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51.『妖精王の昼寝を見守る会』
「凛、こっちだ」
オレは、手土産をサッ才賀に託して、京利にエスコートされるまま、お屋敷の廊下を歩いていた。
きっとあの場面で、呼び方を指摘されたってことは、そうしないと、京利や京利のご両親に恥をかかせることになるんだ。大丈夫。オレは、出来る子だ。己を叱咤激励する。
それにしても明るい廊下だ。壁の少し高い位置に配置されている窓が太陽の光を存分に採り入れているようだ。
オレの身長位あるんじゃないかという大きな壺で、華やかな美しい、どちらかというと可愛い?お花達が一定の間隔で配置され、彩り豊かな廊下を演出していた。
カーテンは、淡いピンクで統一されていて、光を優しく通すレースカーテンには花嫁さんのベールのように精緻な刺繍が施されていた。
ほへー、メルヘンな世界。素敵だな。
ぽやぽやしていたら、大きな両開きの飾り格子がはいった擦りガラス扉が目の前に現れた。どこからか、メイドさんが二人やってきて、厳かに両側の扉をそれぞれが押して開いた。
扉の中は廊下どころではなく、もっとすごかった。
妖精王が昼寝をする秘密の空間なのかもしれない。
だめだ!気圧されるな、しっかりしろ!京利のエスコートを頼りにもう一度、己を叱咤激励する。
「凛、大丈夫だ。凛はいつも可愛い」
そりゃ京利にはそう見えててもね、周りには…。
いや、やめた!後ろ向きな考えをごちゃごちゃ考えても仕方ない。オレは、京利の隣でしっかり歩いていくんだ!
サロンと呼ばれたこのホールは、片側が地面から天井までガラス張りで、中庭がまるまる望めるようだ。
サロン中央には、『妖精王の昼寝を見守る会』が本日開催予定なのか、大きな丸テーブルに、いかにも紅茶を嗜むクリンとカールした持ち手のカップとソーサー、お菓子や軽食なんかが準備されていた。京利のご両親はサロン中央からいくらか庭よりのゆったりしたソファのそばに立っていた。オレ達はそこに向かって歩いていった。顔をあげて歩く。ご両親の顔はまだはっきり見えないけど、ちょっとシブイ顔じゃない?やっぱあれか、どこの馬の骨ともわからない、みたいな感じ?うへー、どうしよう。
ってなるかよ!オレは、負けない。オレは、京利と生きていくって決めたんだ!どこの馬の骨ともわからない奴なのは本当のことなんだ。お怒りはごもっとも。いくらでも叱って苛めてくれ。すべて甘んじて受け入れてやるよ。でも京利からは絶対に離れないから。って心の中でやたらいきがっていると、ご両親の前にたどり着いていた。すごい厳しい顔をしている。
「京利さん、お帰りなさい、随分ご無沙汰でしたわね」
まずは、お義母様のひと言、うん?
「ご無沙汰して申し訳ございません。ただいま戻りました」
「お帰り、京利。そちらの方が、おまえの番か?」
次は、お義父様のひと言、うん?
「そうです。凛といいます。凛、父と母だ」
なるほど、よくわかった。
オレは、右手を心臓の上に置いて、頭を下げた。
「私は、凛と申します。ご挨拶が遅れましたこと、勝手に大事なご子息である京利さんと『番成立』してしまったこと、深くお詫び申し上げます。『運命』がどうであれ、京利さんと私では、身分が不釣り合いなことは、重々承知しております」
一度、顔をあげて続ける。
「ですが、私は、京利さんと離れるつもりはございません。どうか、お義父様とお義母様がご納得いくまで、ご指導をお願いしたく存じます。
そしてきっと、京利さんの横に並んでも恥ずかしくない番になるとお約束いたします。
だからどうか、京利さんのお側にいることをお許しください」
もう一度、頭を下げた。
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