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偶には洋風で
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健は温野菜に添えるため、黒ニンニクを自作していた。
小さな瓶で1000円近くするほど健康食品として効用の高い黒ニンニクや黒ラッキョウ。ニンニクやラッキョウ特有の悪臭がせず、しかも甘さが出るとあって物凄い変化を遂げるのだ。
幾つかの欠点を覚悟すれば、実は自宅で作れてしまう。古い炊飯器を捨てずに再利用すれば実に簡単である。
「もっとも、こいつが一番の難点なんだがな」
発酵させながら悪臭の元を抜くので、当然ながら異様な臭いがする。
判り易いのは黒ラッキョウで、ラッキョウ酢を作った時の臭いを鼻から深呼吸すると言えばどれほどの悪臭か判ろうものである。それでも健が自作にハマったのは、生よりもニンニクやラッキョウの効用が強く成る事。そして悪臭が消えて甘くなるという劇的な変化が大きいことがあった。また叔父さんから受け継いだ店舗に住処を移し、元の自宅で放置して発酵させれば良いというのも大きかったろう。
欠点はニンニクの悪臭とは食欲促進要素でもあることだろう。ラーメンなどで感じる『食いてえ!』という気持ちが湧かないのだ。
「よし。チーズも温まって来たぞ。こいつをこうしてっと」
チーズをアルミホイルで包んで温めた後、ナイフを入れてみる。
すると僅かな抵抗で刃が沈み、バターの様に使う事が出来た。ナイフの先で一部を持ち上げ、茹で揚げた野菜に載せて早速試食する。最初に食べる時は他に何もいらない。チーズの風味だけで十分に引き立てられており、組み合わせなど後から考えても良いくらいだ。
続いて生ハムや卵に載せて試食を終えた。
「うまいうまい。ハムや茹で卵にも合うな。黒ニンニクも中々良い感じだ。クリームチーズの方が合いそうな気もするが……っと。今度は塩っ気が欲しくなるな。塩気の強いチーズを選ぶのもアリか?」
溶けてまろやかなチーズと茹でた野菜の相性は抜群だ。
薄切りにしたハムや輪切りの茹で卵に着けてもなかなかで、ワイン辺りと相性が良さそうだがビールでも良いだろう。しかしチーズがまろやかなのは良いが、少しばかりまろやか過ぎる。塩気を足すために癖の強いチーズにするか、それとも生ハムの様に塩気の強い物を多めにプレートに載せるべきだろうか?
その辺りは大皿ならいくらでも解決できるが、小鉢だと少々工夫が必要そうである。
「ソーセージの研究はもうちょっと先の方が良いとして……。とりあえずはしょっぱい系のソースと……オリーブ辺りでバランスとってみるかな」
肉も並べたくなるが、赤字の内から冒険する訳にもいかない。
そもそもこの料理は万能型の野菜と組み合わせる為のバリエーションでしかないのだ。ここで更なる冒険を重ねるだけの余裕などないと言っても良い。その点、塩漬けのオリーブを並べておくのは簡単で良いだろう。香辛料を混ぜたソースはそのままだとキツイので、トマトのピューレ辺りと混ぜるのも良いかもしれない。
おそらくソレでバランスが取れる。そう思った所で新しく閃くモノがあった。
「いや、まてよ? オリーブでバランス取れて……ハムとも相性良いんだよな。スモークサーモンやアレも悪くないな」
さすがにスモークサーモンの買い置きなど置いてはいない。
だが同じような食べられ方をする食材なら用意してあった。元から研究しようと思っていた料理であり、メインディッシュにも酒のアテにもなるすぐれモノだったからだ。似た食べ方をする物であれば、比較研究くらいはできるだろう。
健が取り出したのは牛の赤身を切り出してローストしたものである。
「こいつを試すとして、そんなには要らないか」
温野菜を食べた直後でもあり、それほど分量は要らないだろう。
ほどよく寝かせて置いた肉の塊から、その内の一ブロックを取り出して切り分け始めた。そして用意しておいた二種類のソースを個別の皿に入れて、ちょこちょこと味わう事にする。肉汁と赤ワインをベースに玉ねぎやニンニクを摺り下ろしたグレイビーソース。そして醤油にワサビを溶いた和風ソースを用意していたのだ。グレイビーソスの中に醤油を入れるパターンもあるが、和風ソースと一緒に選べるようにしておくので、今回はその方法は使用していない。
それを温野菜の残りと共に交互に食べていく。
「思った通りローストビーフに合うな。ソースはまあ本格的なのも良いけど、和風ソースもなかなかだ」
試食してみて良い感じだったのでメニューとして考えてみる。
温野菜のサラダの小鉢と、ローストビーフサラダの小鉢は率の差でしかないので、季節で差をつけるとしておこう。そしてこれらを温野菜とチーズと一緒に並べて、大皿に盛ればそのままパーティ料理の一つとしても違和感がなかった。何よりも素材がどれも万能型というのが素晴らしい。これならばいつも用意する素材を利用して、その場で客の要望に合わせることができるだろう。
おそらくこれを基本形とすること自体は問題ないだろう。
「チーズの甘さとグレイビーソースや醤油に合うのはまあ当然だよな。問題は……硬いままのチーズや茹でてない野菜と組み合わせるかどうかだ」
チーズと温野菜に、ローストビーフが合うのは当たり前のことだ。
しかし生野菜とチーズであったり醤油と相性はどうだろうか? もちろんお勧めの組み合わせは決まっているが、そうでない組み合わせを好む客もいる。最初から好みのままつき通す者には問題ないが、どちらとも判らない者に『合うのか?』と聞かれた時に咄嗟に応えるくらいはしておきたいものだ。その答が例え『悪くはないが他に良い組み合わせがある』というものだとしても。好みに合わせたいと言うものはそれなりに居るのである。
その辺りは少しずつ試していくとして、経験が必要だとメモをしたためる。
「ここまで来ると、後は盛り方だよな」
色々試した後で、健は同じ組み合わせを色々な皿に盛り直してみた。
最初は大皿にまんべんなく並べていたが、それを積み上げる様に山形にしてみる。温野菜を最初に敷いて、その上にチーズ、その上に別の温野菜や生ハム。場合によってはローストビーフをドームの様に盛り上げたり、あるいはいつもの小鉢に少量ずつ盛ったり、お通し様の小さな器。あるいは深皿というのもあるだろう。陶器ではなくガラス製の皿というのもあるか。
要するに温野菜・チーズ・ハムという組み合わせを、小鉢のセットと大皿で用意するための練習と言えた。
「んー。やっぱり平皿とは別に用意した方がいいかな」
硬いままのチーズなら、チーズの上にハムや卵を載せれば済む。温野菜をその中間に置いても、スティック状にして並べたって良い。だが溶かすとどうも居心地が悪いのだ。溶けたチーズで絵を描けるような絵心がないのもあるだろう。しょっぱいソースを一緒に出す場合も、やはり個別に並べる必要があるというのも大きいが。
いずれにせよ、温野菜とチーズの組み合わせは定番の一つに加わってくれるだろう。
健は温野菜に添えるため、黒ニンニクを自作していた。
小さな瓶で1000円近くするほど健康食品として効用の高い黒ニンニクや黒ラッキョウ。ニンニクやラッキョウ特有の悪臭がせず、しかも甘さが出るとあって物凄い変化を遂げるのだ。
幾つかの欠点を覚悟すれば、実は自宅で作れてしまう。古い炊飯器を捨てずに再利用すれば実に簡単である。
「もっとも、こいつが一番の難点なんだがな」
発酵させながら悪臭の元を抜くので、当然ながら異様な臭いがする。
判り易いのは黒ラッキョウで、ラッキョウ酢を作った時の臭いを鼻から深呼吸すると言えばどれほどの悪臭か判ろうものである。それでも健が自作にハマったのは、生よりもニンニクやラッキョウの効用が強く成る事。そして悪臭が消えて甘くなるという劇的な変化が大きいことがあった。また叔父さんから受け継いだ店舗に住処を移し、元の自宅で放置して発酵させれば良いというのも大きかったろう。
欠点はニンニクの悪臭とは食欲促進要素でもあることだろう。ラーメンなどで感じる『食いてえ!』という気持ちが湧かないのだ。
「よし。チーズも温まって来たぞ。こいつをこうしてっと」
チーズをアルミホイルで包んで温めた後、ナイフを入れてみる。
すると僅かな抵抗で刃が沈み、バターの様に使う事が出来た。ナイフの先で一部を持ち上げ、茹で揚げた野菜に載せて早速試食する。最初に食べる時は他に何もいらない。チーズの風味だけで十分に引き立てられており、組み合わせなど後から考えても良いくらいだ。
続いて生ハムや卵に載せて試食を終えた。
「うまいうまい。ハムや茹で卵にも合うな。黒ニンニクも中々良い感じだ。クリームチーズの方が合いそうな気もするが……っと。今度は塩っ気が欲しくなるな。塩気の強いチーズを選ぶのもアリか?」
溶けてまろやかなチーズと茹でた野菜の相性は抜群だ。
薄切りにしたハムや輪切りの茹で卵に着けてもなかなかで、ワイン辺りと相性が良さそうだがビールでも良いだろう。しかしチーズがまろやかなのは良いが、少しばかりまろやか過ぎる。塩気を足すために癖の強いチーズにするか、それとも生ハムの様に塩気の強い物を多めにプレートに載せるべきだろうか?
その辺りは大皿ならいくらでも解決できるが、小鉢だと少々工夫が必要そうである。
「ソーセージの研究はもうちょっと先の方が良いとして……。とりあえずはしょっぱい系のソースと……オリーブ辺りでバランスとってみるかな」
肉も並べたくなるが、赤字の内から冒険する訳にもいかない。
そもそもこの料理は万能型の野菜と組み合わせる為のバリエーションでしかないのだ。ここで更なる冒険を重ねるだけの余裕などないと言っても良い。その点、塩漬けのオリーブを並べておくのは簡単で良いだろう。香辛料を混ぜたソースはそのままだとキツイので、トマトのピューレ辺りと混ぜるのも良いかもしれない。
おそらくソレでバランスが取れる。そう思った所で新しく閃くモノがあった。
「いや、まてよ? オリーブでバランス取れて……ハムとも相性良いんだよな。スモークサーモンやアレも悪くないな」
さすがにスモークサーモンの買い置きなど置いてはいない。
だが同じような食べられ方をする食材なら用意してあった。元から研究しようと思っていた料理であり、メインディッシュにも酒のアテにもなるすぐれモノだったからだ。似た食べ方をする物であれば、比較研究くらいはできるだろう。
健が取り出したのは牛の赤身を切り出してローストしたものである。
「こいつを試すとして、そんなには要らないか」
温野菜を食べた直後でもあり、それほど分量は要らないだろう。
ほどよく寝かせて置いた肉の塊から、その内の一ブロックを取り出して切り分け始めた。そして用意しておいた二種類のソースを個別の皿に入れて、ちょこちょこと味わう事にする。肉汁と赤ワインをベースに玉ねぎやニンニクを摺り下ろしたグレイビーソース。そして醤油にワサビを溶いた和風ソースを用意していたのだ。グレイビーソスの中に醤油を入れるパターンもあるが、和風ソースと一緒に選べるようにしておくので、今回はその方法は使用していない。
それを温野菜の残りと共に交互に食べていく。
「思った通りローストビーフに合うな。ソースはまあ本格的なのも良いけど、和風ソースもなかなかだ」
試食してみて良い感じだったのでメニューとして考えてみる。
温野菜のサラダの小鉢と、ローストビーフサラダの小鉢は率の差でしかないので、季節で差をつけるとしておこう。そしてこれらを温野菜とチーズと一緒に並べて、大皿に盛ればそのままパーティ料理の一つとしても違和感がなかった。何よりも素材がどれも万能型というのが素晴らしい。これならばいつも用意する素材を利用して、その場で客の要望に合わせることができるだろう。
おそらくこれを基本形とすること自体は問題ないだろう。
「チーズの甘さとグレイビーソースや醤油に合うのはまあ当然だよな。問題は……硬いままのチーズや茹でてない野菜と組み合わせるかどうかだ」
チーズと温野菜に、ローストビーフが合うのは当たり前のことだ。
しかし生野菜とチーズであったり醤油と相性はどうだろうか? もちろんお勧めの組み合わせは決まっているが、そうでない組み合わせを好む客もいる。最初から好みのままつき通す者には問題ないが、どちらとも判らない者に『合うのか?』と聞かれた時に咄嗟に応えるくらいはしておきたいものだ。その答が例え『悪くはないが他に良い組み合わせがある』というものだとしても。好みに合わせたいと言うものはそれなりに居るのである。
その辺りは少しずつ試していくとして、経験が必要だとメモをしたためる。
「ここまで来ると、後は盛り方だよな」
色々試した後で、健は同じ組み合わせを色々な皿に盛り直してみた。
最初は大皿にまんべんなく並べていたが、それを積み上げる様に山形にしてみる。温野菜を最初に敷いて、その上にチーズ、その上に別の温野菜や生ハム。場合によってはローストビーフをドームの様に盛り上げたり、あるいはいつもの小鉢に少量ずつ盛ったり、お通し様の小さな器。あるいは深皿というのもあるだろう。陶器ではなくガラス製の皿というのもあるか。
要するに温野菜・チーズ・ハムという組み合わせを、小鉢のセットと大皿で用意するための練習と言えた。
「んー。やっぱり平皿とは別に用意した方がいいかな」
硬いままのチーズなら、チーズの上にハムや卵を載せれば済む。温野菜をその中間に置いても、スティック状にして並べたって良い。だが溶かすとどうも居心地が悪いのだ。溶けたチーズで絵を描けるような絵心がないのもあるだろう。しょっぱいソースを一緒に出す場合も、やはり個別に並べる必要があるというのも大きいが。
いずれにせよ、温野菜とチーズの組み合わせは定番の一つに加わってくれるだろう。
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