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95.「抱きしめて欲しい」
都市一番の規模と世界最先端の医療を誇る、大病院【四ノ宮総合病院】の特別個室の一室に集った、総勢ニ十名の医師達。
京利が目覚めたこと。そして身体以外に目立った障害が残っていないこと。この二点に皆揃って驚愕した。
世界を牛耳ると言われる名高いアルファ性を、歴史上数多く輩出してきた四ノ宮家の中でも、類稀な知能と、群を抜いた身体能力を持つ京利が復活したことに、歓声をあげ、安堵した。
しかしそこはさすがの四ノ宮家の医師であり研究者なんだよね。すぐに京利の検査とその準備に取り掛かった。
己の研究に貴重なデータを収集するために、どのような検査方法が良いか思案し、様々な意見交換が行われ、各々の研究に課題を見出し、最後に京利、そしてオレにお祝いの言葉を捧げて、意気揚々と一旦去っていった。
その日から。
その日から京利は、毎日何かしらの検査を受けていた。オレとしては、ちゃんと京利が元気なのかが知りたい。
異常(京利が異常な能力をもっていることはさておき)がない。という事実が一番欲しいので、毎日何かしらの検査を受けるのは当然だと思っていた。どんなお手伝いでもする所存だ。
京利は、検査疲れを感じているようだったけど、決して弱音を吐かず、たんたんとこなしている。そのかわり、オレのルーティンがひとつ増えた。
類稀な知能と、群を抜いた身体能力を持つ京利、四ノ宮家の宝は、ひとつの検査が終わって特別個室に戻ってくるたびにオレに「抱きしめて欲しい」と強請るんだ。
オレはもう、きゅんきゅんしっぱなしだ。
京利が可愛い過ぎて、しんどい。
そりゃいくら京利でもさ、目覚めたばっかりだし、例えベッドのまま移動していたとしてもさ、そりゃ疲れちゃうよね。
だからオレは、京利のベッドにあがって、ベッドの稼働部分の頭側の角度をあげて、背中にクッションをつめて、もたれている京利に膝立ちで近づいて、頭から肩を抱きしめる。ついでによしよしもすることにしている。オレが触りたいだけなんだけど。
ああ、京利。いい匂い。
「凛、キスもして欲しい」
しばらくして、キスも強請ってきた。
えっ、この『強請る』でキスを強請られたのははじめてだ。しかも最強のアルファ性の最強の上目遣いときた。
「なんだよ京利、オレを悶えコロす気なの?」
「だって俺は抱きしめる力が。今はない。
凛、キス」
京利は、目を閉じて上を向く。
もう!反則だよ!可愛いっっっ!
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。
京利の柔らかいけれど今は少し乾き気味な唇に、オレの唇を合わせる。軽く音を鳴らして、離す。
京利は、薄く目を開いてオレを見ていた。蜂蜜色の瞳が潤んで溶けている。
なんて美しくて、美味しそうなんだろう。
オレは、我慢できず、京利に近づきまぶたにキスをした。長いまつ毛の感触を唇に感じる。もっともっとって、舐めたいという気持ちが抑えられず、まぶたを舐める。
一度離れて、京利をうかがい見る。
「凛、気持ちいい、もっとして欲しい」
うぅ。だめだめだめだめ!
「だめだよ京利。この後の検査もちゃんと一緒に行こう?」
しばらくお互いの瞳を見つめ合う。
「わかった。じゃあまた夜にしてくれるか?」
「うん、もちろん」
京利とオレは微笑みあった。京利のフェロモンがオレにまとわりついてくる。オレのフェロモンもきっとそうだろう。
これは真理だな。
いくら完璧超人京利も家に帰れば、番に甘えるんだ。
うんうん。と勝手に哲学者になっていると、個室の扉がコンコンとノックされた。
「はい」
オレが返事をすると、
「凛様!赤坂でございます。入室許可をいただけますでしょうか」
うわっ!赤坂さんだ!
「ああ、入れ」
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