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77.事の顛末
一頻り泣いたオレは、疲れてしまった。こんなに子どものように泣くなんて、恥ずかしい。どうも感情が高ぶってしまいがちだな。
さえたんが入れてくれたお茶を飲んで息を吐く。
オレは、泣き疲れてぐったりしながらも、手術室から目が離せない。
その間に、事の顛末をパパとママが教えてくれた。さえたんもメイも同じソファに座っている。それでも窮屈な感じはなく、ゆったり座れていることに驚く。
ぼぅっとしたオレの背中を擦りながら、ママが話し始める。
ちょっと待って!
「ママ、全部話して欲しい。パパとママが見てきた事全部。オレは京利の事を全部知りたいんだ」
「ええ、覚えている限りお話するわね。でももしもよ、途中で凛ちゃんの身体に異変が起こったときは、凛ちゃんを優先するから、それだけは分かっておいて」
「はい」
オレは、大きく頷く。
「京利が産まれて半年ぐらいの頃まで遡るんだけど。
私達四ノ宮グループは、ある製薬会社と深く繋がっていた。まるで同じグループ会社のように。もちろんそれは双方にとって良い取引先だったからなんだけどね。
その製薬会社に四ノ宮グループが出資して、そこから双方の研究者の共同研究が始まったの。長い長い時をかけて開発した新薬が、副作用がとても少ない抑制剤でね、沢山の人を救うことが出来たと聞くわ。
その後も、価格を極限まで下げられるように、共同研究は続いた。現在、四ノ宮グループでは生産されていないけれど、ジェネリックが沢山でていて、今も市場でその種類のお薬では、誰もが買いやすい価格で最も安全な薬として、多くの人が使っている。
そんな背景があって、双方が良い関係だった頃、その製薬会社の一番の権力者の元に、赤ちゃんが産まれた。本当に可愛い可愛い女の子だった。
周りの皆を、笑顔にしてしまう子だった。
私達もその製薬会社の重役さん方と交流があったから、赤ちゃんだった京利を見て、一目で気に入られてしまったの。あの子は無愛想な赤ちゃんだったけど、誰もがこの子はアルファだろうと感じさせる何かがあったから。
その場で、『将来はこの子達を結婚させましょう!』という話が持ち上がった。とても周りも盛り上がっていて、ビッグカップルの誕生だ!双方の関係がより堅固なものになる!とかなんとか大きな声で騒いで」
ママは、顔を顰めて遠くを見ている。
その時の光景を見ているのだろう。
はぁ、とひとつ息を吐いて話を続ける。
「私達は若くて、馬鹿だった。
深く考えもせずに、赤ちゃんの二人が将来結婚することによって、四ノ宮グループの未来が少しでも明るくなるのであればと。
軽く、いいですね。なんて言ってしまったの。
そこからは、あれよあれよと言う間に、二人の赤ちゃんは、婚約者になった。
二人が、チョコチョコ歩くぐらいになったころには、仲良く手を繋いだりして、女の子は、ニコニコして可愛らしくて、京利は無愛想なりにも楽しくしているように見えたわ。おままごとしたり、お散歩したり。
その頃の京利が、女の子を好きだったかどうかは正直分からない。でも女の子は、心の成長も早いもの。
ずっと京利にスキって言って、ほっぺにチュってしたりね、内緒ばなしをしたがったり、京利はひたすら無表情で無反応だったし、きっと何をされてるかもわからないだけだったのかもしれないけど、それはそれで、私達も向こうの親御さんも、微笑ましく見ていたものよ」
ママは、目を伏せた。
オレは、ママの話を時々目を合わせて聞いていたけど、ほとんど、手術室の出入口を見ては、『手術中』と光る電光掲示板の字を見るという行動を何度も繰り返していた。
京利と連さんが戦っている。
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