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62.梅と昆布
「僕達も、毎日話しかけて良いものなのかどうなのかわわからないまま悩んで話し合った結果、出来る限り朝食を一緒に食べる、一日一回ハグをする。ってことにしたんだ。
なかなか僕達が、夕食の時間に揃って家に居るって難しいからね。朝食にしたんだ。使用人達にもたくさん協力してもらった。なんとしても朝には家に帰るぞ!って気持ちでやってきたんだ。
でも僕達の選択が正しいことなのか、時々わからなくなってくるんだ。京利にも京舞にも変化が感じられなかったからね。
きっと世の中の親御さん達が、同じように悩むことなんだろうと思う。
それでも毎日その決まりをやめることなく続けていたんだ。
すると突然に京利が変わり始めた。僕の仕事について回って、真剣に学び始めた。さすがは優秀な京利だから大学を卒業する頃には、しっかり自分の仕事を多数持っていたんだ。自立できると判断した京利は、自分で決めて家を出た。
そして一年後、こんなに素晴らしいお嫁さんを連れて帰って来てくれたんだ。
そのお嫁さんは言った。京利を選んだのは『運命』ではなくこの家で育った『京利』だったからって。
本当に、こんなに嬉しいことがあるかい?
凛くん君を離さないよ。ねえ理桜ちゃん」
やっぱり堪えきれず泣いてしまったママは、うんうんって頷いている。
場の空気を変えるように京利が動きだす。
「いい加減に、俺の凛を返してくれ!」
わざとオーバーな動きだ。
京利がオレ引っ張ると、腕を緩めたパパとママ。腕の檻から出たオレは、少し寂しくなった。
「あっ京利!お願いがあるんだ。京舞くん、きっとお腹空いてると思うから、おにぎり作って持っていっていい?」
あっ!オレは、言ってしまってから、恥ずかしくなった。
思わずおにぎり!なんて言ってしまったけど、さっきまでフルコースを食べていたのに、おにぎりなんて食べるわけないじゃん!
「なんだとっ!!!いいわけがないだろ!
まだ俺も凛が握ったおにぎりを食べたことがないのに。例え食べていたたとしてもだめだ。絶対にだめだ。
俺が調達して京舞に持っていってくるから凛はここにいろ。後で迎えにくる。
ちなみに俺の好きなおにぎりの具は梅と昆布だ」
「あ、あぁうんわかった。ありがとう!京利。
さっきは本当のこと言っちゃってごめんねってオレが謝っていたって、京舞くんに伝えてきてね」
クスクスクス……どこからともなく笑っている声が聴こえる。多分、執事さんとかメイドさんとか。京利は走っていった。
「本当に凛ちゃんて楽しい子なんだから。それで私達に聞きたいことはなにかしら」
「えっなんで、オレ、いや私が、」
そういえば、オレのキャラ設定めちゃくちゃになってる!変な汗が背中を伝う。
「今更、口調を丁寧にしてもだめだよ。僕達には普通でいいから、ね?」
「確かにもう遅いですね、はは。
あのっ、なんで聞きたいことがあるってかったの?」
「う~ん、なんとなく?」
「京利もわかってたと思うよ?」
パパとママに促されて、ゆったりとしたソファに座る。両端をパパとママで挟まれている。
パパはオレの背中を撫でるし、ママはオレの頭を撫でているし、なんか甘すぎない?
「それで凛ちゃんの聞きたいことはなにかしら?京利の昔のこと?恋人はいたのか、とか?早く早く~」
「ひとつだけ、どうしても聞きたくて(昔の恋人!?なにそれ気になる!けど一旦置いといて)
あの、京利は今、お仕事をちゃんと出来ているのでしょうか?」
………。
「ぷっ、ふはははひー最高だよ凛くん!!いい質問だ」
「まあ、凛ちゃんたらそんな事が聞きたかったの?ふふふっ」
オレは、真っ赤になりながらはいと返事をした。
そして、なぜ聞きたかったのかを話した。
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