魔法剣の姫は、まもなく散る猛き花を愛しました。

sohko3

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史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!

考えたことがない

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「オレは、自分の生きた証をこの世に残したい。これまで目指してきた全てはそのためだ。一般的にゃあ、自分の血筋を子供に残すっていうのもその一環とされるんだろうが……オレにとっちゃあ、違うんだよな。オレのいない、知らない世界に、オレの血を含んだ全く見も知らない誰かが残ってるって……想像しても、なんだか……しっくりこねえんだよなぁ……」



「……レナちゃん、横槍を入れるようだけど、いいかな。俺も、人間として自分の体で生きられたのはシホと同じ、二十年だったから。気持ちが分かる気がして」

 傀儡竜であるシホが二十年で神罰を受けるのと同じように、イルヒラ様は二十年で「巨神竜の魂」となって人間として生まれた体を失う運命でした。エリシア様は巨神竜の体の中にイルヒラ様を受け入れて、現在のように、おふたりは「エリシア様の体を共通で使う」形を取っています。

「俺達みたいな体だと、自分が一日一日をどう使うかを考えるのに精いっぱいで……誰かを気遣ったりする余裕もないし。自分がいなくなった後のことを想像するだけで苦痛なんだと思うよ」


 だから……シホの言う、「生きた証を残したい」というのは、あくまで、自分が生きている間に成し遂げる何かのことであって。自分の失われた後の世に、自分の血や願いを誰かに継いでもらうことは考えられないのでしょうか。

 自分に近い境遇を経験したイルヒラ様の言葉を聞くうち、シホはだんだん視線を俯けていき、今は応接間の大きな卓の下の陰を見ていました。

「シホ……もしも、あなたの体に、人としての時間の限りがなかったとしたら。わたくしの気持ちを受け入れていただけたのですか……?」

「……どうだろうな。オレは、生まれてこの方、『そうではなかった自分』なんざ考えたことがねぇからなあ」

 はぁ~、と、どこか諦めたようで、気安くもある溜息を吐いて。シホは俯いていた体勢から身を起こして、立派な椅子の背もたれに体重を預けました。

「ひとつだけ、思うのはだな。レナは王族だし、オレよりも強え、経験も豊富な赤首剣闘士はいくらでもいる。オレよりも将来性のある男なんかいくらでも選べる立場だろうに、どうしてオレにこだわるんだろうなぁ……ってな」

「……こんな時まで、ふざけないでよッ!」

 わたくしは瞬間的に沸き上った怒りにまかせて立ち上がり、目の前の広々とした卓に両手のひらを叩きつけていました。わたくしの柔らかな肉よりも石造りの甲板の方が遥かに固く、手はぴりぴりと痺れを覚えます。


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