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Re:First fortune 「廻り始める運命」
激闘!スライムを撃破せよ!
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▽ ▽ ▽
案内された場所は王都と別の街とを行き来する街道から少しだけ外れた場所に広がる、なだらかな草原地帯であった。
何故わざわざ草原まで足を運んだかというと王都の街道には魔除けの結界が展開されている。
この結界のお陰で王都や街道には雑魚モンスターは近付けず、人々は安全に生活を送る事が出来るそうだ。
街道にモンスターは出現しないのでオレ達は結界から少しだけ、ほ~~~んの少しだけ離れたモンスターが生息する草原までやって来たという訳である。
「よしっ、ここならいいだろう」
「あの、本当によろしいのですか?マズダ様」
「まぁまぁ任せておきなさいって。おっ、来たぜ。早速手ごろな獲物だ」
オレ達から少し離れた草木の生い茂った場所に見え隠れするあの青いプニプニ。
あれは恐らく、ゲームではお馴染みの初心者レベリングの友であるスライムだろう!
背を低くして草木や物陰に隠れつつ、スライムにゆっくりと近づいていく。
……筈だったが途中でうっかり石に躓いて転んでしまう。
ドタッ!……音を立ててしまった。
「いってぇ!マズイぞ……あれ?なんだアイツ?気が付いてないのか?」
かなりの近距離まで接近して多少物音を立ててしまったのにスライムは全くこちらに気付いていない様子で楽しそうに草むらを飛び跳ねていた。
スライムの余りの能天気っぷりに慎重に行動するのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
「だったら、いっそオレのモットー、疾風怒濤で先手必勝だッ……いくぜッ!」
ちなみにモットーは今考えた。
作戦変更、オレは全力疾走で一気にスライムとの距離を詰めていく。
直線距離にして2~3メートルか?
そこまで接近してようやくスライムがオレという敵を認識した様子だがもう遅い。
既にヤツはオレの射程に入っている。
……スライム、お前には悪いが一撃で終わらせてもらおう。
オレは助走をつけた状態で高く飛び上がり、空中で拳にありったけの力を込める。
「うおおおおお魔拳バチクソスライム割りィ!」
全力を込めたダイビング・コークスクリューブローがスライムに直撃して衝撃で大地を揺らす……程ではなかったが、手ごたえはあった。
「せめてもの情けだ、痛みを感じる暇もなく逝かせてやったぞ」
「……感傷に浸っている所に大変申し訳難いのですがマズダ様、スライムは物理攻撃に耐性を持っていますので……その、今のマズダ様の攻撃力だと恐らくダメージが入っておりませんわ」
「へ?」
一瞬後ろにいたヘルが何を言っているのかよく分からなかった……だがすぐに言葉の意味を理解した。
【スライム】HP30→30。
スライムのHPが表示されたがその数値に変化が無い。
ヘルの言葉通り、スライムはオレの拳で地面に押し付けられていただけで全くの無傷であった。
そしてスライムは拳からするりと抜けだすとオレの腹部に反撃のタックルをお見舞いしてきた。
【マズダ】HP:12→9
HPが減った?
「ぎゃああああああああ!!」
直後、攻撃を受けた腹部から経験した事が無い程のとんでもない激痛が走り、オレは吐血しながらその場でのたうち回る。
なんだこれ、あまりの痛みで体がいう事を聞かねぇ。
クソッ!こんな痛みは職場のハンマーで誤って指を叩いたあの時の比じゃない!
オレがジタバタともがき苦しんでいる間にもスライムはさっと距離を取り、二発目のタックルの準備を始めていた。
このままじゃやられる……落ち着け、オレよ。
ゲームを思い出すんだ。
こんな絶体絶命の状況なんておねロリでどうにかしてきただろうが。
オレは意識を集中させてスライムをじっくりと睨んだ。
――スライムが助走をつけて飛び上がり二発目のタックルを繰り出す。
「速い!だが……やっぱり無理!!!うおおおお!!神様!!」
バッティングセンターで80キロの玉すら打ち返せないオレにとって弾丸の様なスピードで飛んで来るスライムのタックルは全力集中したとしても見切るのは不可能だった。
結局オレには全霊の祈りを込めて前転回避をする事しか出来なかった。
「……神?あら?呼びました?」
「ちげぇよ!!!――ヒエッ!」
前転回避しながらヘルに対してツッコミを入れる高等テクニックを披露した瞬間、スライムがオレの体ギリギリを通り抜けていく。
タックルを外したスライムはそのまま木に向かって激突し、そこで動きが停止した。
「これは?もしやスタンか?チャンス、否ァ!激熱だ」
オレはここで秘密兵器、ヘルから貰った毒が塗られた投げナイフを取り出した。
「……クククッ、まさか貴様如きにこれを使うハメになるとはな」
物理ではスライム如きにもダメージを入れれない貧弱なステータスのオレが勝利を狙うとすれば、やはり特殊スキルを活かした状態異常戦術でネチネチとハメ殺す……それしかない。
ヘルはそれが分かっていたからこそオレにこのナイフを持たせたのだろう。
オレが動きの止まったスライムにナイフを構える。
その時だったヘルが周囲を訝しげに眺めてゆっくりと口を開いた。
「マズダ様のスキルは状態異常に関するものです。だからその判断は正しいと思いますわ……ですが、すみません、この状況は完全に私の判断ミスっぽいですわね」
……判断ミスどういう事だ?
この戦いでミスしまくっているのはどっちかというとオレなんだが。
「おい、ヘル何やら意味深だな、流石にオレでも動かない相手にナイフを外すなんてアホな真似はしないぜ?」
「……違いますわ、私もすっかり抜けていました。スライムって通常群体で生息しているのですわ……てへっ」
「群……体だとッ?」
おい!なにがてへっだあああ!!
……それってつまり。
気付いた時にはオレは10匹位のスライムの群れに取り囲まれていた。
「……マジかよ」
用意されたナイフは三本、どう考えても数が足りない。
逃げれそうな場所を探すがどこを見てもスライムが待ち構えていた。
さっきのタックルでオレのHPは3減って残り9。
つまりこいつらの攻撃を後3回食らえば……いいや考えるのはよそう。
「無理無理!無理だ。ヘ、ヘル頼む、助けてくれ!!ヘルプミー!!」
……絶望的な状況のあまりオレはすっかり戦意を喪失してその場に立ちすくみ、助けを呼ぶ事しか出来なくなっていた。
「……ふむ、成程そろそろいいでしょう。マズダ様の戦闘能力、判断力、メンタルと色々と見させてもらいましたし」
「……な?」
その発言の意味する所はまさか!
「お前、敢えてこの状況を作ってオレを試したな!」
「はて、何の事やら」
とぼけているが確信犯だろう。
ボケ―として雲を掴む様な性格の癖に裏ではしっかり手を回している。
ほんと一番関わりたくないタイプだよまったく。
「……あんた、神は神でも邪神なんじゃないか?」
「ええまぁ死と破滅の女神ですので。マズダ様の敗北スライムプレイも見るのも一興でしたが、可哀想なのは抜けないので仕方ありませんわね」
……いや、生えてないですよね?ヘルさん?
相変わらずの冗談とも本気とも取れない発言の後にヘルは臨戦態勢のスライムの群れの中心へと一直線に歩き出した。
「……って、おい!待てよ」
「…………」
ヘルは何も言わずに四方八方から猛然と飛び掛かってきたスライム達に対してタイミング良くデコピンを食らわせていく。
するとスライムの群れは辺り一面に粉々に弾け飛び、肉片……スライム片と化していった。
しばらくして散らばったスライム片は光となってその場から消失していった。
「ただのデコピンでスライムを……」
「ふふっ、流石にスライム程度に遅れは取りませんわよ」
そう言ってヘルはオレに微笑みかけた。
……スライム程度、ね。
そのスライムに殺されかけたオレって一体なんなんだろうな、ミジンコか?
「ははは……それで、オレの戦いっぷりの採点結果は?」
「あらあらあら、勿論0点、ですわ」
知ってた。
こうしてオレの異世界での大事な初戦は結局何も出来ずに苦い敗北という形で幕を閉じたのであった。
案内された場所は王都と別の街とを行き来する街道から少しだけ外れた場所に広がる、なだらかな草原地帯であった。
何故わざわざ草原まで足を運んだかというと王都の街道には魔除けの結界が展開されている。
この結界のお陰で王都や街道には雑魚モンスターは近付けず、人々は安全に生活を送る事が出来るそうだ。
街道にモンスターは出現しないのでオレ達は結界から少しだけ、ほ~~~んの少しだけ離れたモンスターが生息する草原までやって来たという訳である。
「よしっ、ここならいいだろう」
「あの、本当によろしいのですか?マズダ様」
「まぁまぁ任せておきなさいって。おっ、来たぜ。早速手ごろな獲物だ」
オレ達から少し離れた草木の生い茂った場所に見え隠れするあの青いプニプニ。
あれは恐らく、ゲームではお馴染みの初心者レベリングの友であるスライムだろう!
背を低くして草木や物陰に隠れつつ、スライムにゆっくりと近づいていく。
……筈だったが途中でうっかり石に躓いて転んでしまう。
ドタッ!……音を立ててしまった。
「いってぇ!マズイぞ……あれ?なんだアイツ?気が付いてないのか?」
かなりの近距離まで接近して多少物音を立ててしまったのにスライムは全くこちらに気付いていない様子で楽しそうに草むらを飛び跳ねていた。
スライムの余りの能天気っぷりに慎重に行動するのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
「だったら、いっそオレのモットー、疾風怒濤で先手必勝だッ……いくぜッ!」
ちなみにモットーは今考えた。
作戦変更、オレは全力疾走で一気にスライムとの距離を詰めていく。
直線距離にして2~3メートルか?
そこまで接近してようやくスライムがオレという敵を認識した様子だがもう遅い。
既にヤツはオレの射程に入っている。
……スライム、お前には悪いが一撃で終わらせてもらおう。
オレは助走をつけた状態で高く飛び上がり、空中で拳にありったけの力を込める。
「うおおおおお魔拳バチクソスライム割りィ!」
全力を込めたダイビング・コークスクリューブローがスライムに直撃して衝撃で大地を揺らす……程ではなかったが、手ごたえはあった。
「せめてもの情けだ、痛みを感じる暇もなく逝かせてやったぞ」
「……感傷に浸っている所に大変申し訳難いのですがマズダ様、スライムは物理攻撃に耐性を持っていますので……その、今のマズダ様の攻撃力だと恐らくダメージが入っておりませんわ」
「へ?」
一瞬後ろにいたヘルが何を言っているのかよく分からなかった……だがすぐに言葉の意味を理解した。
【スライム】HP30→30。
スライムのHPが表示されたがその数値に変化が無い。
ヘルの言葉通り、スライムはオレの拳で地面に押し付けられていただけで全くの無傷であった。
そしてスライムは拳からするりと抜けだすとオレの腹部に反撃のタックルをお見舞いしてきた。
【マズダ】HP:12→9
HPが減った?
「ぎゃああああああああ!!」
直後、攻撃を受けた腹部から経験した事が無い程のとんでもない激痛が走り、オレは吐血しながらその場でのたうち回る。
なんだこれ、あまりの痛みで体がいう事を聞かねぇ。
クソッ!こんな痛みは職場のハンマーで誤って指を叩いたあの時の比じゃない!
オレがジタバタともがき苦しんでいる間にもスライムはさっと距離を取り、二発目のタックルの準備を始めていた。
このままじゃやられる……落ち着け、オレよ。
ゲームを思い出すんだ。
こんな絶体絶命の状況なんておねロリでどうにかしてきただろうが。
オレは意識を集中させてスライムをじっくりと睨んだ。
――スライムが助走をつけて飛び上がり二発目のタックルを繰り出す。
「速い!だが……やっぱり無理!!!うおおおお!!神様!!」
バッティングセンターで80キロの玉すら打ち返せないオレにとって弾丸の様なスピードで飛んで来るスライムのタックルは全力集中したとしても見切るのは不可能だった。
結局オレには全霊の祈りを込めて前転回避をする事しか出来なかった。
「……神?あら?呼びました?」
「ちげぇよ!!!――ヒエッ!」
前転回避しながらヘルに対してツッコミを入れる高等テクニックを披露した瞬間、スライムがオレの体ギリギリを通り抜けていく。
タックルを外したスライムはそのまま木に向かって激突し、そこで動きが停止した。
「これは?もしやスタンか?チャンス、否ァ!激熱だ」
オレはここで秘密兵器、ヘルから貰った毒が塗られた投げナイフを取り出した。
「……クククッ、まさか貴様如きにこれを使うハメになるとはな」
物理ではスライム如きにもダメージを入れれない貧弱なステータスのオレが勝利を狙うとすれば、やはり特殊スキルを活かした状態異常戦術でネチネチとハメ殺す……それしかない。
ヘルはそれが分かっていたからこそオレにこのナイフを持たせたのだろう。
オレが動きの止まったスライムにナイフを構える。
その時だったヘルが周囲を訝しげに眺めてゆっくりと口を開いた。
「マズダ様のスキルは状態異常に関するものです。だからその判断は正しいと思いますわ……ですが、すみません、この状況は完全に私の判断ミスっぽいですわね」
……判断ミスどういう事だ?
この戦いでミスしまくっているのはどっちかというとオレなんだが。
「おい、ヘル何やら意味深だな、流石にオレでも動かない相手にナイフを外すなんてアホな真似はしないぜ?」
「……違いますわ、私もすっかり抜けていました。スライムって通常群体で生息しているのですわ……てへっ」
「群……体だとッ?」
おい!なにがてへっだあああ!!
……それってつまり。
気付いた時にはオレは10匹位のスライムの群れに取り囲まれていた。
「……マジかよ」
用意されたナイフは三本、どう考えても数が足りない。
逃げれそうな場所を探すがどこを見てもスライムが待ち構えていた。
さっきのタックルでオレのHPは3減って残り9。
つまりこいつらの攻撃を後3回食らえば……いいや考えるのはよそう。
「無理無理!無理だ。ヘ、ヘル頼む、助けてくれ!!ヘルプミー!!」
……絶望的な状況のあまりオレはすっかり戦意を喪失してその場に立ちすくみ、助けを呼ぶ事しか出来なくなっていた。
「……ふむ、成程そろそろいいでしょう。マズダ様の戦闘能力、判断力、メンタルと色々と見させてもらいましたし」
「……な?」
その発言の意味する所はまさか!
「お前、敢えてこの状況を作ってオレを試したな!」
「はて、何の事やら」
とぼけているが確信犯だろう。
ボケ―として雲を掴む様な性格の癖に裏ではしっかり手を回している。
ほんと一番関わりたくないタイプだよまったく。
「……あんた、神は神でも邪神なんじゃないか?」
「ええまぁ死と破滅の女神ですので。マズダ様の敗北スライムプレイも見るのも一興でしたが、可哀想なのは抜けないので仕方ありませんわね」
……いや、生えてないですよね?ヘルさん?
相変わらずの冗談とも本気とも取れない発言の後にヘルは臨戦態勢のスライムの群れの中心へと一直線に歩き出した。
「……って、おい!待てよ」
「…………」
ヘルは何も言わずに四方八方から猛然と飛び掛かってきたスライム達に対してタイミング良くデコピンを食らわせていく。
するとスライムの群れは辺り一面に粉々に弾け飛び、肉片……スライム片と化していった。
しばらくして散らばったスライム片は光となってその場から消失していった。
「ただのデコピンでスライムを……」
「ふふっ、流石にスライム程度に遅れは取りませんわよ」
そう言ってヘルはオレに微笑みかけた。
……スライム程度、ね。
そのスライムに殺されかけたオレって一体なんなんだろうな、ミジンコか?
「ははは……それで、オレの戦いっぷりの採点結果は?」
「あらあらあら、勿論0点、ですわ」
知ってた。
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