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128.まるで宝石を嵌め込んだようだ
京利がまっすぐオレを見ている。
蜂蜜色の瞳が光を遮って、濃い琥珀色になっている。
そこには、オレが映っている。まるで琥珀に捕まって、中に閉じ込められてしまった古代生物のようだ。
オレは、引き寄せられるように、目を開けたまま京利の唇に自分の唇を重ねた。柔らかい感触がオレの心を包む。その温もりに全てを委ねるように目を閉じる。
一度重ねてしまったら、とまれるわけがない。オレは、京利の頰に掌をあてて、もっと近くに引き寄せる。京利の下唇を食む。わざと少し歯をあてる。それを合図に京利の口の中に舌を侵入させる。
障害物だ。その障害物を端から端まで丁寧に舐めて、開いてくれるのを待つ。
はぁっ。オレの唾液が二人の唇を滑らせ、くちゅっと湿った音がなる。
やがて開いた扉の中にオレは舌を大胆に差し込んだ。どこまで届くだろうか。たぶん京利の舌の長さの半分ぐらいが限界だ。それでもいいからとオレは懸命に舌を伸ばす。舌の先が届いたところからざりざりとお互いの舌を擦り合わせる。
はぁっはぁっ苦しい。欲しい。
京利が欲しい。もっともっと欲しい。
溜まった唾液が、うまく飲みこめないからこぼれていく。無意識のうちに京利の頭を抱え込むようにキスをしていた。いつの間にか、オレの舌は京利の舌に絡めとられて、自由に動けなくなっている。
オレの痺れた頭では、もう何も考えられない。だからといって舌を離すことはもっと考えられない。力を振り絞って、京利の舌に縋りつく。京利は、ついには優しく絡めていた舌をほぐし、オレの口の中に戻し、ちゅっと音をたてて、唇を離した。
「凛、今日の夜、抱いてもいいか?」
「聞かないで…はぁっはぁ。京利に抱かれたい」
「キス…ありがとう」
「うん、またしたい」
「もちろんだ。これから俺達は、数えきれないキスをするんだ」
京利がオレをひざに横抱っこして、頭を胸に凭れさせて、抱きしめてくれた。大きな京利の腕の中にすっぽり包まれる。オレの髪の毛の中に指をもぐらせて、何度も梳いてくれる。気持ちいい。オレは、眠ってしまった。
凛真は、いつもおっぱいを飲みながら眠ってしまう。
「凛真さんは、お母さんの匂いに包まれて、温かい腕の中で温かいおっぱいを飲んでるんですもん、お腹いっぱいになると幸せで満たされて、そりゃ寝てしまいますよ。可愛いですねえ。息子のことを思い出します」
真中さんは、うっとりと凛真の寝顔を見ている。凛真を大切に思ってくれているのが嬉しい。それに息子さんの赤ちゃんのころを思い出してくれるのも、嬉しい。
オレは、げっぷをさせようと、眠ってしまった凛真を縦に抱っこして背中を撫でてみる。
げっぷは無理にさせなくてもいいんだけど、母乳の吐き戻しを防ぐためもあるし、もしお腹に空気が入ってしまっていると、苦しくて泣いてしまうこともあるらしい。
凛真が苦しくなるのはなんとしても避けたいので、毎回げっぷが出てくれるように促すことにしている。
くふっ
「あっ、今のげっぷ?」
「そうです!出ましたね」
「凛真、えらいぞ!よくがんばったな」
ゆっくり横抱っこに戻して、しっかり抱きなおした。
!!!!!
「どうした?凛。!!!!!」
凛真の顔を見て、驚きでとまっていると、京利も横から凛真の顔を覗きこんで、驚く。二人して時間が止まっている。
「わあ!凛真さん目をお開けになったんですね!
綺麗…。素敵な瞳ですね…」
真中さんは感嘆している。
京利もオレも、あまりの美しい瞳に声も出ない。
初めて空気に触れて輝きだす、瞳。
穢れをしらない、瞳。
まるで宝石を嵌め込んだようだ。
「凛と同じ黒曜石の色だな。なんて美しいんだ」
「ほんとだね。凛真、綺麗な黒曜石…」
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