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黒字への道
解決策への道
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何を言われたかを豊に伝えると苦笑が返って来た。
痛い所を突かれて言い返すこともままならず、やりたくはないがもっともな提案だったからだ。
かといって対策も思いつかずコンサルティングに頼る始末である。
「どうしたらいいと思う?」
「お前さんがしたいかしたくないかに尽きるな。考えは整理してやるが、決断はお前さんがしろ」
豊はメモ用紙に三つの単語を書き込んだ。
近隣の住人、遠方の客、女性客。そして遠方の客にバッサリ線を入れると、女性客に△マークを付ける。次に近隣の客の隣に少数と付け加え、次いで女性客の隣に多いかもしれないと記載してペンを置いた。
こういった情報はアナログで出力する方がまとめ易いという。
「ここは沿線だが支線のど真ん中でバスも交通する道は通ってるが狭くて、別の場所に大通りがある。バイバス道路計画でも持ちあがるか、でっかい工場でも立たなきゃ遠くから人が来ることはまず無いな」
前にも話し合ったことを改めて告げる。
言われなくとも痛感しているが、放っておいても人が来るような要素は何処にもないのだ。人が呼べるような観光の名所も無く、シャッター商店街をまとめて一つの不動産屋が購入すればマンションでも立つかもというくらいである。その時にはこの店も土地を売り払ってマンションの一角なり、駐車場にでもなっている事だろう。
とりあえずここで判断の基準が一つ出来た。
「外から来てもらう方向を諦めるのか。判らないでもないな」
「今の段階で遠くから人を呼べるようならカリスマ料理人としてネット配信でもした方がいいぜ。だから考え方は二つ。女性客が立ち寄り易くする手に乗るか、この近隣の客をもっと呼び込むか。後はまあ、今のまま改善を繰り返すだけってのもあるな」
豊はペンを取り上げ『客の満足度をあげる』と付け加えた。
つまり今の路線が正解であると捉え直して、改善を繰り返しリピーターを増やす路線だ。前に話した時はリピーターを増やす路線も検討していたので、それプラス@というべきか。
遠方の客を狙うよりは、遥かにやり易いのは確かであろう。
「リピーターを増やすだけじゃなくて、客に客を呼ばせる。満足できる場所を他人と共有したいって思わせる訳だ」
「ああ。土曜に来るアメリカ人の客みたいな感じか」
数少ない女性客が常連になるついでに友人を呼んでくれたのだ。
最初に聞いた時は外国人の客で居着いてくれるとも限らないから緊張したものである。それが今では土曜日オンリーとはいえ半ば常連化している。付け加えて言えば体格に見合ったレベルで食べるし、アメリカ本土の金銭感覚なので沢山食事してくれるありがたいお客である。
同じように近隣の客が友人や家族を呼んでくれればかなり変わって来るだろう。
「そっ。満足度の高い客はリピーターになるだけでなく客を呼ぶからな。その女性の場合は友人だったが、嫁さんや近所の住人を呼ぶ可能性がある」
「なるほど。かなり良さそうな案に聞こえるが……」
ただ、もし本当に妙案ならば最初から本命として提案しただろう。
そうでない理由はただ一つ。可能性は可能性に過ぎず、満足度というものは目に見えないからだ。
人間の心がゲームのように判り易いはずもない。
「感情なんて目に見えねえからな。常連化するほど回数を増えるとかならともかく、ダチやカミさん呼ぶなんてほどの気持ちを態度で判れなんて無理な話だ」
「確かに。頼んで呼ぶとかは最後の手段だろうし、ねだるのは気分は良くないだろうからな」
それに比べれば潜在的な客はある程度は調べる事が可能だ。
近所の客であれば家を調べてチラシを配るなり、それこそ地元で顔が広い人に紹介してもらうとかできなくはない。その全員が来るとも限らず客として居着くかは判らないが、知ってもらえれば何%かは呼び込める可能性があるだろう。
もちろんソレを職業とする者も居るし、豊も料金次第でやることもある。
「その辺をやってくれってんなら確実に見合った金は貰うぜ。俺だけじゃなくて、他の部署の人間にも依頼はするからな」
この手の作業は時間が掛かるので片手間ではできない。
そういう潜在的な客筋を調査し、隠れた需要に見合った料理を提案するとすれば豊が金をもらって仕事として取り組む時だろう。仕事ならば責任もって歩き回って傾向を調査し、有効な手段を自分以外でも会社の人間と話し合うはずだ。今は友人として相談に乗っているだけなのでそこまではやって居ない。
豊との相談は、あくまで責任を取らずに済む範囲でしているに過ぎないのだ。
「だから満足度を上げるのは地道に行う基本路線として捉え直すべきだな」
豊は『満足度を上げる』という文字から矢印を隣のページに描いた。
新たに上から下まで矢印を描き『常に改善を続けて満足度を上げることを目指す』と書き加えたのである。
もちろん豊はプロなので、この作業自体も健任せにはしない。
「あえて付け加える事じゃなくて、基本として捉え直すか。納得だ」
「おうよ。その上でどこの層を狙う戦略を組むかが重要なんだ。仮に女性客を狙う場合な」
話を書いたメモを見直し、豊は幾つか文言を選び出す。
リーズナブル、健康的でヘルシー、おしゃれ、女性がガッツリ食べれる。とメモのあちこちに配置して、その周囲にメニューを書き込んでいった。サンドイッチ、ポテトの盛り合わせ、何種類ものサラダ、パスタ、ケーキセットなどなど。いくつかはどう考えても居酒屋風ではないが……ひとまずノートに記載して分類だけはしておいた。
目指さないにしても要素がある事を考慮するのは悪い事ではない。
「おしゃれってのは難しいから除外にするにしても、幾つかは普通に取り入れられるよな。そんで、路線を拡大するならそっち向きの料理やセットも充実させる。藪蛇を避けて入れないというのも立派な選択だ。何となく入ってないんじゃなくて、理由があって入れないんだからな」
「美琴に昼間を貸すなら別だが、ケーキセットは無いな。酒に合うデザートもあるんだろうが」
ポテトの盛り合わせやサラダの種類拡充くらいならば可能だろうか?
他にもサンドイッチも温野菜とチーズに添えたりチョリソと一緒にホットドック風にすることもあるので可能ではある。しかしデザートとなると作れなくはない……というレベルなので無理には目指さない方が良いと思える。それこそ梅でゼリーを作るとかくらいなら難しくはないが。
こういった思案も話を聞き、ノートに書いて相談して初めて理解できる内容と言える。
「こうしてみると女性客を狙うのは難しいか? いや……意見を取り入れながら共用で使えるメニューを増やすとか、リーズナブルさやヘルシーさを常識の範囲で取り込むくらいかな。お前、ポテトやサラダってどのくらい増やせる?」
「本格的なのは数種ってとこだが、触感やフレーバーを変える程度なら幾らでも行けるぞ。そういった意味でもセンスの方が重要だな」
豊の質問に健は軽く首をひねって何事かを考え始めた。
例えばチーズ味にカレー味や、変わり種でアンチョビ・ソースというのもあるだろう。カタクチイワシをはじめとした小魚を使ったソースの事だが、酒に合うこともあって考慮に入れていたのだ。他にも太さ細さに皮付きを選べるようにできるし、じゃがバターも形状とフレーバーを同時に変えた品だと言えなくもない。
この話を聞いて豊は新たにページをめくり、皿の絵を描いて『●●種類のフレーバーを指定可能!』と記載していく。
「美琴の友だちも美琴ありきで忠告したんだろうしなあ。少なくとも俺には飾る自信はないぞ」
「その辺はしゃーないな。だとすると……だ。ポテトつまみながら駄弁りたい客や自分好みの味を探している奴は多いからな。偶にそういうフェアを開いてもいいかもな。普段は二・三種類くらい指定できりゃあ十分面白しれえ」
リーズナブルなポテトの盛り合わせでも調整できる範囲は色々とある。
サラダにしてもポテトにしても常に用意する万能系の食材だ。さすがに青物の野菜は数を控えめにするとしても、他の料理に使えるから無題には成り難い。よく使う幾つかを重視するだけで、その他の野菜は特定の日だけ増やすなら外しても問題は少ないだろう。またチーズ味ならチーズ味で複数のチーズを用意し、濃厚さの方も変える事だってできる。いつもやりたいことではないが、たまにやるフェアならば問題ない。そのチーズをポテトに使ったりサラダに使ったりできるというだけで、ちょっとしたお祭りに見えるから不思議であった。
そういう意味で『フェア』として期間限定と銘打てば用意るのは簡単だ。
「なるほど。そのくらいなら居酒屋に合っても不思議じゃないし、知れば来ても良い奴は居るか。じゃあ、こっちから提案なんだが……前に難しいと言ってた持ち帰り、このフェアの日に特定の品目だけならどうだ?」
「ん~。傷み易い商品とかは基本ダメってことを言い含めてれば問題ねえか。特定の日の特定の料理だけ持ち帰り可能ならその辺コントロールできるし家族が居るなら宣伝にもなるしな」
健は聞きっぱなしではないという意味で、自分からも案を出した。
もちろん今までのメニューと相談して、共食いになる商品に関しては考慮を考えなければならない。それこそリーズナブルにしたポテトの盛り合わせと、もろキュウ辺りがバッティングすればせっかくの常連客が一人減ることになる。無数の客が来てくれるなら問題ないとしても、砂を掛けて追い出すようなことはしたくないものである。だがそういう意味でも、特定の日の特定の商品であれば計算可能なのだ。うまく調整さえすれば、既存の客にはまるで影響ないのが素晴らしい。
やはり『フェア』というアイデアは導入してもよさそうだと思えた。
「ここまで来たら基本に色々と充実させて、徐々に女性客向きやご近所向きの料理を増やした方がいい気がしてきたな」
「やってみろよ。この方式なら失敗しても困りゃしねえからな」
アイデアにはメリットもあればデメリットもある。
女性の入り易い店構えやメニューを用意すると、失敗した時に既存の客が引くこともある。近所の客が酒いっぱいで延々と居座るのも問題だろう。だが店を徐々に良くしていく過程で、女性向けやご近所さん向けの料理があるだけならば何の問題も無い。一部のメニューが増えただけに過ぎず、フェアのみならば翌日には存在しないのである。
そして次に考えるべきは、何のフェアを最初にやるかであろう。
何を言われたかを豊に伝えると苦笑が返って来た。
痛い所を突かれて言い返すこともままならず、やりたくはないがもっともな提案だったからだ。
かといって対策も思いつかずコンサルティングに頼る始末である。
「どうしたらいいと思う?」
「お前さんがしたいかしたくないかに尽きるな。考えは整理してやるが、決断はお前さんがしろ」
豊はメモ用紙に三つの単語を書き込んだ。
近隣の住人、遠方の客、女性客。そして遠方の客にバッサリ線を入れると、女性客に△マークを付ける。次に近隣の客の隣に少数と付け加え、次いで女性客の隣に多いかもしれないと記載してペンを置いた。
こういった情報はアナログで出力する方がまとめ易いという。
「ここは沿線だが支線のど真ん中でバスも交通する道は通ってるが狭くて、別の場所に大通りがある。バイバス道路計画でも持ちあがるか、でっかい工場でも立たなきゃ遠くから人が来ることはまず無いな」
前にも話し合ったことを改めて告げる。
言われなくとも痛感しているが、放っておいても人が来るような要素は何処にもないのだ。人が呼べるような観光の名所も無く、シャッター商店街をまとめて一つの不動産屋が購入すればマンションでも立つかもというくらいである。その時にはこの店も土地を売り払ってマンションの一角なり、駐車場にでもなっている事だろう。
とりあえずここで判断の基準が一つ出来た。
「外から来てもらう方向を諦めるのか。判らないでもないな」
「今の段階で遠くから人を呼べるようならカリスマ料理人としてネット配信でもした方がいいぜ。だから考え方は二つ。女性客が立ち寄り易くする手に乗るか、この近隣の客をもっと呼び込むか。後はまあ、今のまま改善を繰り返すだけってのもあるな」
豊はペンを取り上げ『客の満足度をあげる』と付け加えた。
つまり今の路線が正解であると捉え直して、改善を繰り返しリピーターを増やす路線だ。前に話した時はリピーターを増やす路線も検討していたので、それプラス@というべきか。
遠方の客を狙うよりは、遥かにやり易いのは確かであろう。
「リピーターを増やすだけじゃなくて、客に客を呼ばせる。満足できる場所を他人と共有したいって思わせる訳だ」
「ああ。土曜に来るアメリカ人の客みたいな感じか」
数少ない女性客が常連になるついでに友人を呼んでくれたのだ。
最初に聞いた時は外国人の客で居着いてくれるとも限らないから緊張したものである。それが今では土曜日オンリーとはいえ半ば常連化している。付け加えて言えば体格に見合ったレベルで食べるし、アメリカ本土の金銭感覚なので沢山食事してくれるありがたいお客である。
同じように近隣の客が友人や家族を呼んでくれればかなり変わって来るだろう。
「そっ。満足度の高い客はリピーターになるだけでなく客を呼ぶからな。その女性の場合は友人だったが、嫁さんや近所の住人を呼ぶ可能性がある」
「なるほど。かなり良さそうな案に聞こえるが……」
ただ、もし本当に妙案ならば最初から本命として提案しただろう。
そうでない理由はただ一つ。可能性は可能性に過ぎず、満足度というものは目に見えないからだ。
人間の心がゲームのように判り易いはずもない。
「感情なんて目に見えねえからな。常連化するほど回数を増えるとかならともかく、ダチやカミさん呼ぶなんてほどの気持ちを態度で判れなんて無理な話だ」
「確かに。頼んで呼ぶとかは最後の手段だろうし、ねだるのは気分は良くないだろうからな」
それに比べれば潜在的な客はある程度は調べる事が可能だ。
近所の客であれば家を調べてチラシを配るなり、それこそ地元で顔が広い人に紹介してもらうとかできなくはない。その全員が来るとも限らず客として居着くかは判らないが、知ってもらえれば何%かは呼び込める可能性があるだろう。
もちろんソレを職業とする者も居るし、豊も料金次第でやることもある。
「その辺をやってくれってんなら確実に見合った金は貰うぜ。俺だけじゃなくて、他の部署の人間にも依頼はするからな」
この手の作業は時間が掛かるので片手間ではできない。
そういう潜在的な客筋を調査し、隠れた需要に見合った料理を提案するとすれば豊が金をもらって仕事として取り組む時だろう。仕事ならば責任もって歩き回って傾向を調査し、有効な手段を自分以外でも会社の人間と話し合うはずだ。今は友人として相談に乗っているだけなのでそこまではやって居ない。
豊との相談は、あくまで責任を取らずに済む範囲でしているに過ぎないのだ。
「だから満足度を上げるのは地道に行う基本路線として捉え直すべきだな」
豊は『満足度を上げる』という文字から矢印を隣のページに描いた。
新たに上から下まで矢印を描き『常に改善を続けて満足度を上げることを目指す』と書き加えたのである。
もちろん豊はプロなので、この作業自体も健任せにはしない。
「あえて付け加える事じゃなくて、基本として捉え直すか。納得だ」
「おうよ。その上でどこの層を狙う戦略を組むかが重要なんだ。仮に女性客を狙う場合な」
話を書いたメモを見直し、豊は幾つか文言を選び出す。
リーズナブル、健康的でヘルシー、おしゃれ、女性がガッツリ食べれる。とメモのあちこちに配置して、その周囲にメニューを書き込んでいった。サンドイッチ、ポテトの盛り合わせ、何種類ものサラダ、パスタ、ケーキセットなどなど。いくつかはどう考えても居酒屋風ではないが……ひとまずノートに記載して分類だけはしておいた。
目指さないにしても要素がある事を考慮するのは悪い事ではない。
「おしゃれってのは難しいから除外にするにしても、幾つかは普通に取り入れられるよな。そんで、路線を拡大するならそっち向きの料理やセットも充実させる。藪蛇を避けて入れないというのも立派な選択だ。何となく入ってないんじゃなくて、理由があって入れないんだからな」
「美琴に昼間を貸すなら別だが、ケーキセットは無いな。酒に合うデザートもあるんだろうが」
ポテトの盛り合わせやサラダの種類拡充くらいならば可能だろうか?
他にもサンドイッチも温野菜とチーズに添えたりチョリソと一緒にホットドック風にすることもあるので可能ではある。しかしデザートとなると作れなくはない……というレベルなので無理には目指さない方が良いと思える。それこそ梅でゼリーを作るとかくらいなら難しくはないが。
こういった思案も話を聞き、ノートに書いて相談して初めて理解できる内容と言える。
「こうしてみると女性客を狙うのは難しいか? いや……意見を取り入れながら共用で使えるメニューを増やすとか、リーズナブルさやヘルシーさを常識の範囲で取り込むくらいかな。お前、ポテトやサラダってどのくらい増やせる?」
「本格的なのは数種ってとこだが、触感やフレーバーを変える程度なら幾らでも行けるぞ。そういった意味でもセンスの方が重要だな」
豊の質問に健は軽く首をひねって何事かを考え始めた。
例えばチーズ味にカレー味や、変わり種でアンチョビ・ソースというのもあるだろう。カタクチイワシをはじめとした小魚を使ったソースの事だが、酒に合うこともあって考慮に入れていたのだ。他にも太さ細さに皮付きを選べるようにできるし、じゃがバターも形状とフレーバーを同時に変えた品だと言えなくもない。
この話を聞いて豊は新たにページをめくり、皿の絵を描いて『●●種類のフレーバーを指定可能!』と記載していく。
「美琴の友だちも美琴ありきで忠告したんだろうしなあ。少なくとも俺には飾る自信はないぞ」
「その辺はしゃーないな。だとすると……だ。ポテトつまみながら駄弁りたい客や自分好みの味を探している奴は多いからな。偶にそういうフェアを開いてもいいかもな。普段は二・三種類くらい指定できりゃあ十分面白しれえ」
リーズナブルなポテトの盛り合わせでも調整できる範囲は色々とある。
サラダにしてもポテトにしても常に用意する万能系の食材だ。さすがに青物の野菜は数を控えめにするとしても、他の料理に使えるから無題には成り難い。よく使う幾つかを重視するだけで、その他の野菜は特定の日だけ増やすなら外しても問題は少ないだろう。またチーズ味ならチーズ味で複数のチーズを用意し、濃厚さの方も変える事だってできる。いつもやりたいことではないが、たまにやるフェアならば問題ない。そのチーズをポテトに使ったりサラダに使ったりできるというだけで、ちょっとしたお祭りに見えるから不思議であった。
そういう意味で『フェア』として期間限定と銘打てば用意るのは簡単だ。
「なるほど。そのくらいなら居酒屋に合っても不思議じゃないし、知れば来ても良い奴は居るか。じゃあ、こっちから提案なんだが……前に難しいと言ってた持ち帰り、このフェアの日に特定の品目だけならどうだ?」
「ん~。傷み易い商品とかは基本ダメってことを言い含めてれば問題ねえか。特定の日の特定の料理だけ持ち帰り可能ならその辺コントロールできるし家族が居るなら宣伝にもなるしな」
健は聞きっぱなしではないという意味で、自分からも案を出した。
もちろん今までのメニューと相談して、共食いになる商品に関しては考慮を考えなければならない。それこそリーズナブルにしたポテトの盛り合わせと、もろキュウ辺りがバッティングすればせっかくの常連客が一人減ることになる。無数の客が来てくれるなら問題ないとしても、砂を掛けて追い出すようなことはしたくないものである。だがそういう意味でも、特定の日の特定の商品であれば計算可能なのだ。うまく調整さえすれば、既存の客にはまるで影響ないのが素晴らしい。
やはり『フェア』というアイデアは導入してもよさそうだと思えた。
「ここまで来たら基本に色々と充実させて、徐々に女性客向きやご近所向きの料理を増やした方がいい気がしてきたな」
「やってみろよ。この方式なら失敗しても困りゃしねえからな」
アイデアにはメリットもあればデメリットもある。
女性の入り易い店構えやメニューを用意すると、失敗した時に既存の客が引くこともある。近所の客が酒いっぱいで延々と居座るのも問題だろう。だが店を徐々に良くしていく過程で、女性向けやご近所さん向けの料理があるだけならば何の問題も無い。一部のメニューが増えただけに過ぎず、フェアのみならば翌日には存在しないのである。
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