ある日『運命の番』に出逢ったオレに起こる、なんやかんや、でもやっぱり最高に幸せだと思う。

音羽 りんね

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64.それは今言うな

 
 
 
 オレはすぐに抱きしめ返した。
 京利のフェロモンがオレを包み込みはじめた。


「少し離れていただけなのに、こんなにさみしくなるなんてな。圧倒的に凛が足りない。これは大いなる欠如だ」


「もう大げさなんだから。オレが大学に戻ったらどうするの?」


「それは今言うな」


 ふふ、京利はオレの頭とか首とかさり気なく匂いをかいでいる。くすぐったいけど、オレも匂いたいから京利の動きに合わせて、くんくんした。


「ごめんな、凛。随分疲れさせてしまったな。父さんも母さんも悪気はないんだが、何かされなかったか?身体は大丈夫か?変なところはないか?」


 腕を緩めて、心配そうな蜂蜜色の瞳がオレの目を覗き込み、聞いてくる。いつもの優しい京利だ。安心する。京利、いい匂い。京利、大好き。


「オレもさみしかった、すごく。身体は大丈夫だよ」


 京利が軽く唇を合わせて、温もりを分け与えるようなキスをする。労ってくれてるんだな。オレも京利を労いたくて、優しく唇を合わせた。温かい。

 
 唇が離れて、見つめ合う。笑い合う。


「大成功だったな。凛が色々がんばった成果だ。さあ俺達の家に帰って、後はのんびり身体を休めよう」


「うん」


 京利がずっとやわらかいフェロモンで包んでくれているから。すごく気持ち良くて、だんだん身体に知らず知らず入っていた力が抜けていき、なんだか眠くなってくる。


「凛、俺の仕事のことを聞いたんだな?」


「ごめんね京利、怒った?」


「怒るはずがないだろ?俺のことを知りたいという気持ちがあったということだ。むしろ大歓迎だ。
 
 ただな、俺があからさまに大金持ちだってわかると……凛が、俺から離れていくような気がしていた。世界が違うとか、荷が重いとか言われそうで嫌だった。

 でも、これだけは行っておくが、凛が眠っている間に必要な仕事はこなしているぞ。俺は、昔から睡眠時間が短くても平気な方なんだ。

 反対に凛は、よく眠るいい子だからな。たくさん仕事をする時間はある。
 
 いくら何でも、情報連携や指示が必要な部分は頑張ってやっている」


 京利は、少し拗ねたような顔をした。


「ふふ、そりゃそうだよね。京利だもん。毎日頑張っているに決まってるよね。家賃とか食費とか、ふふふ大丈夫じゃないわけないよね。

 ほんとに、ちょっとした疑問だったんたよ。

 今は少しびっくりしているけど、京利のかっこいいところがまたひとつ知れて嬉しい。

 そういえば、京舞くんに持っていってくれてありがとう。様子どうだった?」


「部屋の中には入られなかったが、静かに考え込んでる様子だったから、外から、おにぎりを置いておくことと、凛の伝言を伝えたら、『はあ?何言っての?』ってまたギャンギャン怒りだした、くく」


「ふふふ、京舞くんて本当に面白くて可愛いね、また会えたらいいな。

 ねえ京利。

 オレは、京利を捨てたりしないよ。
 えいえんにいっしょにいるってちかったじゃん、だいすきなんだから……」


 眠気が増して、あらががたくなっていく。


「凛、眠いのだろう。安心して眠っていい」

 
 京利が頭を撫でてくれる。


「京利ごめん。ねちゃう…」


 蜂蜜色の瞳が蕩けていく。
 
 眠りに落ちていくオレは気づいてしまった。

 オレを見つめる京利の瞳には、
 隠せない狂気が滲んでいた。
 
 これは夢?現実?





 おやすみ、凛、ゆっくり眠れ。

 すやすやと眠る可愛い凛の顔を見つめている。


 おもむろにスマートフォンを取り出し、録画した動画を再生する。


『ーーですが、私は、京利さんと離れるつもりはございません。どうか、お義父様とお義母様がご納得いくまで、ご指導をお願いしたく存じます。
 そしてきっと、京利さんの横に並んでも恥ずかしくない番にーーーーー』


 
 蜂蜜色の瞳から狂気が薄らいでいく。




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