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111.『誰よりもうるさい母』の称号
「凛、最高に美しい。俺だけの美味しい黒豆の瞳」
ぷっ、それやめてってば。ツボっちゃうんだよ。
ふふふってにんまり笑う。
今日の京利は汗を垂らして極上なイケメンだ。
余計におもしろい。
口角が優雅に上がっている。
大好きな蜂蜜色の瞳は、色が濃くなっている。
美味しそう。
だめだ。オレ達似た者同士だな。ふふん。
「りんりん!頭が出て、髪の毛が見えたよ。
肩が通るとき一気に畳み掛けるぞ!
いくぞ!りんりん!
息を吐いて!ふーーーーー」
「うぐぅーーーーー」
とにかく言われた通り息を吐こうしている。
「吸って」
「はああーーー」
「はい!力を入れて!力め!」
「ぐぅっううううはっふひゅぐぐぐぐぐぐ!」
「凛、いいぞ俺も見えた!凛真に会えるぞ!」
「りんりん、上手だ!
さあ次だ!いくぞ!
ふーーーーー
今だ!力め!」
「がぁっくっぐうううううっぐぎゅぐぐぐぎ」
オレは歯を食いしばる。
京利と繋いだ手を、力の限り握る。
「凛、いいぞ!」
「もう一度!」
「はあっ!ぐぎゅっぎりぐっぎぎぎぎぎ!!!」
大きな声が勝手に出てしまう。
右手は、ベッドに設置された握る棒。
左手は、京利の手。
オレ今すごい握力ぅううあああ!!
ぐっずるるぅっっぬるん
凛真が出ていった感覚かな。
最後は滑り出てくるようだった。
一気にすべての苦しみから解き放たれる。
はあっはあっはあっ
部屋の中は、オレの荒い息遣いだけが聞こえる。
静まりかえった室内。
皆が何かを待っている。
あのさえたんですら黙っている。
「ぎゃぁっぼぎゃあっほぎゃあっほぎゃあっほぎゃあほぎゃあほぎゃあほぎゃあほぎゃあほぎゃあっ」
場の空気が歓喜に入れ替わる。
ああ。産まれてきたんだ。
「りんりんおめでとう、無事に産まれてきたよ」
聖母の微笑みで、さえたんがゆっくり凛真をお腹の上ににのせてくれる。凛真っがんばったねっ。お母さんだよ。我が子を震える手でおそるおそる触れる。
「京利くんも良くやったよ。ほんとに。
この子は、間違いなく二人で産んだんだ」
「冴さん、ありがとうございます」
赤い!
凛真が赤い。
血の色をしている。
すごい!生きてる。
元気いっぱいに泣いてる。
動いている。
精一杯の力を入れて抱く。
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ
京利のカメラが荒ぶっていらっしゃる。
「ふぇっふぇっふぇっ、京利、さえたんありがとう。
皆さんもありがとう、連さんもありがとう。
皆さんのおかげで我が子を抱くことができました。
ふぇっふぇっふぇっ、皆さん、ひっひっ。
本当にありがとうございますっふえっ!」
皆さんは、賑やかな拍手とともに喜んでくれた。
オレは、凛真よりもはるかにうるさく泣いた。
オレはこの日、『誰よりもうるさい母』の称号を手にした。
その後は、へその緒を切って、一旦凛真が体重の測定と、身体の血を洗うために、処理する部屋に連れていかれた。さえたんが抱いて、一緒にいったから安心だ。
オレは、助産師さんと看護師さんに、後処理なるものを受けていた。子宮の中に残っている胎盤とか、羊水とか、その他もろもろを洗い流される。
これは、オメガ性の男性が普通分娩をした場合に行なわれる処理だそうだ。
なかなかないケースだから、たくさん研修医さんも来ていて恥ずかしかった。
京利の空気も不穏だったけど、これはしょうがないことだ。これからのオメガ性の男性の普通分娩に少しでもお役に立てるなら、本望だよ。
ちなみに、オレのおちんちんは、水色のシートの中で下腹部に、柔らかい布テープで張り付けられているから、見られてはいない。
女性だと、だいたい月に一回のペースで生理があるから、出血とともに子宮の中が洗い流されるように綺麗になるんだ。
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