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黒字への道
秋の食材
●
九月はともかく、九月頭というのは割りと微妙な時期だ。
本当はちゃんと美味しい物が採れるのだが、イメージ的に秋の作物は月半ばから収穫されると思われてしまう、まだ暑さの名残もあるので重たい物もまだ早い。
ゆえに季節を問わぬ物を置き換える程度だ。
「そこでオールシーズンの鶏を中心に、揚げ物の中で軽いイメージの物を用意する」
「海老とカボチャの天麩羅ね。どっちも甘くて美味しいから判る気はするわ」
九月頭のフェアは揚げ物祭りだ。
好みに合わせて鶏は唐揚げに天麩羅やフライドチキン。油を使うから特に軽いという訳でもないのだが、サイズを変化させて作れる上に原価も安いので中心に据え易い。海老は小さく形の悪い物を選べばそう高くないので、サイドを張るには十分だろう。これにカボチャやサツマイモの天麩羅などを並べれば、ホッコリと甘く幸せな気分にしてくれる。
ガッツリ食べたい客にはたくさん出せるし、普段から使う材料なので余っても困らない。
「他にもイカや……竹輪の磯部揚げなんかも良いな」
「ん-。どうせなら野菜にノンフライヤーとか使ってみない? スナックみたいで美味しいと思うわよ」
候補を色々と並べていると美琴が多めに仕入れた野菜を持ち上げる。
夏祭りでポン菓子を作る際に、コメ以外で変わり種を作ったのだ。同じようなノリで準備して置けばお通しにも使えて良いだろう。
ノンフライ単独では微妙でも、比較すると悪くないだろう。
「そうだな。色々用意するとして……どうせ準備を増やすならホルモンやニンニクも揚げておくか」
ただしそのまま揚げるのではなく、油を切って干しておくものだ。
煎じてスパイスを馴染ませて保存食状にすることで、本来ならば軟らかく煮込んで一口で食べられる肉が、硬さを保ったまま調理するので長持ちする。噛めば噛むほどに味が染みて来るし、何より保存食なのでお通しとして即座に出せるのも良かった。ニンニクの方はホッコリと芋みたいになるのが面白い。当日は野菜のスナックを少々と、この干し肉を一切れほどお通しのセットで出せばバランス良いだろう。メインに誰もが好きな鶏の揚げ物を据えて、各種調理法で推していくだけでも十分は作れる。
一応はこれで揚げ物フェアそのものは準備OKだ。
「普通に行くなら問題ないはずなんだがなあ……。もう少し何か考えるか悩むところだ」
「でもポテトのフライは推さないんでしょ? そんなに良いアイデアって残ってる?」
ひとまずスムーズに整ったが物足りない気がしてくる。
これまでが苦労の連続だからそう思うのかもしれないが、妥協の産物な気もしてくるのだ。場の雰囲気が重要だと判ったから余計な手は尽くさず、判り易く食べ易い物で固めはしたのだが。
インパクトが薄いとも言う。
「前に教えてくれたジャンボ海老フライのスペシャル版でもやってみる?」
「それは要望されたらやる裏メニューだな。既にジャンボ海老自体は入れてるし……。しかし加工系というアイデア自体は間違ってないとは思うんだ」
そうそう良いアイデアなど転がっている筈はない。
テンプラ化したジャンボ海老自体は既にメニューの中に入れているので、海老が安く大量に手に入る時でもなければサービスする程でもないだろう。 しかし一品で話題を盛って来れるような話はそうそう転がって居たりなどしない。
そこまで考えた段階で、健は美琴の友人である花屋の娘を思い出した。正確にはあの娘に教えた色々な料理法である。
「海老を増やして余らせた頭でフライ? 逆に小エビに何かまとわせて……。いや、余計な事はしないと決めた。ならむしろ……」
あの時は海老の加工法だけを追求した。
頭の体操を兼ねて様々な加工で幾つものレシピを教えたのだ。頭のフライ・普通のエビフライ・刺身・シャブシャブ・アヒージョ・ビスク・海老真薯。こういう感じで同じものを追求してナニカできないか? 今回は揚げ物なので考えるのはそのバリエーションだけで良い。
その時に考えたのは切り分けた部分を使いこなす事だが……。
「よし、串揚げにしよう」
「はっ? 何言ってんのよ! 400円じゃ何本も用意できないでしょ? 野菜ばっか用意する気?」
健は首を振りながら実際に食材を調理し始めた。
海老の頭を何本か切り取り、ガラを外して身もぶつ切りにする。そして奥の方からチーズや野菜に色々な肉を取り出した。共通しているのは試食用やお通しに使う、切り落としとか手屑と呼ばれる端っこの食材だ。
それらに串を刺し、サイズ調整して行く。
「ミニ串揚げの盛り合わせにする。フォンデュでも食べるつもりでな。なんだったらフルーツがあっても良い。もちろん油の使い回しは止めないと駄目だが」
「あー!? その手があったか!」
普通の串揚げは焼き鳥のように何ブロックもの肉を一串に刺している。
だがチーズフォンデユなどにする場合は、食べ易くディップを漬け易いように一切れだけだ。この方法で一口大の食材を揚げていき、原価に見合うように『適当』に盛り合わせれば良いのである。もちろん各人の好みは反映させるが、その日に余った食材を利用することも原価を調整することもできるだろう。
様々な食材を紹介できるし、腹具合に合わせて軽重も弄れるのが丁度良かった。
「あとはディップだな。ポテトフェアの時みたいに塩やソースを中心に幾らか用意するか」
という訳で揚げ物フェアに向けて動き出したのである。
九月はともかく、九月頭というのは割りと微妙な時期だ。
本当はちゃんと美味しい物が採れるのだが、イメージ的に秋の作物は月半ばから収穫されると思われてしまう、まだ暑さの名残もあるので重たい物もまだ早い。
ゆえに季節を問わぬ物を置き換える程度だ。
「そこでオールシーズンの鶏を中心に、揚げ物の中で軽いイメージの物を用意する」
「海老とカボチャの天麩羅ね。どっちも甘くて美味しいから判る気はするわ」
九月頭のフェアは揚げ物祭りだ。
好みに合わせて鶏は唐揚げに天麩羅やフライドチキン。油を使うから特に軽いという訳でもないのだが、サイズを変化させて作れる上に原価も安いので中心に据え易い。海老は小さく形の悪い物を選べばそう高くないので、サイドを張るには十分だろう。これにカボチャやサツマイモの天麩羅などを並べれば、ホッコリと甘く幸せな気分にしてくれる。
ガッツリ食べたい客にはたくさん出せるし、普段から使う材料なので余っても困らない。
「他にもイカや……竹輪の磯部揚げなんかも良いな」
「ん-。どうせなら野菜にノンフライヤーとか使ってみない? スナックみたいで美味しいと思うわよ」
候補を色々と並べていると美琴が多めに仕入れた野菜を持ち上げる。
夏祭りでポン菓子を作る際に、コメ以外で変わり種を作ったのだ。同じようなノリで準備して置けばお通しにも使えて良いだろう。
ノンフライ単独では微妙でも、比較すると悪くないだろう。
「そうだな。色々用意するとして……どうせ準備を増やすならホルモンやニンニクも揚げておくか」
ただしそのまま揚げるのではなく、油を切って干しておくものだ。
煎じてスパイスを馴染ませて保存食状にすることで、本来ならば軟らかく煮込んで一口で食べられる肉が、硬さを保ったまま調理するので長持ちする。噛めば噛むほどに味が染みて来るし、何より保存食なのでお通しとして即座に出せるのも良かった。ニンニクの方はホッコリと芋みたいになるのが面白い。当日は野菜のスナックを少々と、この干し肉を一切れほどお通しのセットで出せばバランス良いだろう。メインに誰もが好きな鶏の揚げ物を据えて、各種調理法で推していくだけでも十分は作れる。
一応はこれで揚げ物フェアそのものは準備OKだ。
「普通に行くなら問題ないはずなんだがなあ……。もう少し何か考えるか悩むところだ」
「でもポテトのフライは推さないんでしょ? そんなに良いアイデアって残ってる?」
ひとまずスムーズに整ったが物足りない気がしてくる。
これまでが苦労の連続だからそう思うのかもしれないが、妥協の産物な気もしてくるのだ。場の雰囲気が重要だと判ったから余計な手は尽くさず、判り易く食べ易い物で固めはしたのだが。
インパクトが薄いとも言う。
「前に教えてくれたジャンボ海老フライのスペシャル版でもやってみる?」
「それは要望されたらやる裏メニューだな。既にジャンボ海老自体は入れてるし……。しかし加工系というアイデア自体は間違ってないとは思うんだ」
そうそう良いアイデアなど転がっている筈はない。
テンプラ化したジャンボ海老自体は既にメニューの中に入れているので、海老が安く大量に手に入る時でもなければサービスする程でもないだろう。 しかし一品で話題を盛って来れるような話はそうそう転がって居たりなどしない。
そこまで考えた段階で、健は美琴の友人である花屋の娘を思い出した。正確にはあの娘に教えた色々な料理法である。
「海老を増やして余らせた頭でフライ? 逆に小エビに何かまとわせて……。いや、余計な事はしないと決めた。ならむしろ……」
あの時は海老の加工法だけを追求した。
頭の体操を兼ねて様々な加工で幾つものレシピを教えたのだ。頭のフライ・普通のエビフライ・刺身・シャブシャブ・アヒージョ・ビスク・海老真薯。こういう感じで同じものを追求してナニカできないか? 今回は揚げ物なので考えるのはそのバリエーションだけで良い。
その時に考えたのは切り分けた部分を使いこなす事だが……。
「よし、串揚げにしよう」
「はっ? 何言ってんのよ! 400円じゃ何本も用意できないでしょ? 野菜ばっか用意する気?」
健は首を振りながら実際に食材を調理し始めた。
海老の頭を何本か切り取り、ガラを外して身もぶつ切りにする。そして奥の方からチーズや野菜に色々な肉を取り出した。共通しているのは試食用やお通しに使う、切り落としとか手屑と呼ばれる端っこの食材だ。
それらに串を刺し、サイズ調整して行く。
「ミニ串揚げの盛り合わせにする。フォンデュでも食べるつもりでな。なんだったらフルーツがあっても良い。もちろん油の使い回しは止めないと駄目だが」
「あー!? その手があったか!」
普通の串揚げは焼き鳥のように何ブロックもの肉を一串に刺している。
だがチーズフォンデユなどにする場合は、食べ易くディップを漬け易いように一切れだけだ。この方法で一口大の食材を揚げていき、原価に見合うように『適当』に盛り合わせれば良いのである。もちろん各人の好みは反映させるが、その日に余った食材を利用することも原価を調整することもできるだろう。
様々な食材を紹介できるし、腹具合に合わせて軽重も弄れるのが丁度良かった。
「あとはディップだな。ポテトフェアの時みたいに塩やソースを中心に幾らか用意するか」
という訳で揚げ物フェアに向けて動き出したのである。
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