流行らない居酒屋の話【完】

流水斎

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黒字への道

思わぬ落とし穴


 風が吹けば桶屋が儲かるという謎の言葉がある。

何が言いたいかというと、何か他の理由で美琴の狙いが当たってしまったのだ。もちろん一つ一つは、ちゃんとした原因の積み上げなのだろうが、結果的にちょい足し弁当の売り上げが上がってしまったのである。

対照的に健たちの元には幾つかの問題が巻き起こった。

「今月の集計が終わったら美琴の奴、ふんぞり返りそうだなあ。まあ失敗して大損よりマシなんだが」

 どうして売れ行きが良いのか首を傾げる健は難しい顔をしていた。

問題の一つは今回の成功で美琴の発言力が上がってしまい、力を借りるにしてもアルバイトとして使うにしても、待遇を良くしないと行けなくなったことである。

成果に何も報いないのはより問題を引き起こすので避けては通れない。

「そう言うなよ。美琴ちゃんの成功は美琴ちゃんの努力の結果さ。少しばかり力は貸したがね」

「それは判ってるさ。お前のデータあってのこととはいえ、あいつがどれだけ頑張ったかはな。あれほど売れるとは思わなかったし……使わずに残るとは思わなかっただけで」

 今年は寒くなり暖かい物が欲しくなるとか、不景気な業界が出る。

その情報を伝えた所、味噌汁以外にもスープを用意し、場所を選んでヤマを張ったのだ。単純にこれが当たったのもあるが、元から移動販売が無いエリアだったのも大きいだろう。需要を掘り起こして鉱脈を当てただけで、他の業者がやってくれば当然競争になって売り上げは急下降するだろう。買い手からすれば安くて美味しければどちらでも良いというのが心情であるのだから。

健の方としては、余った食材をどう消費するかが問題だろう。

「まさか米がこんなに余るとはなあ……」

「普通の飯屋なら何の問題もないんだけどな」

 ちょい足し弁当はライスがなく副総菜が少なくて200円である。

普通の弁当の比重が下がれば、米を使わなくなるのは当然の摂理と言えた。

ただ、一応は無いと困るので健の方で用意はしておいたのだ。

「いっそポン菓子のバーゲンセールでもするか?」

「無理だな。秋祭りのシーズンに入ったから稲荷系や明神系で大忙しだよ」

 何が問題かというとこの居酒屋ではライスはメインではない。

仕方なく夏祭りで使ったポン菓子製造機を借りようと思っても、収穫祭などで既に使用されており、安価で借りるのは難しいという。もちろんレンタルショップならば借りる事が可能なはずだが、米の処分に追加予算を使う事に成ってしまうのだ。

つまり、他の方法で『処分』しないといけない。

「ここは例外って事にしてよ、秋の幸フェア限定でメニューにライスを加えるってか?」

「混ぜてる屑米が無ければの話だな。最初は弁当のバランス調整用だったんだ。そいつを普通に出したんじゃ、詐欺くさい以前に美味くも何ともないぞ」

 農家を回って米を安く仕入れ、抱き合わせでクズ米も引き受けた。

それらをブレンドして味を調えた上で、値段を大きく下げた弁当に使うなら問題ないと思っていたのだが、まさか大量に余るとは思いもしなかったのであった。重要なのは『処分』といっても捨てるという意味で何とかしないといけない。農家と約束したのも『捨てると惜しいから、何かに転用する』ことを前提に非常に安く仕入れたというだけだ。そのまま捨てたらもったいないオバケが出る以前に、信義というモノが傷ついてしまう。

何らかの使用法を見つけるのは大前提だろう。

「んじゃ何か良いアイデアがあんのか?」

「むしろ消去法だな。ポン菓子ほどじゃないが、加工を前提に美味くなる料理を考えるしかない。炊き飯とかな」

 屑米と言っても美味しくないとか古い、あるいは砕け易い米の事だ。

簡単な方法としては炊き飯やリゾットなど味を付けたライスにして、課程を丁寧に調理していく事だろう。とはいえ秋の風物詩なので炊き飯がそれなりに注文されるにしても、全てを捌ききれるか微妙な所である。

何しろ弁当ならば大量に使うからということで、屑米を混ぜても問題ない比率で購入しているのだから。

「こうなったらもう全員にお通しで配っちまうとか? いや、ダメか。酒を飲む前に腹が太るよな」

「晩酌を考えれば一人一杯くらいなら問題ないとは思うが……。なんだか居酒屋っぽくないな。面白いからと好評なら構わないんだが」

 とはいえ突破口などそうそう思いつかないものだ。

炊き飯やリゾットをポップに加えて推すことにして、何らかの方法で処分しようと方法を探し続けるのであった。

という訳で妙な方向からのピンチは続く。
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