牛人転生:オッパイもむだけのレベル上げです。

薄 氷渡

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1章 後編

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 昨日までは、お湯で絞った熱いタオルを使ってオッパイの清拭を行ってきた。
 ところが今夜からは、パイキュアーという洗浄魔法を使っている。
 俺の右手から熱い蒸気が吹き出すので、手間がかからず短時間で綺麗に出来た。
 
 次は、サヒラにも魔法による搾乳に取り掛かる。
 左手に樽をしっかりと持って構えた。
 右手は人差し指と中指で、サヒラのオッパイの先端を摘まんでいる。
 ちょうど、囲碁で石を打つときの手つきに似ているかもしれない。
 ミルク樽は、碁笥(ごけ)よりは何倍も大きいけどな。

「あっ、あの、坊ちゃま……。じ、焦らさないで、そろそろお願いします」

 指先の感触が良かったので、思わずグリグリといじくり回していたようだ。
 無意識にしたことで、わざとではない。

「おっと、すまない。では、ミルクを出すぞ。200cc:パイサック!」

 ブシャァツーー。
 やはり勢いよく吹き出した。水道の蛇口をひねるように簡単にミルクが搾れる。

「あぐぅっ。あぁっ、はぁはぁ。なるほど、セニィがあんなことになった理由がよく分かります。その魔法をかけられると、とんでもなくイイ刺激を感じるのです」

「そうなのか? 俺は別に、変な意図はないぞ。あくまでも、うちはミルクを売るのが商売だ。仕事として搾乳しているんだから、勝手に気持よくなられても困る。多少のことは堪えてくれ」

「失礼しました。私も変な気分にならないよう、できる限り我慢します」

「ああ、その方がいいと思う。次は、右を搾る。200cc:パイサック!」

 ブシャッー、ビチャッ、ビチャッ。
 魔法の力により、オッパイがミルクの蛇口のようになっている。
 2人目が終われば、これで樽の中は800cc強になるはずだ。ものの数秒で、みるみると水位が上昇していく。
 サヒラは、自分のふとももを指が食い込むくらい強く手で押さえ込んでいた。ミルクが噴出している間、彼女は小刻みに腕を前後させている。

「あっ、あっ、あっ。ム、ムリです。んんっ。あっ、ああっん。あっっ、あぁっー!」

「噴水は止まったか。あとは少量を手搾りでもらうからな」

 サヒラの先端部分を、俺の親指と人差し指で軽くつまんで出た分だけ少し搾る。
 それから、オッパイを上下に振り、残乳の雫を樽内に垂らし落とした。
 息を整えようとするように、サヒラは深く呼吸をしている。

「ふぅー、はぁー。ふぅー、はぁー。申し訳ありません。私ばかり、心地よい気分になってしまいまして」

「まあいいさ、かまわないぞ。よく分からないけど自然なことなら仕方ない」

「坊ちゃま。夜だけでなく魔法で朝も搾っていただくわけにいかないのですか?」

「ん? ダメだぞ。この魔法は女性の体に負担がかかるから、1日1回って先生から言われているんだ」

 大事な家族が、俺の魔法のせいで呼吸が止まったりしても困るしな。

「そうですか。わがままを言ってしまいました。お許しください」

「サヒラだって、そんなに1日に何度も搾られたらストレスがたまるだろ?」

「いえ、そんなことはありません。優しく上手に搾っていただければ胸も軽くなってスッキリします。私でも不特定多数のオスに輪搾されるのはイヤですが、坊ちゃまの手でしていただけるのは格別です」

「リンサク? 何か変なことをされたことでもあるのか?」

「回し搾りのことです。私は、この家の中でしか搾乳されていません。ですから、そのような恥辱を味わったことはありませんが。大昔のホル族が奴隷だった時代には、そういう行為もあったようです。ショービジネス的に、町でニンゲン種を相手に有料でそういうことをする店があったのだとか」

「なんだ、それは? 俺は、そんなことする気はないぞ」

「輪搾屋に拉致された奴隷ホル族のメスは、不衛生な環境の中で1日に100人ものオスを相手に揉みくちゃにされ続けたそうです。ですが、奴隷解放後は禁止されました。もう、そういう店は存在していないはずです」

 サーカスみたいなものか、それとも一種の風俗店なのだろうか。イヤがる女の子のオッパイを、大勢の男たちが揉み回すなんて。想像するだけも地獄のようだな。

「なんて酷い話だ。そんな時代もあったのか……。まあ、俺の搾乳魔法は、また明日の夜にな」

「はい。私も1日3回くらい何ともありません。また明日を心待ちいたします」

「さぁて、2人が終わったし。今夜もラスボスはセイカだ」

 俺はセイカの方に顔を向けた。
 セイカは、右手を口に当て左腕で胸を隠している。
 俺が先の2人に搾乳しているとき、その様子を彼女は顔を炎のように赤くしてジっと見ていたのだった。 

  今夜、3人目の搾乳へ取り掛かる。俺はポンっと、セイカの肩に右手を乗せた。

「セイカ、怖くはないか?」

「は、はい。ちょっと怖いけど、大丈夫です」

「じゃあ、まずは俺の手で綺麗にするから。パイキュアー!」

 覚えてから4回目になるパイキュアーの魔法を唱えた。
 スチームミスト・ハンドをセイカの胸に這わす。彼女は左腕で胸を押さえていたが、その隙間に俺の右手を滑り込ませた。

「ふぁわわわわ。熱っ、温かいです……」

 最初の1分で、彼女の前面を中心に左右にしっかりと俺の右手を横断させる。
 次の1分で右手を両脇に差し込んだり、肩から背中にかけても蒸気で汗と汚れを洗い流した。

「こうやって暖めると、血行が良くなるはずだ。それでミルク出がやすくなるかどうかは分からないけど、ウォーミングアップにはなるだろ?」

 もう少しでパイキュアーの魔法が切れるはずだ。
 残り1分は少し自分の両手を合わせ左手も蒸らした後、再び前面に手を戻した。
 俺は腕をクロスさせて、右手でセイカの右乳を掴んだ。左手は左乳を担当する。彼女を揉みほぐしオッパイの頭頂部を指で摘んでコネり回した。


「くふぅっ、はぁはぁ。たしかに、すごく体が火照ってくると思います。んっ、ふぁっ」

 パイキュアーが蒸気停止した。もったいつけずパイをどんどん捌いていこう。
 左手に持った樽の口をズッポリとセイカの下乳に押し当て、右手でオッパイの先を掴んだ。

「200cc:パイサック!」

「きゃぁっ。い、いきなり、そんなぁ。んっ、はふぅっ」

 ビシュッ、ビシュッー。
 パイサックの効力は、3人に対して同等に働いているように思われた。
 セイカから吹き出すミルクの水圧は、ほとんどセニィのときと変わらない。なかなか安定感のある魔法だな。

「片方は、もう終わったぞ。すぐ右も搾るか? それとも体力的にきつかったら、少し休むか?」

「はぁはぁ、ふぅっ。はぁはぁー。や、やめないで。このまま続けて欲しいです」

「分かった。200cc:パイサック!」

 ビシュァァッーー。
 ミルク樽の水位は、みるみるうちに上昇して楽に1.1リットルのラインを超える。あと数秒で1.2リットル以上になる。

「だ、だめぇー。くぅ、んふぁっ。かはぁっ。いっ、いぃっー」

 セイカは両手を床についていたが爪で引っかくような仕草で指を折り曲げ、ヒザもガクガクさせていた。
 魔法停止と同時に、セイカもセニィと同じように後ろにバタっと倒れ込んだ。
 1人あたり片側200ccにセーブしていたが、魔法による搾乳は指定量ピッタリで出なくなる。終わった途端に寝られると、手搾りで取ることができない。
 まあ、仕方ない。

「今夜はこれで完了だ。これから、俺は台所で作業をしてくるから。お湯とタオルは置いておくので、良かったら下半身は自分で拭いてみるといい」

「はい、坊ちゃま。おやすみなさい。明日も必ず、また是非お願いします」

「ハハハ。そんなにせがまれたら、しょうがないな。分かったよ、じゃオヤスミ」

 サヒラにそう告げて、俺はミルク樽の蓋を閉めると部屋を後にした。
 まったく、どうしちゃったのだろうか。俺は変なこと何もしていない。
 酪農の一環として、健全な搾乳作業に励んでいるだけだ。

 台所でハルナと合流すると、もう1個のミルク樽を受け取った。
 夜の時点では空樽が3個ある。そのうち2つを用いて、俺とハルナは2手に分かれ任務にあたる。搾乳後、これらを鍋で沸かしてから1個の樽にまとめるのだ。

 2.1リットル弱のホットミルクが沸き上がった。
 2リットルを樽に注ぎ、残りのミルクを小麦粉に溶かしてパン生地をこねる。
 朝食の準備の続きは、明日の朝に起きてからすることにしよう。
 長い一日が終わり、自分の部屋に戻ると布団に入った。

 それにしても、俺は魔法を3つも習得したのか。今日の治療院での出来事を思い返してみた。
 魔法でオッパイのカップサイズを判定し、魔法でオッパイを綺麗にし、魔法でミルクを搾る。全部がオッパイじゃないか。
 こんなスキルでは、どうやってもモンスターとなんて戦うことはできない。
 おとなしく家に引きこもって、搾乳に専念するしかないのだろうか。

 せめて回復魔法でも覚えられたら、話は違ってくるかもしれないのだけど。
 どこかで前衛をスカウトしてきて、パーティを組んで戦えばよいのだ。
 そうすると、俺は後衛の支援職ということになる。現状では、敵にダメージを与えるような魔法は何も使えないのだから。
 やはり当面はデソン先生に従事して、ミルヒールを習得できるよう頑張るしか他にないようだな。自分の将来を、あれこれと思案しながら眠り落ちた。

 ……。

 朝になり目が覚めると、何だか今までにない清々しい気分だった。部屋の窓を開けてから、台所に行く。
 夜に搾ったミルクの賞味期限が気になるのは、もはや仕方がない。
 冷蔵庫もない家だ。何かの拍子に突然ミルクが腐っていたとしても、落胆はするだろうが驚きはしないだろう。
 また、念のためパイサーチで確認してみたがBランクで問題なかった。

 朝食は、ホットケーキもどきと、野菜スープを作った。
 それと、付け合せにネギ塩もどきを出した。
 お湯でギィネという草を軽く茹でて苦味を抜いてから、水で冷やして切り刻む。最後に少し塩をまぶしただけの惣菜だ。

 バターもハチミツもなく、こんなホットケーキでは俺としても少し物足りない。
 ただ、家の収入が少し増えたことで砂糖を補充できる見込みがついている。
 今までは甘さ控えめで、砂糖をケチケチと少しずつしか料理に使えなかった。
 今日は、いつもより甘さを強調してみたのだ。

 家族揃って朝食に手を付ける。妹のアキホが特に喜んで食べている。

「今日のホッケおいしい!」

 𩸽ではないだが。
 ミルク蒸しパンが人気ナンバー1だとすると、ホットケーキはランキング2位に入るだろう。
 
 ところで、家の中で俺より年下なのは妹だけだ。
 他の家族は、俺が生まれる前から草と水ばかりの食生活を何年も送ってきた。
 だから、何も料理しないナマ草も文句なくムシャムシャ食べることはできる。
 アキホは、幼少期から俺の料理を食べている。
 ナマ草サラダは苦いとイヤがって、ほとんど食べようとしないのだ。
 人はひとたび舌が肥えてしまうと、違う食生活に対応することは難しい。
 もし俺が死んで料理する人が消えたら、真っ先に次に死ぬのはアキホになる。

 今朝は、家族みんなが嬉しそうに食べている。
 特に、メイドさん3人は、肌がツヤツヤしている気がする。
 俺は、今後の自分の予定について家族に話しておくことにした。

「あのさ、昨日は治療院でデソン先生という人から魔法について教えてもらったんだ。それで、今後は手伝いをしながら勉強を続けようと思う。今日は、ブリッセンっていう薬草を採取しに出かけてくるつもりだ」

「そおー、カイホちゃんも立派になったわねぇ」

「中絶魔法を覚えれば、一生安泰だぞ。妊娠したメス達を堕ろしまくるんだ」

 モーリアは素直に感心している。グランは食事中でも下品な話ばかりしている。
 なんかイヤだな。そんなことをするために魔法を覚えたかったわけではない。

「坊ちゃま、ブリッセン摘みに行くなら蜂に刺されぬようお気をつけください」

「蜂? もしかしてモンスターでもいるのか?」

「モンスターかどうかは分かりませんが、ミルビーという昆虫です。パイコイの森には蜂の巣がたくさんあるそうです。ブリッセンは森の手前に群生していますが、採集に行って蜂に刺される村人も多いのです」

 ブリッセンの花に、蜜蜂が群がっているのだろうか。俺も虫は苦手だ。

「了解。蜂に注意して、もし見かけたら逃げるよ。痛いのはイヤだからな」

「はい、それが懸命です。もし刺されたら、すぐ家に戻って来てください。私がブレストキッスで治療して差し上げますので。もし、昼寝中でも叩き起こしてくれてかまいません」

「まあ、サヒラが寝ていたら、母さんかヒビキ姉さんに頼むよ」

「あたしが昼寝中に起こしたら、殴るわよ。起きてるときなら別にいいけど」

「分かった、ヒビキ姉さんが寝てるときは頼まないよ」

「カイホちゃん。お母さんなら、いつでもいいのよ」

 モーリアは、たぶん寝てたら起こしても起きない可能性がある。
 ヒビキも1日18時間は寝ているから、営業時間は6時間くらいだろう。
 やっぱりサヒラに頼むしかないようだな。

「ところでミルビーっていうのは、スニャックみたいに毒があるの?」

「スニャックなんかに咬まれたら、放置していると高確率で死んでしまいます。でも、さほどミルビーの毒は強くないので何もしなくても10日くらいで自然治癒します。刺されても死にはしないですが、痒くなります」

「ハハハ。なんだ、そんな程度か。じゃあ別に大したことはなそうだな。むしろ、スニャックの方に襲われないように注意するよ」

 たぶん、蚊のような昆虫なのだろう。蛇と比べれば怖くはなさそうだ。

「それも、そうですね。出すぎた心配でした」

「もぅ、サヒラったら大げさねぇ。ミルビーの1匹や2匹に刺されたくらいで、わざわざブレストキッスをする人なんて、どこにもいないわよ」

 モーリアは、自分のことは棚に上げしてサヒラを笑っている。
 前に、俺が木の枝で擦ってカスリ傷を負ったことがある。そのときブレストキッスで治してくれた人なら、どこかにいたんだけどなぁ。

「わっはっはっは。サヒラは、カイホに種付けでもされたのか? 妊娠させたら、中絶は自分の魔法でやれよ」

 このクソ親父は、しょうもないな。この村の倫理観は、ちゃんと仕事しろ。
 それに俺は、まだ中絶魔法なんて使えないし。

「そんなこと、ありえません。まだ坊ちゃまは子供ですし」

「ともかく、俺はブリッセンの採取に出掛けるから。朝と昼の搾乳の手伝いは、今後もハルナに任せるよ。もしかしたら、帰ってくるのが夕方になるかもしれない。ミルクを納品する時間になっても俺が戻ってなかったら、父さんはハルナと樽を運んで行商人のところに行って欲しい」

「ああ、分かった。あまり無理するなよ」

「カー君、気をつけてね」

「カイホ君、夕飯の時間までには絶対に帰ってきてよね」

 ハルナは、俺のことを心配をしてくれているのだろう。
 セニィの方は夕飯の心配をしているのか、どっちだか分かりにくい発言だな。
 そんなこんなで、朝食を済ませた。

 右手にバットを装備し、左手にはナタを携えた。
 背中には採集用のカゴを背負っている。
 どこにブリッセンとやらが生えてるか知らんが、パイコイの森を目指し出発だ。
 とりあえず道なりに北東へと向かう。
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