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107.体育会系男子
あの連さんだってそれがわかっているから、話をぶったぎりされても文句も言わず、黙っている。
邪魔にならないようにソファに座り、肘置きに肘をついて手に顎をのせてさえたんをみていた。
もしかして、もしかしての有事の際の要員であることを本人もわかっているからなのか、チラチラ周りを見ながら、設備や必要なものが整っているのか確認しているようだ。
「連さんが気になるのか?」
ぷっ。京利が隣で心配そうに悋気を飛ばしてくる。肩に回している腕の力が強くなっている。
「京利、そりゃ気になるよ、連さんだけじゃなくてここにいる皆さんの動きが気になる。京利もいるし、さえたんもいるし、京利の命を救ってくれた連さんまでいる。他にもオレの出産を見守ってくれる人がこんなにいっぱいいるのに。贅沢にもオレは少し不安になっちゃってるんだよな。ほんとに贅沢だ」
「当然だよ、りんりん。母はみんな命がけで出産に挑むんだからね。もちろん、まーりんもこれから命はってがんばるんだよ?この世界に産まれてくるためにね。りんりんはひとりじゃない。それだけはわかっていようね」
いつの間にか、さえたんが優しい笑顔でオレが座るソファの前まできていた。しゃがんで、オレの両手を、両手で包んでくれる。
「ね?りんりん」
「はい」
オレはいつになく素直に返事をした。
「それじゃあ、とりあえずこの服に着替えてくれる?下着はつけないでね」
渡されたのは、スポッと被って、頭と手を出したらおわりのゆったりとしたチュニックタイプの服だ。さえたんがカーテンを締めてくれたから、すぐにすっぽんぽんになって着替えた。
「凛、俺はずっとそばにいるからな」
「京利、ありがとう。どうか皆さんの邪魔になるような強いフェロモンは出しちゃだめだよ?オレの好きな柔らかいフェロモンを出しててくれる?寝ちゃったら困るから軽くでいいんだけど」
「任せろ」
うん、安心した。
着替えも終わったしカーテンを開けようとしたら、その手を掴んでいきなり京利がキスをしかけてきた。一瞬だったけど激しく感情が行き交う、とびきり甘いキスだった。
「続きは、あとでな」
「うん」
二人、笑顔を交わす。
「はいはい、お二人さん、全部聞こえているからね」
さえたんが、カーテンをシャーッ!って一気に開ける。確かにまる聞こえだよな。それに気づいてオレは恥ずかしくて、顔に熱が集まる。
「さあ、りんりん、このベッドに仰向けで寝てくれるかい?上を向くとお腹苦しいけど少し我慢してね。まーりんの心音と陣痛の強さの間隔をモニタリングする装置をつけていくからね」
チュニックの裾をめくって、地肌のお腹にベルトが巻かれていく。さえたんは注意深く、装着する位置を探る。何度か巻き直して、無事に位置が決まり、モニタリングがはじまったようた。
「京利くん、りんりん、最後の確認事項だよ。
僕が限界だと判断したら帝王切開に切り替える。
いいね?」
「「はい」」
「もし、母体と子のどちらかの命しか救えない。
そういう事態が起きたらどちらの命を優先する?」
「凛だ。いかなる場合でも凛だ」
京利が力強く断言した。
実はこの最終確認は何度か今までも、あったんだ。京利だって選べない。それでも力強く断言する。ここにオレの意思が入る余地はなかった。
「わかった。それからりんりん、ちゃんと僕の言うことをできる限り聴くようにするんだ、それでその通りに動いて。僕を信じて」
「はい」
「よし、いい子」
パンパンパンッさえたんが皆の注意を引く。
‘’それでは皆さんいきますよ!
気合入れて!集中して!
愛を持って!新しい命の誕生に全力で挑め!
いくぞ!えいっ!えいっ!おー!!‘’
さえたんて体育会系男子なんだな。
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