74 / 154
74.京利どこ
「赤坂さん、ここまで連れて来てくれてありがとうございます。京利にもし連絡がつくなら、オレが無事に家に着いたこと、伝えてもらえますか?」
「もちろんです。お任せください」
「ありがとうございます。メイも一緒に居てくれてありがとう。本当に助かったよ」
「いいのよ、別に。それより凛、顔が真っ青だわ」
メイが、心配そうに言う。
「うん。今からシャワーをさっと浴びて、少し横になるよ。赤坂さん何か動きがあれば教えてください」
「承知しました。
凛様は、京利様を疑ったりしないのですね」
赤坂さんが嬉しそうに言う。
「オレは、京利を疑うことはないよ。怒ることはあるだろうけどね。ぐふふふ」
ちょっと空気を緩めようと、茶目っ気たっぷりに答えてその場を去った。
今すぐ横になりたい。お腹にハリも感じる。
でも、さすがにこの季節だから、汗は流したい。お風呂に向かう。色々考えたいことがあるけど、一旦置いておく。
ひとり、服を脱いで、温かいシャワーを頭から浴びる。この子の為に少しでもお湯に浸かった方が良いだろうか。温かくしてあげたほうがいいよね。ひとり言をつぶやく。足元に気をつけてジャグジーの浅いところにゆっくり入って座る。丁度、胸の下ぐらいの水位だ。
お腹を撫でる。この子が無事で良かった。マッサージのように優しく優しく撫でる。うん。ハリも少しマシになったかな。ゆっくり立ち上がり、こんな時だから、手すりをもって歩いて、お風呂を出る。いつものようにドライヤーをして、服を着て寝室に向かう。
ドアを開けると、京利のフェロモンがオレを包んでくれた。ベッドに横になると、京利の匂いがする。はぁあああ。深呼吸をする。オレの身体から力が抜けていく。
京利、どこ。
スマートフォンでGPSアプリを立ち上げる。京利の位置は、ここからかなり距離がある外国の要人が集まったりする超高級ホテルだと示していた。
京利だから上手く片付けて、すぐに帰ってきてくれるだろう。寝て待っていよう。京利が言っていた。凛はよく眠ると。この子とのんびり眠って待っていよう。
なぜだろう。胸騒ぎが一向におさまらない。
久しぶりに悪意を真正面に受けたからか。
わからない。今はただ眠ろう。
京利の枕に抱きついて、匂いを感じながら眠った。
「凛」
「凛、おきて」
深い眠りから、無理やりひきずりあげられる。静かな声だけど、緊迫した声だ。いやだ、おきたくない。聞きたくない。
それでも、オレは起きなくては。
ゆっくり目を開ける。メイがいた。
「凛、今から服を着替えて外に出かけなくてはならないの。大丈夫。私もそばにいるし、手伝うから。落ち着いて。赤坂さんは部屋の外にいるわ」
「メイ、ありがとう。起こしてくれて」
メイは、無言で頷く。オレはたんたんと外着に着替えて、メイは出かける準備を手伝ってくれた。
「凛、説明は車の中でね、まずは、赤坂さんの指示に従いましょう」
「うん、そうしよう」
ドアを開けると赤坂さんが玄関の方で待っていてくれた。
「凛様、出来る限り急ぎたいので、抱えます」
オレは、大人しく抱えられて、進んでいく。
そして、三人で車に乗り込む。赤坂さんがついに口を開いた。
「凛様、京利様が、腹部を刺されて階段から落ち、頭をお打ちになられたようで、失血と脳震盪で意識がないとのことです。今、京利様も救急車で四ノ宮系列の病院に向かっています。私達もその病院に向かっているところです」
「凛、私も一緒にいくから、向こうについてから詳細を聞きましょう?」
「それがいいでしょう。病院について、京利様がどういう状態なのか医師に聞きましょう」
「うん。ありがとう二人とも。一緒に居てくれて心強いです」
オレの京利
どこ?
あなたにおすすめの小説
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
言葉が通じない暴君皇帝の運命の番として召喚されました〜炎を鎮めたら冷徹な彼が甘々になりました〜
水凪しおん
BL
帰宅途中の夜道、突然の光に包まれた青年・アオイが目を覚ますと、そこは見知らぬ異世界の宮廷だった。
言葉も通じず、隔離された離宮に閉じ込められた彼が出会ったのは、ソラリア帝国を統べる皇帝・レオニダス。
強大な竜の血を引き、その力に肉体を焼き尽くされそうになりながら孤独に耐える冷徹なアルファ。
だが、特別な魔法を持たないはずのアオイには、彼の荒れ狂う魔力を静かに鎮める「不思議な波長」が備わっていた。
「触れるな」
お互いを傷つけることを恐れ、遠ざけようとする不器用な皇帝。
だが、アオイは苦しむ彼を見捨てられず、自ら灼熱の炎の中へと飛び込んでいく。
言葉の壁を越え、魂の波長が重なり合った時、冷徹な皇帝の態度は一変。
誰よりも優しく、独占欲に満ちた重すぎる溺愛が始まって――。
孤独な竜と、彼を癒やすただ一人のオメガ。
二人が真の「運命の番」となるまでの、切なくも温かい異世界救済ボーイズラブ。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。