ある日『運命の番』に出逢ったオレに起こる、なんやかんや、でもやっぱり最高に幸せだと思う。

音羽 りんね

文字の大きさ
97 / 154

97.「御馳走様です」




「簡単なことですよ」


 赤坂さんは、口元をハンカチを使って美しい所作で拭き、満足気な顔で言った。


「ここへの御見舞に食べ物をお持ちになるということは、食べることがまだ困難と思われる京利様にではなく、凛様を思ってのことでしょう。

 今日はまだ誰もいらっしゃっていないようなので、このプリンは昨日の御見舞。賞味期限のことを考えるとそんなにたくさんお持ちになったとは、考えにくい。

 ここのお店のプリンは、5つ以上のお買上げから、この陶器のカップに入っているものと通常のガラスのカップと、どちらかを選択することができるんです。そして賞味期限は2日間です。ということは、昨日の御見舞だと考えられます。


 京利様の検査に付き添う凛様が、お客様とゆっくりプリンを食べることなどしないでしょう。

 きっと夕食のデザートになさいますよね。この少し大きめサイズのプリンですから、京利様とお二人で分け合ってお食べになったことでしょう。
 
 ですから、残りのプリンは3つです」


 パチパチパチパチパチパチッ!


「すごい!すごい!大正解!

 京利が赤坂さんを頼りにする理由がわかったよ!」


 京利の顔を見ると優しく微笑んでくれた。


「凛、プリンはまた俺が元気になって腹いっぱい食わせてやるから、赤坂に譲ってやってくれるか?」


「もちろんだよ!いっぱい食べて」


 オレは、宝物庫にいってプリン3つと追加の飲み物を準備している間に、京利と赤坂さんはお仕事と話をしていた。


 かっこいいな京利。
 好き。

 オレは、かちゃかちゃしながら覗き見てほくほくしていた。





 身体を動かしてもよいか、飲食してもよいか。

 まずは、これらの検査が優先的に行われた。

 一番、危惧されていた脳自体にも脳の神経にも異常はなかった。
 
 次に、全身の骨とか筋とかの検査があって、骨には異常はないが、筋力が著しく落ちていたり、筋が硬くなってしまっているようだ。

 始めは、ゆっくりとしたリハビリからでないと、筋が切れたりすることもあるみたい。徐々に筋力を戻しながら、やれることを増やしていきましょう。と、リハビリの四ノ宮先生が言っていた。

 食べること、飲むことは、内臓の機能や気管などの検査から、なんら問題はないと診断がでた。だから京利は、お粥と柔らかいおかずから食べはじめている。
 
 昨日は赤坂さんの言う通り、プリンも一緒に食べた。オレが京利に一匙ひとさじ分ずつスプーンで掬って、美しいお口にいれてあげた。可愛い。にこにこして幸せそうに口を開ける京利が可愛い。

 それに京利のフェロモンがとても甘い。オレはでれでれとした顔で蕩けていたと思う。もちろん美味しいプリンだった。…と思う。


 赤坂さんが帰り、検査にいって、戻ってきて、さあ、さてさてお待ちかねの夕食の時間!

 この時間がまた最高に幸せなんだ。

 京利は、手や腕が上手く力が入らないから、まずは握るリハビリの目的もあるけど、スプーンでゆっくり食べている。だから、オレの夕食も、ベッドに設置したテーブルに用意して、ベッドの足元に少しお邪魔して上にあがり、一緒に食べている。

 ゆっくりお話しながら、食べる。


「凛、美味しいな」


 って京利が言うと、オレも、


「美味しいね、京利」


 って返す。幸せだ。

 二人の混ざりあったフェロモンで、お互いを包みこむ。

 最後は一緒に、


 「御馳走様です」





 そしてついに消灯された夜。

 オレは約束通り、京利の太ももの部分をまたぎ、軽く座らせてもらって、京利にキスをする。

 あぁ、京利のフェロモンに、期待と劣情が同じぐらい入り込んでいる。

 ちゅっちゅっ。

 唇にキスをして、蜂蜜色の瞳を隠してしまうまぶたをぺろぺろと舐める。まぶたが震えてまつ毛も震える。少し開いて、蕩ける蜂蜜色の甘い瞳がのぞいた。




感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

言葉が通じない暴君皇帝の運命の番として召喚されました〜炎を鎮めたら冷徹な彼が甘々になりました〜

水凪しおん
BL
帰宅途中の夜道、突然の光に包まれた青年・アオイが目を覚ますと、そこは見知らぬ異世界の宮廷だった。 言葉も通じず、隔離された離宮に閉じ込められた彼が出会ったのは、ソラリア帝国を統べる皇帝・レオニダス。 強大な竜の血を引き、その力に肉体を焼き尽くされそうになりながら孤独に耐える冷徹なアルファ。 だが、特別な魔法を持たないはずのアオイには、彼の荒れ狂う魔力を静かに鎮める「不思議な波長」が備わっていた。 「触れるな」 お互いを傷つけることを恐れ、遠ざけようとする不器用な皇帝。 だが、アオイは苦しむ彼を見捨てられず、自ら灼熱の炎の中へと飛び込んでいく。 言葉の壁を越え、魂の波長が重なり合った時、冷徹な皇帝の態度は一変。 誰よりも優しく、独占欲に満ちた重すぎる溺愛が始まって――。 孤独な竜と、彼を癒やすただ一人のオメガ。 二人が真の「運命の番」となるまでの、切なくも温かい異世界救済ボーイズラブ。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。