46 / 154
46.収穫期を迎えた養蜂場
「京利、ごめ……んんっん、あっんん」
オレの言葉を遮り、キスをしかけてくる。
「謝罪の言葉ならいらない。凛の好きなだけ甘えてこい。なんなら、ずっと抱っこしていようか。殴ったっていい。俺は、凛のたった一人の『運命の番』なんだ。でも今は、正直そんな言葉じゃ全然足りない程に俺は、凛が好きだよ。愛している」
ちゅっ、くちゅっ、んっうんんっ。
「舌を出せ、凛、俺が凛の苦しみを取ってやる」
「ああぁ、京利、好き。好き。大好き」
恥ずかしいけど舌を出す。すかさず京利の唇が噛みついて来て、舌の表と裏をくまなく京利の唇で扱かれて、二人分の唾液がオレに流される。心の渇きを癒してくれるような京利の甘い味がする。好き、京利のキス、大好き。
京利の甘いフェロモンが充満している。とびきり甘い。ここまで甘いフェロモンは、初めてだな。まるで目に見えるように濃い。オレは、またとりとめもないことを、ぼーっと想像してしまう。収穫期を迎えた養蜂場もこんな感じなのかな。
オレは、京利の蜂蜜色の瞳を彷彿とさせる純度の高い蜂蜜で絡め取られたみたいに、たっぷりと蜂蜜が貯めこまれた巣の中に囚われてしまった。京利が甘い匂いを出して、獲物を誘き寄せようとしているなら、大正解だ。蜂蜜に溺れて、巣から出られないんだ。めまいがする。呼吸器だけはと、必死で外に口を出し、空気を吸う。
「凛、身体が心配だから、ベッドに行こう」
うん。そうしよう。って言いたいけど、呼吸が乱れていて、うまく声がでてこなくて、頷くことで、オレの意思を伝える。
抱っこで運んで。って言いたいけど、頭がごちゃごちゃしていて、うまく言葉がでてこないから、首に腕を回してくっつくことで、オレの意思を伝える。
京利は、オレの意思を正しく受け取って、抱っこで持ち上げて、くっつき虫のオレの頭を撫でてくれた。そしてゆっくりと、寝室のベッドに向かう。その間も、オレの頬にキスをしてくれたり、背中をぽんぽんてしてくれたり、甘やかすことに余念がない。
ベッドにたどり着くと、京利は恭しくオレを真ん中に降ろしてくれた。オレは、思わず京利の首に回していた腕を外してしまったんだけど、離れたくないから、すぐに京利の服をひっつかんでいた。まるで猫が爪を飼い主の服にひっかけて、降りたくないと訴えているときのようだ。
「大丈夫だ、何処にも行かない」
京利はベッドの上で寝転ぶ。片方の腕を伸ばして、ここにおいでと、とんとんと叩いて合図をしてくれた。オレは、当然のようにその腕に頭を乗せる。寝室にも、甘いフェロモンが立ち込め始めた。はあ、気持ちいいかも。さっきとは違って、溺れる感じはない。少し心が落ち着いてきたかもしれない。
「凛、ひとつだけいいか?」
腕枕の距離で京利と話す。蜂蜜色の瞳もオレを甘やかしてくれる。
「高梨くんから、何度か着信があった。ひと言、大丈夫だと伝えた方がいいと思うんだが、どうだろう。俺が電話してもいいか?」
「だめ!京利がメイに電話するの、今日はなんかいやだ。オレがする」
「あぁわかった。ちゃんと説明できるか?」
「うん。がんばる」
「よし、いい子だ。オレはその間に冴さんの送ってくれた飲み物を、玄関で赤坂から受け取ってくるけどいいか?」
それもいやだけど、さえたんも赤坂さんもせっかく用意してくれたんだから。と自分を納得させて、京利に大丈夫って言った。京利はオレの気持ちがわかっているのか優しく微笑んでいた。一度オレの頭を撫でて、部屋から出ていった。オレは、メイに電話をかけた。
『凛、電話ありがとう。あれから体調どう?』
あなたにおすすめの小説
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
言葉が通じない暴君皇帝の運命の番として召喚されました〜炎を鎮めたら冷徹な彼が甘々になりました〜
水凪しおん
BL
帰宅途中の夜道、突然の光に包まれた青年・アオイが目を覚ますと、そこは見知らぬ異世界の宮廷だった。
言葉も通じず、隔離された離宮に閉じ込められた彼が出会ったのは、ソラリア帝国を統べる皇帝・レオニダス。
強大な竜の血を引き、その力に肉体を焼き尽くされそうになりながら孤独に耐える冷徹なアルファ。
だが、特別な魔法を持たないはずのアオイには、彼の荒れ狂う魔力を静かに鎮める「不思議な波長」が備わっていた。
「触れるな」
お互いを傷つけることを恐れ、遠ざけようとする不器用な皇帝。
だが、アオイは苦しむ彼を見捨てられず、自ら灼熱の炎の中へと飛び込んでいく。
言葉の壁を越え、魂の波長が重なり合った時、冷徹な皇帝の態度は一変。
誰よりも優しく、独占欲に満ちた重すぎる溺愛が始まって――。
孤独な竜と、彼を癒やすただ一人のオメガ。
二人が真の「運命の番」となるまでの、切なくも温かい異世界救済ボーイズラブ。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。