魔法剣の姫は、まもなく散る猛き花を愛しました。

sohko3

文字の大きさ
57 / 111
史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!

絶対に、負けない!

しおりを挟む
「このっ……離れなさい!」

 わたくしは渾身の力を込めて、ポーラを押し上げて、距離を開けました。意を決して、右目を開きますと、いつの間にか痛みに慣れていました。額の傷はずきずきと訴えかけてきますが、無視します。

「あなたのような外道にだけは、わたくしは絶対に負けない!」

「……はっ、そんなみっともねえ姿をさらしておいて、よくも強がりを言いやがる!」

 どんなに貶されても、試合の最中に心を挫けさせたりはしない。そう……相手がポーラのような人であるからこそ、このように煽って、利用する。

 わたくしは、思い出していました。予選会や、剣闘士になって一番最初の大会で、シホがこのように戦っていた姿を。今となっては彼は立派な剣闘士として堂々とした戦いぶりですが、わたくしと彼が出会った頃はこんな感じでしたよね。

 忌まわしい男に、大事な体に傷を入れられてしまった、心と体の痛み。今にもこみ上げてきそうな涙はそのせいではなくて、懐かしさゆえでした。

 出会った頃のあなたは、決して正道だけの人ではなかったはずなのに。それでもわたくしは、あの頃からすでに、あなたが好きだった。こんな時に、不思議ですけれど。わたくしは確信しました。

 あなたと出会って、戦士としてこの場に立つと決めたことに、何の後悔もないと。あなたに出会えて、わたくしは幸せだったと。


 ほんの僅かですが目尻に滲んできていた涙のありかは、どうやらポーラには気付かれなかったみたいです。彼もまた、この世の幸いの絶頂を感じているかのようないやらしい笑みを浮かべて、わたくしの魔法剣へハンティング・ソードを打ち込んできました。一、二、三度、受け止めてさしあげたところで。

「……トイトイ!?」

 ふっ、と、わたくしの手甲から伸びていた魔法剣トイトイの光輝く刃が、一瞬にして消えました。わたくしはすばやく後退し、ポーラから離れます。


 魔法剣は、所有者の集中が途切れると、刃を消滅させてしまう。すっかり没落したとはいえ、ポーラもかつて武勲を上げた家の末裔で、その仕組みを聞いたことがあるはずです。

 勝利を確信した顔で、ポーラはハンティング・ソードを打ち合いの体勢から持ち替えました。彼は貴族同士の嗜みとして、レイピアを用いたフェンシング競技の経験が豊富です。剣闘場ではハンティング・ソードを用いますが、ここぞという場面ではレイピアの動きの癖が出てしまうのを、わたくしは何度もこの目で見てきました。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

処理中です...