ある日『運命の番』に出逢ったオレに起こる、なんやかんや、でもやっぱり最高に幸せだと思う。

音羽 りんね

文字の大きさ
13 / 154

13.惚れ直した

 

 結局、オレの生まれて初めての発情期は、5日間続いた。情緒不安定でずっと泣いていた気がする。困ったことに、記憶もしっかり残っていた。正気に戻った時の恥ずかしさといったらない。そこまでは、ケイト、ケイトってずっと甘えていたんだから。

 ベッドの上じゃない時は、抱っこされてお風呂に入れてもらったり、ご飯を食べさせてくれたり、オレの番は、まじで本物のスパダリだった。実在していたんだな。

 あと、いつの間にかシーツが替えられていたり、ご飯が用意されていたり、姿を見ることは無かったけど、サポートしてくれる人が何人か居たんだと思う。
 極めつけはトイレ事情だ。なんと甘えん坊になったオレは、ケイトが見えなくなるのがとにかく嫌で、開けたドアの隙間を背に座ってもらって用を足していた。もちろん逆も然りだ。ヤバすぎるだろ。ところが、ケイトは甘えん坊のオレをずっとニコニコして、嬉々として面倒をみていた。


「……………………………………………」


 オレは、先程から絶句ぜっく中だ。
 記憶のオレと普段のオレとの乖離かいりにどうしたら良いのかわからなくなっている。


「ああ俺の可愛いリン、愛している」


 そんな事は関係ないとばかりにキスをしてくれるケイト、超絶スパダリ様。


「なあリン、俺、自己紹介していい?」


 えっ今更!?って思うよね。オレも思う。


「でも、先にリンの事を知りたいんだ。教えてくれる?」


 正気に戻ったオレの顔はこわばっていることだろう。だってオレの事知ったら、嫌になってしまうかもしれないし…。でも全部知ってもらいたいとも強く思う。
 

 ああそうか、オレはケイトを信頼したいんだ。


 ケイトは、ソファに座って、オレを横抱っこで膝に乗せてチュっチュっってしながら頭をなでたり背中をなでたり耳をくすぐったりしていてくれる。


「リン、俺にリンの事教えて」


 オレは、心を決めて話を始めた。


「オレの名前は、甲斐田凛。21歳。オメガ性で今まで一度も発情期が来なかった。いや、だった、かな」


「凛!」


 ケイトがあまりに嬉しそうに発音するもんだから、照れる。ぎゅうぎゅう抱きしめて、耳元で何度も呼ばないでよ。嬉しすぎて、話ができない。恥ずかしい。


「家族は、母しかいない。父も兄弟もいない。物心ついたころには、そうだった。母親は、とにかく惚れっぽくて、家にいる時はそれなりに優しかったけど、好きな人に会うためにいつもオレを放ったらかしにして家を何日も空けていた」


 ケイトは、オレの髪の毛に鼻を埋めてクンクンしていた。励ますように背中をトントンしてくれている。
 
  
「そして振られては泣いて帰ってきた。

『今度こそ運命の人よ!ビリビリしたの!』家を空ける時、いつもそう言って出ていった。
 オレが幼児だから親の庇護が必要だとか、考えもしなかったんだと思う。なんというか、そういう非常識な人だった。
 そんな生活を繰り返していて、5歳くらいだったかな。母親が一切帰って来なくなった。もうオレはそんな事ぐらいで泣かなくなっていたし、食料のやりくりも上手くなっていたから、今回は長いなってくらいにしか考えてなかったんだ。
 ところが、それから数ヵ月、ついに食料が底をついてしまった。さすがに困ったオレは、考えに考えて、そうだお店に行けばあるぞ!これはなかなかいい考えだ!って思いついて、近所のスーパーに行った。
 その頃のオレは、お金の存在はテレビで見て知っていたけど、お店のものはお金でかうもの、という常識が結びついていなかった。 
 結果、店の中で堂々と食い始めたオレは、捕まって警察に突き出された」


「凛!なんて大胆なんだ。堂々と食べるなんて最高だ。さすがだぞ凛!かっこいい!惚れ直した」




感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

言葉が通じない暴君皇帝の運命の番として召喚されました〜炎を鎮めたら冷徹な彼が甘々になりました〜

水凪しおん
BL
帰宅途中の夜道、突然の光に包まれた青年・アオイが目を覚ますと、そこは見知らぬ異世界の宮廷だった。 言葉も通じず、隔離された離宮に閉じ込められた彼が出会ったのは、ソラリア帝国を統べる皇帝・レオニダス。 強大な竜の血を引き、その力に肉体を焼き尽くされそうになりながら孤独に耐える冷徹なアルファ。 だが、特別な魔法を持たないはずのアオイには、彼の荒れ狂う魔力を静かに鎮める「不思議な波長」が備わっていた。 「触れるな」 お互いを傷つけることを恐れ、遠ざけようとする不器用な皇帝。 だが、アオイは苦しむ彼を見捨てられず、自ら灼熱の炎の中へと飛び込んでいく。 言葉の壁を越え、魂の波長が重なり合った時、冷徹な皇帝の態度は一変。 誰よりも優しく、独占欲に満ちた重すぎる溺愛が始まって――。 孤独な竜と、彼を癒やすただ一人のオメガ。 二人が真の「運命の番」となるまでの、切なくも温かい異世界救済ボーイズラブ。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。