳子もそれがわかっているため、短く同意する。そして、二人はゴールに向かって歩き始めた。
国道に出ると、今までゼロだった人通りが一気に増える。見渡す限り、こちら側に10人、向かいたい反対側の区域にも10人ほどだろうか。それだけの人数がぱっと確認できた。
もし、この中に協力者が居た場合、逃げ出すことが困難になってしまうだろう。そのため、注意深く周りの者達を確認するが、スマホやケータイで話しているモノは一人も見当たらなかった。だが、幾人かは危険な歩きスマホをやっているため、100%協力者では無いとは言い切れない。だが、そこまで警戒しすぎれば、歩みも遅くなってしまうため、諦めて自分が盾になる方向を考えるしか無いだろうとも思っていた。
だが、そちらの方向ばかり集中していて、完全に失念していた部分があった。
突然、閉まっていたお店のシャッターが上がり、中から人が出てきたのだ。
ほんの一呼吸の間でしか無かったが、その出てきた人物は、確実にこちらを見て固まっていた。
そして、外に出てきた要件を全て投げ捨て、慌てたようにして店の中に入っていった。
「知佳子! 見つかった!」
「え?! どこ?!」
「右の店から出てきた店員がこちらを見て慌てて戻っていった。すぐに追っ手が来ると思って良いだろう」
「不味いわね……」
「足が痛いかも知れないが、急ぐよ」
「うん……」
若干歯切れの悪い返事をする知佳子。それほど痛みが響くのだろうか。だが、彼女を背負って走ったとしても、たいして距離を稼ぐことは出来ないだろうし、他の人達に紛れ込むことも出来なくなる。そのため、彼女には足を引きずってでも歩いて貰わなければならなかった。
二人が早歩きを始めてすぐ、大きな差が開いてしまった。
そこまで痛いとは思っていなかった俺は、どうにか出来ないものかと頭を悩ます。
しかし、色々なリスクを考えると彼女に歩いて貰う方が良いと判断せざるを得なかった。
タクシーも考えたのだが、この早朝の時間に居るわけも無く、そして、二人にはお金も無かった。
スマホを利用してタクシーを配送して貰う事も本来は出来たのだが、スマホは依然取り上げられたままだ。パソコンからデータを盗み取るよりそちらを優先するべきかとも考えたことがあったが、もし上手く逃げられた後の展開を考えると、情報こそ有利になると判断しての事だ。
しかし、今ばかりはスマホを選ぶべきだったかも知れないと思い始めていた。
それ以降は協力者と思われる怪しい人物に遭遇すること無く、交差点までたどり着く。だが、渡る前に赤信号になってしまい、何台もの車が往来してしまっていた。
知佳子の顔を見ると、太った先輩に会ったときに比べればまだましだが、若干青くなってきていた。
痛みからなのか、捕まってしまうかも知れないという恐怖心からかわからない。だから、俺は彼女の背中に手を回し、軽く背を叩く。
「大丈夫」
短くそう伝えると、彼女は驚きこちらを見る。だが、すぐにまっすぐ歩行者信号に視線を戻す。
何も反応が無いと言うのに違和感を覚え、表情をしっかりと見てみると、唇が震えていた。
そこで思い出す。彼女はまだ18歳の女子高校生なのだと。それを考えれば、この状況に耐えているだけで本来は褒められるだろう。
しかし、今褒めても全く意味は無い。
確実に逃げられる事。それを最優先にするべきなのだと。
長い、いや、実際にはそこまで長い時間では無い。だが、今の俺達二人にとってはとても長い赤信号が終わり、歩行者信号に青い色が灯る。
区画としては安全な区画にたどり着ける。それを思い、二人で急いで横断歩道を渡る。
右には両車線、車が数台停まり、俺達を通す。そして、左側にも数台、車が信号で止まっている。都市通りの方からは、一台も車が来ることが無い。逃げることに成功した! と思えた瞬間、後ろから大きな声が聞こえた。
「ツヅキィィィィーーーー!!!! そこ、動くなぁぁぁぁーーー!!!!」
怒りのあまり、はっきりとした発音では無かったが、俺にははっきりとそう聞こえた。
俺と彼女の体はこわばり、横断歩道の中腹でいったん立ち止まってしまう。
そして、俺は恐るおそる振り返ると、声の主である金本、そしてそれより後ろから太った先輩が走りながらこちらに向かっていた。
本来であれば、金本はまだ出社するはずの無い時間だった。だが、運悪くか、それとも今日一人入ってくるからなのか、早い出社となっていたようだ。そして、例の協力者からの連絡か、もしくは太った先輩が俺達のことを伝え、怪しんだ金本が追いかけてきたのか。正直わからない。だが、緊急事態になったことは間違いなかった。
「知佳子! 急ぐよ!」
慌てて彼女の背を押し、歩き始める。
そして、もう少しで横断歩道を渡り終えると思った辺りで予想だにしなかった轟音が鳴る。
その轟音は俺達を追っている二人の方から聞こえ、そして、俺達の逃げようとした北側に赤信号で停まっている車から、ガラスの砕ける音が続いた。
まさか!? と思い、彼女を俺の前に移動させ、そして振り向くと、金本の手には黒光りする拳銃があった。
持っているかも知れないとは思っていた。だが、こんな衆人環視のある中、使用する暴挙に出るとは微塵も思っていなかったのだ。
恐怖で走り逃げ出したくなる。だが、つかんでいた知佳子の肩は堅くこわばっていた。そして、彼女の俺のことをからかう時の笑顔がふと思い浮かんでは消えていった。
俺は、彼女を逃がさなくてはならない。その使命を思い出し、俺の体を盾にする様にして彼女の肩を押し歩かせる。
そして、横断歩道を渡りきり、タイミング良く赤の点滅に変わった。
逃げ切れると思い、金本の方向を見ると、もう一度銃を俺達に向かって放つ。
さらに轟音が鳴り、俺達の後ろにある店のシャッターに穴が穿たれる音が聞こえた。
しかし、彼らが渡る前に信号は赤になり、車を止めていた信号は青になる。
ガラスを割られた車は走り出すことが出来ず、運転手は怯えたままだったが、それ以外の車はここから逃げ出すかのように走り出していた。
おかげで俺達は逃げることが出来、体の緊張がほぐれていく。
しかし、このまま歩みを止めることは出来ないため、彼女のこわばった肩を押しつつ歩き続けた。
だが、すぐに俺達は緊張を強いられてしまう。
車が何台も通った辺りで銃の発砲音が2回鳴り、その直後に2回、大きな物がぶつかる音が聞こえた。
横断歩道の方を見ると、停めた車の方に銃を向けつつ歩いてくる金本と太った先輩が見えた。
「知佳子! 急ぐよ!」
そう言うと、彼女の肩をつかみつつ、早歩きを再開させた。
金本達が横断歩道を渡りきってしまえば、俺達は銃口の的になってしまうだろう。
俺達が横断歩道を渡っている時の銃の音で、近くに居た歩行者は全て蜘蛛の子を散らすかのように逃げ去ってしまっていたのだから。
彼女の後ろに立ち、銃口から守るかのようにして歩く。しかし、彼女の足取りは思ったより悪く、何度も俺の足が彼女の足にぶつかり、お互いに転びかけた。
恐怖心から、より足の運びが悪くなっているのだろう。それは俺もそうだ。しかし、彼女を守るという一心があるため、多少はマシになっている程度だ。
「ツヅキィィィィーーー!!!!」
とうとう横断歩道を渡りきってしまた金本。太った先輩もなんとか渡りきり、膝に手をついて息を整えていた。だが、金本は俺達の方向に銃口を向け、殺さんばかりの視線を向けていた。
撃たれる!! と思った辺りで、俺達に救世主というわけでは無いのだが、一条の光、いや、発光とでも言うくらいの小さい出来事が起こる。
それは、俺達の後ろに、横道から車が出てきたのだ。
思ったより横断歩道から歩けていたようで、幾つか小さな小道を渡ってきていた。
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俺達はそれを利用して少し先の小道に逃げ込んだ。
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