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90.それはまるで熱烈なプロポーズのよう
「京ちゃん」
「うん。ちがうね。
見守るだけでなく、面倒を見させてくれないか。
これがアルファ性の本能なのか正直わからない。
四ノ宮家のこと、関係ないとは言わない。
それでもこれは僕達の問題なんだ。
君達から離れることなんてできない。
凛くんを離したくないんだ」
「凛ちゃん、本当にそうなの。
私達が死ぬまで、
あなた達は何処にも行かせないわ。
私達と居るの。勝手に消えたりしないで。
あなた達を愛しているの。
凛ちゃんのお世話をさせて欲しいの。
お願い」
オレは思った。
それはまるで熱烈なプロポーズのようだ。と。
なるほど。
もしも、京利が居なくなってしまったら、オレがどっかに行っちゃうかもって不安なんだね。その答えなら、もうオレは持っている。力強く答える。
「うん、居るよ。ずっと一緒に居る。
一生パパとママから勝手に離れていったりしないのことを約束する。
京利が起きたら、京利のマンションかもしれないけど、眠ったままだったらパパとママの家の京利の部屋で生きていくよ。
オレお世話されるの大好きだし。孫も元気に産むからたくさん面倒見てね。頼りにしてるよじいじとばあば。
でもひとつだけ確認したいんだけど。
これって、愛の告白じゃない、よね?」
「やったっ!やったよ理桜ちゃん!」
「ええ!やったわ京ちゃん!言質をとったわ!」
「「しあわせ~」」
「パパ、ママきいて!オレは京利だけだからねっ!」
「知らないわ~寝てる方が悪いのよ~」
「そうだそうだ~」
お二人さんは、オレそっちのけでくるくる、ぎゃっぎゃ、とご機嫌で踊りだした。何度も言うね、ここ病院で病室で、京利がそこに寝てるんですけど。
まあいいか。
アマテラスの天の岩戸の話みたいに、気になって起きたりするかもしれないし。
しまいには、パパがオレを抱き上げて、じいじだよ。ばあばよ。ってお腹に話しかけだした。
こんなオレでも、こんなに誰かを幸せにできるなんて。生きていてよかったな。
オレ達が元気に生きていくことで幸せになる人がいる。
たとえ意思疎通が難しくても、息をしていてくれるだけでオレは、オレ達は、どこまでも幸せになれる。
願い続けるけどね、起きてって。
「凛くん、彼女のその後のこと、きく?それともまた今度きく?」
「今、きく」
パパは大きく頷いて、話し出す。
「彼女は、京利を殺すつもりだったと全面的に罪を認めていて、凶器や血痕などの証拠も揃っていた。
防犯カメラにも犯行の様子が映っていた。
弁護士側は、罪を軽くする方向で動いていたんだけど、本人の発言『殺意があった、反省していない』というニつの点で、いくら促しても意志が変わらないということだ。
このままいけば、彼女が望んだ通り殺人未遂罪で罰を受けることになるだろうね。
最終的に、彼女の様子が普通じゃないと、弁護士側が満を持して行った精神鑑定も結果は、健常の範囲そのものだったから」
パパとママは、話がおわった後、またもや、ぎゅうぎゅうなでなでちゅっちゅっって甘やかしてくれて、オレは笑顔になるしかなくなった。
またすぐ来るからね。って帰っていったあと、オレは京利の日課である、手と足のマッサージをした。これは整形外科の四ノ宮先生に教えてもらった。固まってしまわないように解しておくためだ。オレは汗だくになりながら、マッサージを終えると、お風呂にゆっくり入ってごはんをたべた。
あとは寝る準備をして、自分のベッドにもぐり込み、京利と手を繋いで『おやすみ』って言って目を閉じた。
そうか、あの人は自分だけの京利を、
自分だけの京利にしたんだ。永遠に。
世界は完成したんだ。
『永遠とは、夢の中で試される』
あの人はもうこちら側に来ない。
オレにはそれがわかった。
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