71 / 154
71.この子と手を繋いで
でもでも実は、オレは嬉しかったりする。オレも寂しかったから。すぐ近くに京利がいると思ったら安心する。
もし何かあっても呼べば、すぐに会えるもんな。だから安心して、メイと手を繋いで、講義室までの道のりを歩いていく。これはいい運動だわ。体力、付けとかないとな。今のオレの課題だ。
いつの間にか季節が移り変わり、世の中は暑い季節を迎えている。
メイは、このところオレにべったりだ。いや、オレではなくこの子にか。暑いから汗ばんでる手も気にせず、歩くときはずっと手を繋いでいる。
メイは、産まれてくるこの子と手を繋いでいるのかもしれない。
もともとメイは、大学内ではオレから離れないと京利に誓っていたが、手を繋げとは言われていない。メイも不安を抱えているんだよな。
以前から、『双子みたいだな』ってよく言われたけど、大学に復帰してから、メイがこんな風だから、ますます言われだした。背丈も体格も同じぐらいで、瞳の色が一緒だったりする。
もしかしたら、本当に血を分けた双子なのかもしれないかもしれない。
まあそんなことはどうでもよくて、オレが大学に復帰するには、助けてくれるメイが必要不可欠だった。メイがこうやっていつも一緒にいてくれることがどんなに心強いか。
オレが赤ちゃんのために体力つけたい、って話をしたら講義の待ち時間にメイは、散歩に誘ってくれる。
オレは普通分娩を希望したい。
一般的にオメガ性の男性は、赤ちゃんが通る産道が狭いから帝王切開で産む場合が多い。それでもオレは、自分の体力があって、医師の許可が得られるなら、普通分娩を希望したい。
赤ちゃんは、母親が陣痛の痛みにくるしんでいるときに、子宮の収縮で息苦しさを感じ、圧迫感にも耐えている。産道を通るときは、頭をねじ込んで、道を拓いて進むから、相当辛く苦しいという。
それなら帝王切開でさっさと決着をつけた方がいいと思うよね?普通は。
でもオレはその話を聞いたときに、赤ちゃんと一緒に頑張る!って決めた。オレの場合は、京利も一緒に頑張ってくれるだろう。
オレは、回数制限がある帝王切開より、何人も産むことができる(可能性の話だ)普通分娩を選ぶ。この子は苦しむことになるけど、オレも京利も一緒に苦しむから一緒に頑張ろうよ。そのかわりに兄弟をいっぱい産むよ。
そう、オレはいつも賑やかでわちゃわちゃする家庭を京利と一緒に築きたいんだ。
これには、オメガ性の孕みたい欲求が強くでているのかもしれないけど、オレは、京利が許してくれる限り産みたい。
って京利に、この間話したらすごく喜んでくれた。『頑張って働くから』って言っていた。ふふ。
芝生を眺めながらそんなことを考えていたら、突然に目の前を塞がれた。えっなに?
よく見ると、目の前に可愛い女性(ひと目でお嬢様とわかる感じ)が立っていた。横を見ると、メイはその女性を厳しい目で睨んでいた。繋いでいる手に痛い程に力が入っている。
「貴方が、京利さんの番の方?」
非常に可愛い笑顔で声をかけられた。ネックガードを首に巻いているからオメガ性なんだろうと思う。他人の悪意を感じることができるオレは、身震いをした。
オレは、体型が細めだからお腹の膨らみもわかりやすいし、首の噛み痕も、隠しても噂が蔓延している大学で、しょうがなくない?って気づいて、別に普段の服装を気にすることもなく、そのままにしているから、誰でも見られるだろう。京利も見せておけばいいといっていた。
例えば、誰かさんが、オレと全く接点がない学生に、四ノ宮京利の『運命の番』はどこにいる?って聞いたとしても、すぐに学部と受けているはずの講義など、わかってしまうことだろう。
あなたにおすすめの小説
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
言葉が通じない暴君皇帝の運命の番として召喚されました〜炎を鎮めたら冷徹な彼が甘々になりました〜
水凪しおん
BL
帰宅途中の夜道、突然の光に包まれた青年・アオイが目を覚ますと、そこは見知らぬ異世界の宮廷だった。
言葉も通じず、隔離された離宮に閉じ込められた彼が出会ったのは、ソラリア帝国を統べる皇帝・レオニダス。
強大な竜の血を引き、その力に肉体を焼き尽くされそうになりながら孤独に耐える冷徹なアルファ。
だが、特別な魔法を持たないはずのアオイには、彼の荒れ狂う魔力を静かに鎮める「不思議な波長」が備わっていた。
「触れるな」
お互いを傷つけることを恐れ、遠ざけようとする不器用な皇帝。
だが、アオイは苦しむ彼を見捨てられず、自ら灼熱の炎の中へと飛び込んでいく。
言葉の壁を越え、魂の波長が重なり合った時、冷徹な皇帝の態度は一変。
誰よりも優しく、独占欲に満ちた重すぎる溺愛が始まって――。
孤独な竜と、彼を癒やすただ一人のオメガ。
二人が真の「運命の番」となるまでの、切なくも温かい異世界救済ボーイズラブ。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。