ある日『運命の番』に出逢ったオレに起こる、なんやかんや、でもやっぱり最高に幸せだと思う。

音羽 りんね

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5.なんでダメなの?

 

 さすがのメイのおかげで、かなり正気を取り戻したオレだったが、ケイトのお迎えの車がきて、乗り込んだ途端に、また深いキスと濃厚なフェロモンを浴びて、早くも涙目になっていた。

 運転手さんに丸見えだから恥ずかしいって言ったら、運転席との間にある黒い板からは、こちら側は見えないし、防音、防臭になっているから大丈夫だと説明された。
 もしかしなくても、ケイトってお金持ちだよね。


「リン、可愛い、好き」


 ちゅっちゅって、音をたてて、髪の毛やら顔やら耳やら握られた手やらに、ひっきりなしにキスをしてくる。
 後部座席で、安全の為にシートベルトもしっかり留めてくれて(動けないようにしてくれた、ともいう)、ぴったりお互いの身体を、隙間なく詰めて、ケイトはオレの横に座っている。

 オレの右手はケイトの左手に、オレの左手はケイトの右手に捕まっている。

 今も右手を少し持ち上げて、オレの目を見ながらてのひらに、愛おしそうに、優しく唇を押しあてた。ドキドキがとまらない。それなのに、ケイトは、そのままオレの掌を自分の頬にあてて、スリスリした。
 

 あぁ…
 顔が緩んでだらしなくなっていないだろうか。
 顔が熱い。


「リン、蕩けてる、可愛い、どうしよう」


 どうやら、オレを抱きしめたいけど、握ってる手を離したくない。己対己、みたいな事になってるらしい。
 さっきまたぶつぶつ言ってるのが聴こえてしまった。葛藤に次ぐ葛藤なんだって。
 なんて、ケイトを観察して冷静を装っているオレにも、もちろん葛藤がある。

 なんでダメなんだ?こんなにオレを慈しんでくれて、すごくいい匂いで求愛してくれて、かっこよくて、触れてくれる手も優しくて、声も最高だし、好きって言ってくれる、そんでもって奇跡的に出会った運命の番なのに、信じちゃダメ?


『運命だからって好きになるのはおかしい』


 本当に?運命だから好きだし、愛してるし、相手も同じ気持ちを返してくれる。運命だからすぐに番いたいし、繋がりたいし、触れ合っていたい。そうする事によってもたらされる幸せは、本物だと思う。
 
 あれ?なんかオレ今、引っかかった。

 ちょっとそれについて考えようとしたら、ケイトがキスしてきて、気持ち良くしてくれるもんだから、よく分かんなくなってしまった。ケイトを好きって思ってるこの気持ちは、勘違い?

 メイ、よく分かんなくなってきたよ。


「リン、愛してる」


 唇をくっつけたまま、ケイトは愛を囁く。
 恥ずかしい。完全に下着が濡れている。正直目が合うだけでやばい。


「リンが欲しい」


 上唇を食まれながら、熱い視線を浴びる。


「オレもケイトが欲しい」
 

「全部リンにやる。余すことなく」


 ケイトは、きゅううと目を細めて、オレに焦点をあわせた。獲物を追い込んだ獣のような目だ。

 熱いよ、その視線で焼け焦げてしまいそうだ。
はああぁ、自分の吐息が熱くて湿気を帯びている。
ケイトの熱い吐息も、こんな近くで感じてしまって、いても立ってもいられない。もう我慢できない。


 ねえメイ、なんで運命を信じたらダメなんだっけ。


「リンの全ては俺のものだ」


 ドクン。その堂々たる宣言に、一際大きく心臓が跳ねた。心臓が口から出そうだ。

 オレは熱すぎる空気に耐えられなくなって、ケイトの胸にもたれかかった。

 ケイト、なんとかして。熱いんだ。苦しい。触って、お願い。オレのものは、恥ずかしいけどさっきからずっと勃ってしまっていて、お尻もすごく濡れていて、下着が気持ち悪い。でもこんな事初めてでどうしたらいいかわからない。

 はぁはぁ、なんとか自分の現状をつたなくケイトに説明した。


「ちゃんと言えていい子だリン。すぐに楽にしてやる」

 
 蜂蜜色の瞳が、とろけた。




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