ある日『運命の番』に出逢ったオレに起こる、なんやかんや、でもやっぱり最高に幸せだと思う。

音羽 りんね

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78.末端の末端まで全て。

 


 オレは、一口お茶を飲んだ。
 

「二人は、婚約者のまま、中学生になった。

 入学してはじめに行なわれる検査を、二人も順当に受けた。京利はアルファ性で、彼女はオメガ性だと判明した。
 薄れつつあった周りの盛り上がりが、見事にぶりかえしてしまった。これは『運命』だ!ってね。
 
 思春期の二人はぎこちなくも、彼女の積極的な態度に流されて、京利の気持ちがどうであれ、一緒に過ごすことが多かったと思う。彼女が熱心だった。
 
 京利は、小学校入学前に行なわれる能力テストで、非常に優秀であることがわかり、同じような子ども達が通う進学校に家から通うことになったし、彼女は、所謂お嬢様学校に通っていた。二人はもちろん普段は会えない。

 だから、学校が休みになると、彼女は京利に会いに来るんだよ、それこそ雨の日も風の日も。

 うちの庭で遊んだり、一緒に勉強したり、どこかに出かけたりしていたと記憶している。あんまりにも彼女がマメに会いにくるもんだからね。ある時、ふと京利に聞いてみたんだ。

『彼女といるのは、「運命」だからかい?それとも楽しいからかい?』ってね。

 そしたら京利は、『彼女は「運命」じゃない。少なくとも彼女は楽しそうだよ』って返してきた。僕はその後、何も言えなくなってしまった。思春期だし照れなんかもあるだろうしってことで自分を納得させた。

 そんな時に、ある噂が流れた。

 その製薬会社が無茶なやり方で、小さな製薬会社を何件も買収していって、しかも検証データを偽装して新薬を売り出そうとしてる。そんな噂だった。

 四ノ宮グループが調査に乗り出そうとしたんだけど、調査をするまでもなく、すでに官公庁は全て把握していたんだ。内部告発で発覚したんだろう、とにかく大騒ぎになったんだ。彼女は、学校も変わったはずだよ。

 もちろん四ノ宮グループは、その製薬会社との関係を全て断ち切った。

 末端の末端まで全て。

 その決断の裏では、たくさんの愛情や友情が犠牲になったことだろうね。皆、人生における重大な決断をしなくてはいけなかったはずだから。

 凛くんは、あるいは四ノ宮グループは酷い事をする。と思ったかい?」


 オレは、首を横に振りながら『それでも必要なことだ』と心の中で思った。


「彼女も犠牲になった者の一人だったということよね。周りの大人達は、それどころではなかったはずだし、彼女は本当に京利にご執心だったから。

 京利に会いに来れないことが、相当つらかったのでしょうね。

 突然、夜に彼女が家の前に現れたの。

 裸足で衣服も汚れていて、髪の毛も乱れていて。それが、才賀に呼ばれて急いで玄関に向かった私達が見た姿よ。それで言うの、『京利さんに会わせてください』って。何度も。何度も。

 私達は困惑してしまって考え込んでいたら、京利がやってきてね、応接室に通せって才賀に指示をだした。

 京利、私達、彼女が応接室に揃った。


「夜分遅くごめんなさい。京利さんに、どうしても会いたくて来ました。今、私の家は、誰もが忙しくしていて、窓から抜け出してきたので、こんな格好になってしまい大変申し訳ありません。

 あのっ!京利さんと私の婚約はもちろん今後も継続されますよね?私不安で。それでこんな無茶をして来てしまいました」


 私、正直ゾッとしたの。だって全てを断ち切った四ノ宮グループが、京利と彼女の関係だけ残すなんてありえないのに、さも当然のことのようにいうもんだから。
 
 私達が顔を見合わせていると、京利が話しだした。


「俺達の婚約は、すでに解消されている。必要ならすぐにキミのお父上に手紙を書くよ。信用できないか?」
 

「京利さん本気ですか?あんなに一緒に居ましたのに。それは四ノ宮グループのために言っているのですよね?」




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