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134.ある日『運命の番』に出逢ったオレに起こる、なんやかんや、でもやっぱり最高に幸せだと思う。
青く晴れわたる空、ガランゴロンと祝福の鐘がなる。
京利とおれは、挙式を終え、白い衣装を身に纏い、手を繋いで教会の外にでた。
四ノ宮家のぱぱとままと京舞くん。さえたんと連さん。赤坂さん、凛真を腕に抱いた真中さん。
そして、めいがいる。
教会の扉から道の両端に、みんな並んで待っている。遠くであの屋上庭園の庭師さんが、手を振ってくれている。
本当におもしろいおじいさんだな。
結婚式で使うお花は、すべておじいさんにお願いした。なぜか、おれだけ結構遭遇できる。
一歩進むごとにみんなが満面の笑みで籠から花びらをふらせてくれる。
みんながおれ達を祝福してくれている。
一歩づつ進んで、ひとりひとりの顔を見て、笑顔に笑顔で答えていく。
めいの前に来た。おれは小さな花束を渡した。
めいも、しっかり頷いて受け取ってくれる。
ふと、気づく。
教会の門のところで佇む男女。
えっ?
焦点を合わせて、よく見ると…
間違いない。
おれの実母だ。
京利に目を向けると、真剣な顔で一度だけ頷く。
あの男性は、本当に『運命』だったんだな。
母親よりずっと若く見える。
母親は、おれと目が合うと、なんとも言えない表情になった。
繋いだ京利とオレの手は離れない。
これなら迷子になることはない。
一度おれは振り返って凛真を抱いた真中さんをみる。真中さんも無言で頷いて、歩き出した。
他のみんなも訳知り顔だった。
なるほど。
それからおれは、前に向き直し、まっすぐゆっくり母親に近づいていった。母親は少し動揺している素振りを見せている。男性の方が母親の背中に手をあてた。
母親の前に立つ。
母親は、怖じ気づいている。
「お母さん、来てくれてありがとう。
おれ、最高に幸せに生きているから。
こちらがおれの旦那様。
この子はおれが産んだ子だよ」
「凛……。」
何かぶちまけたい思いがあるが、上手く言葉にならないようだ。
「この結婚式に至るまで、なんやかんやあった。
…あったけどね、おれは最高の幸せを掴んだと思う。お母さん、おれを産んでくれてありがとう」
「凛っ!!あなたには、ひ」
「謝罪なんていらないっ!!」
「凛。謝罪を受け入れてやれ。
それも強さだ。大丈夫。
凛なら出来る。俺も凛真もいるだろ?」
今まで黙っていた京利がおれを促す。
おれは黙って母親の顔を見た。
母親は、ひとつ息をした。
「凛、あなたには本当になんと言っていいかわからない程、酷いことをしました。何度もしました。本当にごめんなさい。許さなくてもいいから、あなた達の事を遠くから想うことをどうかお許しください」
母親は、頭を下げた。
「私は、あなたのお母さんと番いました。あの頃の私は、本当に未熟でどうしょうもないガキだった。
人間ですらなかったと思っています。あなたに合わせる顔なんてありませんでしたが、京利様がお声をかけてくれたのです。このありがたい時間をいただけたこと本当に感謝しています。本当に申し訳ございませんでした」
隣の男性も頭を下げた。
「おれは……」
京利がぎゅうううと、繋いだ手を握ってくれる。
温かくて大きな手だ。凛真がふぁうって言った。
「お母さんそしてお母さんの番さん、許します。
すべて許します。
おれ達家族の事を考える事も許します。
正直、おれの気持ちの着地点がわからない。
だからこれ以上のことを今は言えないです」
母親と番の男性は、頭をあげてからもう一度頭を下げて、「ありがとうございます」と言って去っていった。
「凛!よくやった!愛しているっ!」
京利が、おれを脇の下から持ち上げてくるくる回った。みんなから歓声があがる。
「俺の凛は、一番だ!」
なんのだよ…って心の中でぼやく。
京利とおれは、雲ひとつない青空の下で、優しい口づけを交わした。
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