魔法剣の姫は、まもなく散る猛き花を愛しました。

sohko3

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グランティスの未来のために

19歳の誕生日

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 予選会に志願する際に提出された資料に記載されていたので、わたくしはシホの誕生日を初対面からすでに知っています。ですが、彼の体の事情を思うと、誕生日に「おめでとうございます」と伝えて良いものなのか。そんなわたくしの迷いが、彼がグランティスに来てから迎えた最初の誕生日の折に伝わってしまい。

「特殊な体に生まれてきたら、自分の生まれた日を人に祝ってもらえねえなんて、悲しいことだと思わねえか?」

「……そうですね。ごめんなさい、余計な配慮でした」

 わたくしが必要以上に気負わないように、という、むしろ彼から配慮させてしまってなおさら申し訳ないです。シホはいつも通り、何も気にしていないと言わんばかりの笑顔でそう言いました。内心ではどう感じていたのかまでは知りようがないですが……。


「シホ。十九歳の誕生日、おめでとう」

「ああ……ありがとうさん」

 そう言うやり取りがあったので、今回も昨年までと変わらず「おめでとう」を伝えたのですが。今年だけはやはり、今までと同じ心境というわけにはいかなかったみたいです。この次、二十回目の誕生日には「おめでとう」が言えない、重苦しい現実。

 必要最低限しか物を持たない暮らしをしているので贈り物はしないで欲しいと言われています。せめて美味しいものでもご馳走出来たらと思うのですが、それも結構だということ。


 シホは空虚な目で、満月を見上げて物思いに耽っていました。わたくしも、一方的に彼の横顔を見つめているのはどこか申し訳ない気がしたので、黙って同じように空へ目をやっています。街中と違って人工芝ではないので、まばらに草の生えた地面の上に並んで腰を下ろしています。ふたりの肩と肩の間にはまだ隙間があって、触れ合いそう、という距離感では全くありません。



 わたくしとシホが満月の夜に町の外で会っているのは、この場所には街頭がなく、月明かりを頼りにしなければならない。それ以外の意味など何もありませんでした。


 ですが……「満月の出ている夜には、ほとんど例外なく、ふたりでこのように過ごしていた」から。あのお方との遭遇に、シホひとりだけではなくわたくしも立ち会うことが出来たのは、誠に僥倖であったのではないかと思うのです。

 残酷すぎるお告げを、彼にひとりで抱え込ませずに済んだのは、そのおかげなのですから。


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