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63.不穏な動き
「オレと出逢ってから、京利はずっと一緒にいてくれるんです。いつも隣にいてくれて、心も身体も不安定だったオレの様子をずっと見守って、助けてくれていました。
その、いつお仕事しているのかな?って。
もしかして、家賃とか生活費は、パパやママが払っているのかなって。オレを最優先にしてくれているのは、それは最高に嬉しいことですが、色々ご迷惑をおかけしてるのではと思って、ずっと心配でした。でも本人に言えなくて」
「あらあらそんな可愛い顔しないの。食べたくなるでしょ」
え?
「凛くんは、要するに京利が、僕の元で働いている部下のような存在で、雇ってもらっているような立場だと思っていたってことだよね?」
「はい」
オレは大きく頷く。パパのその言い方、もしかして一般の企業とかのサラリーマンだったとか?!もうクビになっちゃったとか?!どうしよう。
「それは正解だけど、京利のほんの一面でしかない。京利は確かに僕の会社の役員には就いてもらっているけれど、京利自身がすでに四ノ宮グループの中で、本国に本社がある外資系トップレベルの商社やなんかのCEOに就任しているんだ。ご本人の意向により、あまりオモテには出ないけどね。
あとは、個人で外国債や投資信託やあとは何だったかな、まあとにかく色々やってて。そういうのってずっと値動きを見ていないとだめなんだけど、京利は、優秀な人材を引き抜いてきて、その運営も任せているはずだよ。赤坂くんもどこぞから引き抜いてきて、秘書をやってもらっているよね。彼もとっても優秀だろう?
まあ、だから別に一年二年、何もしなくてもお金は稼げるし、そうだ、あのマンションは一括で買ったっていってたし、大丈夫大丈夫」
「そうそう、だから凛ちゃんはなにも心配しなくてもいいの。京利は働いているし、お金も稼いでるし、私達のお金や財産は一切使っていないわ。安心した?」
ほほほはほほほほほほんとに?!あの京利が?!
オレは、呆然とするしかなかった。
あの、京利が?!
「どうする?京利のお金で豪遊しちゃう?僕達といっにょに!」
「あらいいわね!」
ぶんぶんっぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんっぶんぶんぶんぶんぶんぶん!
一生分の首の連続稼働数を使って、横に振り続けた。
力が抜けたオレはソファに沈み込んだ。
「君ならそういう反応になるだろうなと思って、正直に話したんだけどね」
「逆に京利、捨てられないかしら」
「やばいな。凛くんを監禁するか…」
えっ?
なんだか、さっきから不穏な動き、あるよね?
「凛、何か良からぬことを聞いたな?」
「ひゃ!京利おかえり。オレなんも聞いてないよ?」
「帰るぞ、凛。
父さん母さん、凛が疲れてしまったようだから連れて帰るよ」
それはそれは美しい満面の笑顔で京利が言った。
「冗談だよ凛くん。またいつでも帰っておいで。京利、頑張ってね」
「凛ちゃん、何かあったらすぐにママに言うのよ?いつでも帰ってきてね」
パパもママも穏やかに微笑んでいる。震えてしまう声で、はい、と返事はできた。
オレは、問答無用で沈み込んでいたソファから抱きあげられる。
「京利、オレ歩けるよ」
「だめだ。大事な凛が疲れてしまっている。これは緊急時の対応だ」
オレは黙り込むしかなかった。
玄関には、執事さんが待機していて扉を開けてくれる。並んでいるメイドさんも皆が目を伏せているけど、恥ずかしい。外に出るとすぐに赤坂さんが車のドアを開けて、京利とオレが乗り込むと、閉める。完璧な連携が今、無性に恐い。
オレをしっかり座らせて、シートベルトを締めた。とりあえず大人しくしておこう。
唐突に、京利がオレを優しく抱きしめた。
「凛を補充させてくれ」
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