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97.「御馳走様です」
「簡単なことですよ」
赤坂さんは、口元をハンカチを使って美しい所作で拭き、満足気な顔で言った。
「ここへの御見舞に食べ物をお持ちになるということは、食べることがまだ困難と思われる京利様にではなく、凛様を思ってのことでしょう。
今日はまだ誰もいらっしゃっていないようなので、このプリンは昨日の御見舞。賞味期限のことを考えるとそんなにたくさんお持ちになったとは、考えにくい。
ここのお店のプリンは、5つ以上のお買上げから、この陶器のカップに入っているものと通常のガラスのカップと、どちらかを選択することができるんです。そして賞味期限は2日間です。ということは、昨日の御見舞だと考えられます。
京利様の検査に付き添う凛様が、お客様とゆっくりプリンを食べることなどしないでしょう。
きっと夕食のデザートになさいますよね。この少し大きめサイズのプリンですから、京利様とお二人で分け合ってお食べになったことでしょう。
ですから、残りのプリンは3つです」
パチパチパチパチパチパチッ!
「すごい!すごい!大正解!
京利が赤坂さんを頼りにする理由がわかったよ!」
京利の顔を見ると優しく微笑んでくれた。
「凛、プリンはまた俺が元気になって腹いっぱい食わせてやるから、赤坂に譲ってやってくれるか?」
「もちろんだよ!いっぱい食べて」
オレは、宝物庫にいってプリン3つと追加の飲み物を準備している間に、京利と赤坂さんはお仕事と話をしていた。
かっこいいな京利。
好き。
オレは、かちゃかちゃしながら覗き見てほくほくしていた。
身体を動かしてもよいか、飲食してもよいか。
まずは、これらの検査が優先的に行われた。
一番、危惧されていた脳自体にも脳の神経にも異常はなかった。
次に、全身の骨とか筋とかの検査があって、骨には異常はないが、筋力が著しく落ちていたり、筋が硬くなってしまっているようだ。
始めは、ゆっくりとしたリハビリからでないと、筋が切れたりすることもあるみたい。徐々に筋力を戻しながら、やれることを増やしていきましょう。と、リハビリの四ノ宮先生が言っていた。
食べること、飲むことは、内臓の機能や気管などの検査から、なんら問題はないと診断がでた。だから京利は、お粥と柔らかいおかずから食べはじめている。
昨日は赤坂さんの言う通り、プリンも一緒に食べた。オレが京利に一匙分ずつスプーンで掬って、美しいお口にいれてあげた。可愛い。にこにこして幸せそうに口を開ける京利が可愛い。
それに京利のフェロモンがとても甘い。オレはでれでれとした顔で蕩けていたと思う。もちろん美味しいプリンだった。…と思う。
赤坂さんが帰り、検査にいって、戻ってきて、さあ、さてさてお待ちかねの夕食の時間!
この時間がまた最高に幸せなんだ。
京利は、手や腕が上手く力が入らないから、まずは握るリハビリの目的もあるけど、スプーンでゆっくり食べている。だから、オレの夕食も、ベッドに設置したテーブルに用意して、ベッドの足元に少しお邪魔して上にあがり、一緒に食べている。
ゆっくりお話しながら、食べる。
「凛、美味しいな」
って京利が言うと、オレも、
「美味しいね、京利」
って返す。幸せだ。
二人の混ざりあったフェロモンで、お互いを包みこむ。
最後は一緒に、
「御馳走様です」
そしてついに消灯された夜。
オレは約束通り、京利の太ももの部分をまたぎ、軽く座らせてもらって、京利にキスをする。
あぁ、京利のフェロモンに、期待と劣情が同じぐらい入り込んでいる。
ちゅっちゅっ。
唇にキスをして、蜂蜜色の瞳を隠してしまうまぶたをぺろぺろと舐める。まぶたが震えてまつ毛も震える。少し開いて、蕩ける蜂蜜色の甘い瞳がのぞいた。
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