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106.一種のアイテム
ついにその日が来た。
京利は、リハビリを必死でがんばって、普通に生活できるまでに復活した。ただ横で、そのがんばりを見ていただけのオレですら、汗だくになるような厳しい内容だった。
やっぱり京利は誰よりもかっこいい。好き。
胸がきゅんきゅんしっぱなし。好き。
オレの京利、最高にかっこいい。好き。
オレは、ついつい求愛フェロモンを出してしまい(全然コントロールできない、コントロール難しい)、毎日京利に抱かれた。優しい交わりだったけど、最高に温かくて気持ちよくて幸せだった。
「京利、お誕生日おめでとう」
オレは、一緒のベッドの中で目覚めて一番に伝えた。誰よりも早く伝えたかったんだ。昨日寝る前にも朝起きたら一番に!!って緊張していたほどだ。
「凛、ありがとう。最高に嬉しい。愛している」
京利は、ぎゅうって抱きしめてくれる。
「今年は、ケーキもシャンパンもないけど、はい、これを受け取って欲しい」
オレはベッドの下に枯れないように仕込んでいた一本の薔薇を取り出して、京利に贈った。
プレゼントは、何も買いにいったりできていないから、屋上庭園に咲いている薔薇を一本、管理しているおじいさんにお願いして切ってもらった。
おじいさんは、心良く譲ってくれて、どの花がいいかなって、オレに選ばせてまでくれた。とても優しいおじいさんだった。お花の仙人みたい。
「花達が喜んでいるよ。君達のような素敵な若者に愛でてもらえてね」
「こちらこそ、可愛いお花を見られていつも楽しませてもらっています、おじいさんありがとうございます」
「そうかいそうかい。それは僥倖だ。明日、出産するのかな?元気な赤ちゃんが産まれそうだ。私も陰ながら応援しているからね」
「はい!ありがとうございます」
オレは、薔薇に目を向けていた視線を、振り返りながらお礼を言ったが、そこにはおじいさんの姿はなく、手元には切ってもらった薔薇が残るばかりだった。本当に仙人だったりして。ふふふ。あっもしかしたら妖精王かもしれないな。
「ありがとう凛、綺麗な花だな。来年も言ってくれるか?」
「うん。もちろん。毎年誰よりも早く言うんだから」
「そうか、嬉しい、俺は幸せ者だ」
甘い蜂蜜が今にも一滴垂れてしまういそうだ。
京利は、オレの頬を綺麗な長い指でくすぐる。
「凛、愛している」
もう一度ぎゅうって抱きしめてくれる。
俺も凛真を挟んでぎゅうっと抱きしめ返した。
そんなまったりな朝を過ごしたオレ達は、現場に着いて、なにやら異様な盛り上がりをみせる雰囲気に、二人して今日を過ごす部屋の扉をあけたところで、手を繋いだまま唖然と、立ちすくんだ。
「おはようりんりん。ちょっと邪魔だよ。扉の前からどいてどいて」
「あっはい、ごめんなさい」
オレはそっと京利と一緒に扉の前からどいた。
部屋の中には、場を取り仕切るさえたんが声を張り上げて指示を飛ばしていた。
それをきいた助産師さんや看護師さんがバタバタと動き回っている。
そして前方最奥に、なんと『偉大なる外科医師様』の連さんが、どーんと座っていた。表情はいつもと同じ不敵な笑顔を浮かべて、グレーの瞳は爛々としていて、まるで、自転車の後ろについている反射板みたいに光っていた。めちゃくちゃ怖い。
「連、ちゃんと流れ、わかってんのか?!」
「任せろ。俺を、誰、」
「もっとクッション持ってきて!!あと、もう一枚シートいるな、」
「「「はい!!!」」」
皆様の熱気がすごいんです。
「凛、座っていよう」
京利はオレの肩をだいて、ちょうどそこにあったソファにゆったりと座った。
ははあ、なるほどね。
連さんはさえたんが冷静でいるための一種のアイテムなんだね。
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