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黒字への道
ポテト祭
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新しい試みとしてフェアを導入し、最初はポテト祭を企画した。
酒を頼まずポテトのみを食べる客など、『共食い問題』は可能性に過ぎない事もあり、対策だけして全体で吸収する事にした。この店のセットは小鉢二つと店長のお勧めの小鉢一つという事に成っている。酒も小鉢も400円の均一なので小鉢扱いとし、セットの中に原価率の良いチューハイ系を入れることで回収するのだ。ポテトと飲み物はセットなので違和感は無いのが良い。
もちろん共食いが起きなければ無理に進めはしない。
「本当に塩だけで三種類ありますね。まずは海塩とマスタードで一皿ずつ、皮付きとチップス型でお願いします」
「なら私はいつものと、ポテトは細切りをモンゴル塩でもらおうかしら。シェアしても良いのね?」
「別に構いませんよ。少々お待ちください」
アメリカ人の女性客は相変わらず健啖家だ。
前々から宣伝していたこともあり、試してみたい味付けで色々愉しんでくれるようだ。ちなみにカッパさんはこの日ですらいつものようにキュウリ構成だったので、キュウリにも合う海塩で味付けたポテトを勧めておいた。選んだ形状は食べ応えのある皮つきポテト状態である。
ポテトのメリットはま、客の好みに合わせ易い事だろう。
「もう一種類の塩は抹茶塩だけど、柚子胡椒とか用意しなかったの?」
「秋にもやるつもりなんで、楽しみにしててください」
芋は二回旬があるので、フェアも二回出来るのがお得だ。
この日はポテトの出が狙い通りに多いので、御客には基本的に肉を進めている。アメリカ人の女性に方にはチョリソを勧め、常連の女性客の方はやはりローストビーフをお勧めしておいた。友人二人で連れ立っている事もあり、取り分け用の小皿は多めに付けておくのも忘れてはいけない。
チェーン店に負けてる分はこういう気配りで取り返す必要があった。
「次のフェアは何ですか? 気に成ります」
「最初はサラダだけにしようかと思ったんですが、居酒屋ですからね。同じく微妙なパスタも合わせてフェアにしました」
「まあ、お洒落な組み合わせね」
居酒屋でサラダは定番だが、フェアをやるほどかと言われたら微妙になる。
同じく微妙なパスタのフェアも同時に開催し、二つ合わせるとお洒落に見えなくも無いという塩梅だ。どのみち用意する調味料は似たようなものになるし、結果的にお洒落に見えるならば女性向けにもなるだろう。
その事もあり、ホームページに載せる写真などは今の内から試行錯誤していた。
「大将、じゃがバターを大丸でな!! あとは基本のソースも追加で頼む! 酒もじゃ!」
「あいよ!」
そんな中で新しい常連も加わってくれたのは実にありがたい。
指定された調味料と形状とは別に、マヨネーズやケチャップなどのディップは無料で添えている。中にはモリモリ食べて無くなる人も居るので、そういう時は頼まれたら追加するようにしていた。もちろん大皿の方は指定するタイプの調味料もディップ状でサービスしている。
このお客さんも新しい常連の一人で、食欲も好奇心も旺盛な御仁である。
じゃがバターお待ち。酒も持ってきます」
「おうおう。これよこれ」
駅前シャッター商店街は、良くも悪くも駐車場が無い。
誰からも文句は言われないが、車で客が来れないのは欠点でもある。ただ飲酒運転が法令的に厳しくなったことを考えれば、車に乗らないお客だけが酒を呑むという意味では安心だろう。平成の時代には注意を呼び掛けても、『トラックの中で酒が抜けるまで寝るから大丈夫!』なんて言って即座に乗る客も居たそうだが、そういう客が訪れないのは良い事かと思っておこう。
いずれにせよ、今の環境に付き合っていく他はない。
「ありがたい限りですが、ほどほどにしておいてくださいよ。ご隠居」
「ふん。まだまだ若い者には負けんわい!」
とはいえ自己申告は自己申告に過ぎない。
猟師(本業は農家で現役)を引退したというこのご隠居のように、まだ若いと言って無茶をしたがるご老人も居る。下手をすると申告してないだけで糖尿の可能性もあるので、その辺りは注意だ。酒と料理だけ提供して居れば良い訳ではないのが難しい。流石に『家の食事は食べないのに酒ばかり飲んで』と言われても困るが、健康問題は別格なのだ。
そういう意味でも、常連の体調はそれなりに把握しておく必要があるだろう。
「ポテトのアンチョビ・ソースとチーズの絡める方で二種類とも小丸の串でお願いします。あとテキーラはありますか?」
「追加承りました。すみませんがテキーラは入れてないですね。ボトルキープされるなら注文しておきます」
この日ばかりは料理の関係もあり大皿よりも小鉢の連弾が多かった。
いつもは他の物を食べるであろうお客にも、お試しで色々試せるのは好評だったようだ。その確かな証拠として、いつもは使ってない調味料のほうが売れている。形状も太いか細いかの差しかなかったが、今日だけは色々な形状で出ていた。以外にも、お通しに出したシリシリ用のピーラーでスライスした物も好評だったようだ。
何事もやって見ないと分からないという例であろう。
(最初のフェアは居酒屋にマッチしている事もありなんとか成功に終わったな。次もこう願いたいもんだ)
ポテト祭りは成功裏に終わり健も内心で胸をなでおろしていた。
いつもの延長上なのに少し変わったことができる、自分の好みを探せるというのが大きかったのだろう。次回のフェアにも期待したいところだが、さすがにパスタとサラダでは微妙なので何かのアイデアが欲しい所である。
だが、一歩一歩着実に進んでいると健に手応えを感じさせていた。
新しい試みとしてフェアを導入し、最初はポテト祭を企画した。
酒を頼まずポテトのみを食べる客など、『共食い問題』は可能性に過ぎない事もあり、対策だけして全体で吸収する事にした。この店のセットは小鉢二つと店長のお勧めの小鉢一つという事に成っている。酒も小鉢も400円の均一なので小鉢扱いとし、セットの中に原価率の良いチューハイ系を入れることで回収するのだ。ポテトと飲み物はセットなので違和感は無いのが良い。
もちろん共食いが起きなければ無理に進めはしない。
「本当に塩だけで三種類ありますね。まずは海塩とマスタードで一皿ずつ、皮付きとチップス型でお願いします」
「なら私はいつものと、ポテトは細切りをモンゴル塩でもらおうかしら。シェアしても良いのね?」
「別に構いませんよ。少々お待ちください」
アメリカ人の女性客は相変わらず健啖家だ。
前々から宣伝していたこともあり、試してみたい味付けで色々愉しんでくれるようだ。ちなみにカッパさんはこの日ですらいつものようにキュウリ構成だったので、キュウリにも合う海塩で味付けたポテトを勧めておいた。選んだ形状は食べ応えのある皮つきポテト状態である。
ポテトのメリットはま、客の好みに合わせ易い事だろう。
「もう一種類の塩は抹茶塩だけど、柚子胡椒とか用意しなかったの?」
「秋にもやるつもりなんで、楽しみにしててください」
芋は二回旬があるので、フェアも二回出来るのがお得だ。
この日はポテトの出が狙い通りに多いので、御客には基本的に肉を進めている。アメリカ人の女性に方にはチョリソを勧め、常連の女性客の方はやはりローストビーフをお勧めしておいた。友人二人で連れ立っている事もあり、取り分け用の小皿は多めに付けておくのも忘れてはいけない。
チェーン店に負けてる分はこういう気配りで取り返す必要があった。
「次のフェアは何ですか? 気に成ります」
「最初はサラダだけにしようかと思ったんですが、居酒屋ですからね。同じく微妙なパスタも合わせてフェアにしました」
「まあ、お洒落な組み合わせね」
居酒屋でサラダは定番だが、フェアをやるほどかと言われたら微妙になる。
同じく微妙なパスタのフェアも同時に開催し、二つ合わせるとお洒落に見えなくも無いという塩梅だ。どのみち用意する調味料は似たようなものになるし、結果的にお洒落に見えるならば女性向けにもなるだろう。
その事もあり、ホームページに載せる写真などは今の内から試行錯誤していた。
「大将、じゃがバターを大丸でな!! あとは基本のソースも追加で頼む! 酒もじゃ!」
「あいよ!」
そんな中で新しい常連も加わってくれたのは実にありがたい。
指定された調味料と形状とは別に、マヨネーズやケチャップなどのディップは無料で添えている。中にはモリモリ食べて無くなる人も居るので、そういう時は頼まれたら追加するようにしていた。もちろん大皿の方は指定するタイプの調味料もディップ状でサービスしている。
このお客さんも新しい常連の一人で、食欲も好奇心も旺盛な御仁である。
じゃがバターお待ち。酒も持ってきます」
「おうおう。これよこれ」
駅前シャッター商店街は、良くも悪くも駐車場が無い。
誰からも文句は言われないが、車で客が来れないのは欠点でもある。ただ飲酒運転が法令的に厳しくなったことを考えれば、車に乗らないお客だけが酒を呑むという意味では安心だろう。平成の時代には注意を呼び掛けても、『トラックの中で酒が抜けるまで寝るから大丈夫!』なんて言って即座に乗る客も居たそうだが、そういう客が訪れないのは良い事かと思っておこう。
いずれにせよ、今の環境に付き合っていく他はない。
「ありがたい限りですが、ほどほどにしておいてくださいよ。ご隠居」
「ふん。まだまだ若い者には負けんわい!」
とはいえ自己申告は自己申告に過ぎない。
猟師(本業は農家で現役)を引退したというこのご隠居のように、まだ若いと言って無茶をしたがるご老人も居る。下手をすると申告してないだけで糖尿の可能性もあるので、その辺りは注意だ。酒と料理だけ提供して居れば良い訳ではないのが難しい。流石に『家の食事は食べないのに酒ばかり飲んで』と言われても困るが、健康問題は別格なのだ。
そういう意味でも、常連の体調はそれなりに把握しておく必要があるだろう。
「ポテトのアンチョビ・ソースとチーズの絡める方で二種類とも小丸の串でお願いします。あとテキーラはありますか?」
「追加承りました。すみませんがテキーラは入れてないですね。ボトルキープされるなら注文しておきます」
この日ばかりは料理の関係もあり大皿よりも小鉢の連弾が多かった。
いつもは他の物を食べるであろうお客にも、お試しで色々試せるのは好評だったようだ。その確かな証拠として、いつもは使ってない調味料のほうが売れている。形状も太いか細いかの差しかなかったが、今日だけは色々な形状で出ていた。以外にも、お通しに出したシリシリ用のピーラーでスライスした物も好評だったようだ。
何事もやって見ないと分からないという例であろう。
(最初のフェアは居酒屋にマッチしている事もありなんとか成功に終わったな。次もこう願いたいもんだ)
ポテト祭りは成功裏に終わり健も内心で胸をなでおろしていた。
いつもの延長上なのに少し変わったことができる、自分の好みを探せるというのが大きかったのだろう。次回のフェアにも期待したいところだが、さすがにパスタとサラダでは微妙なので何かのアイデアが欲しい所である。
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