きっかけは亜弥の居眠りでした

宗介

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亜弥(あや)

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  “旅”という非日常の世界に飛び込んで日頃の憂さを振り払い、仕事のことは極力何も考えないようにして、缶ビールを片手に故郷へ向かう特急列車に揺られて窓外に移りゆく風景をひとり眺めていた。そこに途中駅から若いきれいな女が乗ってきて会釈をして俺の隣の座席に座った。その装いはショートボブの爽やかな髪に大人しめでネイビーカラーのシンプルなスーツを着ており、身につけているアクセサリーはイヤリングくらいのものだったにも関わらず、それだけで十分艶やかさを誇示していた。
 
 女はしばらく持ってきた雑誌を読んでいたのだが、そのうちに暖かな車内で列車の揺れに同期してコックリコックリと居眠りを始めてしまった。最初のうちはしっかり姿勢を保っていたものの、そのうち次第に身体が傾いてきて、そのサラサラヘアの頭を俺の肩に持たれさせてしまった。おまけに香水ではない若い女の匂いがほのかに鼻をくすぐるのだ。困ったことになったなと思ったのだが、きれいな女なので悪い気はしなかったからそのままにしておいた。別にこちらから痴漢行為をしているわけではないのだから堂々としていれば良い。これも旅の楽しさのひとつだ。そのうち列車がカーブで大きく揺れたはずみで女の膝の上から読みかけの雑誌がバサッと床に落ち、その音で女が目を開けると俺にもたれかかっていたのに気づいた。
「すみません。」
慌てて体を起こして頭を下げた。
「いいえ、大丈夫ですよ。気持ちよさそうに眠っていたので。」
とニッコリ笑いながら言うと、女は恥ずかしそうに頬を赤らめて雑誌を拾って膝の上におき、またそれを読み始めた。女との会話はそれっきりであっけなく終わってしまった。そして列車は何事もなかったかのようにひたすら走り続けて俺の故郷の街の駅に到着する車内アナウンスがあった。すると、その女も降りる支度をして軽く会釈して先に席を立って降りて出口に向かった。女の後から列車を降り、駅前に出ると女は俺の実家とは反対の方に向かって歩いていた。その後ろ姿を『きれいな女だったな、でももう二度と会うことはないんだろうな』と思いながら見送り、俺も実家に向かって歩き始めたのだった。


 大学卒業の時以来、8年ぶりの帰省だった。仕事に行き詰まり、疲れて、それをなんとか打開しようと活路を求めて気分転換のために休暇を取って、故郷の空気を吸いに旅立つことを思いついたのだ。旅に出ると言ってもひとり暮らしの気軽さで、数日分の着替えと洗面道具それに時刻表をバッグに入れるだけだった。

 翌日、前もって実家に宅配便で送っておいた土産物を持って親戚にあいさつ回りをした後、俺が久しぶりに帰省したと言うので、夜になって従兄弟とその家族たちが10人ほど集まって懇親会を催してくれた。すると思いがけないことに、そのメンバーの中に前日の若い女の姿があったのだ。偶然さに驚いてその女の横顔を見つめていると目が合った。
「昨日の…。」
「昨日は失礼しました」
女は頬をぽっと赤らめて言った。
「あら、宗ちゃんずいぶん他人行儀だね。うちの長女の亜弥あやだよ。」
側から従兄の嫁珠衣たまえが言った。前日俺の隣の席にいた若い女つまり亜弥は俺の従姪いとこめいだったのだ。
「え~~亜弥ちゃんだったの?きれいになったから全然わからなかったなぁ。」
「長いこと会ってないからね。」
「10年じゃきかないな。それでいくつになったの?」
「19才だよ。去年大学に入って、春休みで昨日帰ってきたのよ。」
「それで同じ電車に乗っていた訳か。」
「あら、同じ電車で帰ってきたの?」
「うん、そこで面白いことがあったんだよ。」
「いや、言わないで!」
亜弥が慌てて遮った。
「あはははっ。」
「なんだい、内緒の話かい?」
「そういうことにしておこうか。」
「…」
珠衣との話の中で、亜弥は俺の住んでる市からそれほど遠くない街でアパートを借りて大学に通っていることがわかった。亜弥はその間ずっと珠衣の横に黙って座って、俺たちの話に耳を傾けていた。
「亜弥ちゃんのアパートの場所なら近くだからそのうち遊びにおいでよ。」
「はい。」
亜弥には名刺を渡しておいた。


 短い5日間の帰省休暇が終わり、ふるさとの空気を吸ってそれなりに気分転換して仕事に戻るとすぐに新年度が始まって、仕事が忙しくなった。新人たちが入ってくると仕事を教えながら俺の仕事をこなさなければならないので、余計手間がかかる。それで残業が続いていたので、アパートに帰っても炊事などする気力もなく、もっぱら弁当や惣菜を買ってきての食事が続いていた。

 夏が近づいたある日、思いがけなく亜弥から電話がかかってきた。
「もしもし亜弥です。覚えてますか?」
「あぁ、亜弥ちゃん。元気に大学に通ってるかい?」
「はい、この夏休みに宗一おじさんのところでアルバイトをしようと思ってるんですけどいいですか?」
「うちの会社でアルバイト? 募集してたのかな。」
「ええ、大学に学生アルバイトの求人がきてました。」
「ああそうなんだ。うん、大・大・大歓迎するよ。」
「あぁ良かった。」
「そういうことなら人事の担当者にどんな仕事かちょっと聞いてみるね。なにか耳寄り情報があったら連絡してあげるよ。」
「ありがとうございます。」
その後は近況を尋ねて通話を終えた。

 翌日、人事部門の担当者のところに行き、アルバイトの仕事の内容や採用条件を聞いてきた。社員の縁故者を優先するということだったので、亜弥のことを採用するようプッシュしておいて、その日のうちに亜弥に電話した。
「もしもし亜弥ちゃん?」
「すみません、何か情報がありましたか?」
「うん、募集しているのは市場調査のデータ整理の仕事なんだそうだ。」
「はい、やります!」
「それじゃ自分で採用担当者にアルバイト希望ってことで電話して、採用条件を聞いてみなさい。それで亜弥ちゃんの希望と合うのなら来るといいよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
 その翌日の夕方には人事部門の採用担当者が俺の職場にやって来て、亜弥からアルバイト志望の電話があったと言った。その担当者は一応面接をするが、問題ないだろうと言っていた。
 
 数日経って、その日も仕事でてんてこ舞いしているところに、人事の担当者が亜弥を連れてやって来た。
「ここが中川くんの職場だよ。」
「宗一おじさん、こんにちは。」
「ああ、決まったの?良かったね。」
「ここはずいぶん忙しそうだね。」
「今日はどういう訳か仕事が立て込んじゃっててこの有様です。」
「それじゃ、あまり邪魔しちゃいけないね。」
早々に亜弥を連れて出ていったのだが、こんな忙しい中でも周囲の男性社員たちはしっかりと亜弥を観察していた。
「中川くん、今来てたきれいな女の子誰だ?」
「中川さん、隅に置けないですね。」
「中川さん、顔がニヤついてるけど。」
「そんなことどうでもいいから、さっさと仕事片付けようぜ。」
冷やかされても悪い気はしない。確かに言われた通り、自分でもちょっと頬が緩んでいた気がする。これからしばらく楽しみだ。


 大学が夏休みに入って亜弥がバイトに通ってくるようになると、男性社員たちから注目されコンパに誘おうとアタックするものも現れたが、昼食の際はできるだけ俺が亜弥と同席してガードを固めて牽制していたら次第にそれも少なくなっていった。

 2ヶ月近く通って9月に入ると夏休みのアルバイトが終わり、亜弥が会社に来なくなると穴がぽっかり開いたように寂しくなった。俺にとっては亜弥のガードの必要がなくなったので気が楽になったのだが、やっぱり寂しい。今になって思えば、もうちょっと話をして親密になっておけば良かったのに、田舎育ちのうぶな娘に男たちが言い寄ってあまり刺激が強すぎてもいけないと、周囲の男たちから亜弥をガードするのがメインになっていたのだ。
 亜弥はおっとりして口数の少ない娘だった。そのうち何か用があればまた連絡してくるだろう。と思っていたら、思いがけなくそれから2週間もしないうちに亜弥から電話がかかってきたのだ。
「こんにちは、亜弥です。」
「あぁ亜弥ちゃん、こんにちは。」
「バイト中はお世話になりました。」
「いやいやお世話だなんて。」
「今度の日曜日に宗一おじさんとこに行ってもいいですか。」
「うん、いいよ。」
「じゃ、お弁当を作って持っていこうと思うんですけど。」
「亜弥ちゃんの弁当か、うれしいな。」
「大したものはできないですけど。」
「いやいや、楽しみだな。」
それから大急ぎでしばらく手を付けてなかった部屋の片付けと掃除を始めたのは言うまでもない。

 亜弥が来る日、最寄りの駅まで迎えに行った。
「宗一おじさん、こんにちは。」
「よく来たね。ここはすぐにわかった?」
「はい、詳しく教えてもらったので迷わず来ることができました。」
2人並んで10分ほど歩き、アパートに戻ってきた。
「さあ上がって。」
「はい、おじゃまします。」
「コーヒーでも淹れるからそこに座って。」
リビングのソファを指した。
「はい、それでお弁当作ってきました。」
「こんなに沢山?」
「はい、会社で以前『忙しい時は炊事するのが大変だ』って言ってたので、料理は下手ですけど作ってみました。こっちはお昼に一緒に食べる分で、そっちは冷凍しておいて食べるときに暖めて下さい。」
「それはありがたい。楽しみだなぁ。でも移し替えるのに容器がないんだよ。」
「いえ、構いません。また持ってきた時に空のを持って帰ります。」
「そんなに何回も気を使わなくっても良いんだけど。」
「いえ、作りたいんです。それとも他に作ってくれる人がいて迷惑ですか?」
「迷惑だなんてとんでもない。他に作ってくれる人なんていないから、うれしいよ。」
「じゃぁ作ります。私も勉強になるし。」
「それならありがたく戴くことにしよう。」
「私もうれしいです。」
それからしばらくとりとめない話をして、その間に亜弥が作った弁当を食べて寛いで世間話をしていたら夕方近くなった。
「それじゃそろそろ帰ります。」
「そうだね、暗くなる前に戻らないとね。駅まで送っていこう。」
「はい、すみません。」
 亜弥を駅で見送った後、ブラブラと歩いてアパートに戻ってきた。亜弥のおかげでこの日1日華やかなウキウキした気分で過ごすことができた。本当にまた来てくれるんだろうか。しかし亜弥はまだ学生なんだし、食材を買う費用や交通費の面倒を見てやらないといけないだろうな。色々なことを考え想像しているとそれも楽しい時間だった。
 

 その後亜弥は月1回のペースでやって来て、12月になった。
「そろそろ冬休みだね。今度の休みは帰省するの?」
「ええ、夏は帰らなかったから、お正月くらいは帰って来るように言われちゃいました。」
「そうだね、珠衣さんたちも久しぶりに亜弥ちゃんと会いたいだろう。」
「ええ、でも帰っても何もすることないし、こっちのほうが自由で刺激もあって良いんです。」
「まあそうだろうけど、でも田舎のお正月の風習をしっかり覚えておくのも良いと思うよ。」
「やだ、宗一おじさんこそ。」
「あはは、滅多に帰省しない俺がそんなこと言えたがらじゃないか。一本取られたなぁ。でも亜弥ちゃんと一緒なら帰省しても良いかもね。」
「えっ、じゃあ一緒に帰省しましょうよ。」
「う~ん、そうしたいのはやまやまなんだけど、年内に片付けないといけない仕事がまだ山積みになってるから無理だろうな。」
「え~なんだ、喜んで損しちゃった。行きと帰りはずっと2人でいられると思ったのに。」
「いやいや、俺達は学生さんみたいに長い休みはとれないよ。」
「それもそうですね。」
「ゆっくり田舎の空気を吸ってリフレッシュしておいでよ。」
「はい…、。」
最後は聞き取れないくらい小さな声でつぶやいた。
この日も夕方までいて名残惜しそうに帰っていった。

 山のような仕事はがむしゃらに働いたおかげで無事年末までに片付き、何事もなく年が明けた。正月をひとりでのんびり過ごしたのは例年とあまり変わらなかったのだが、正月休みが終わる前に早くも亜弥がやって来たのが波乱の始まりだった。
“ピンポーン”
「は~い。」
「こんにちは。」
「亜弥ちゃん!?まだ冬休みが終わらないのにこんなに早く戻ってきたの?」
言い終わらないうちに亜弥が抱きついてきていきなり唇を重ねた。
「会いたかったぁ。」
俺の首に腕を回して抱きついたまま頬と頬をくっつけて感に堪えない風に言った。
「俺もだよ。」
「遠く離れてて会えないと思うと余計会いたくなって、いても立ってもいられなくなったから、だからレポートが残ってるからって言って出てきたんです。」
「そうか、うれしいな。とりあえず上がって。」
「はい。」
コーヒーを淹れて、リビングのソファに隣り合って座った。
「郷里の正月はどうだった?」
「何もすることがなくてつまんなかった。」
「でも珠衣さんたちは喜んでたろう?」
「ええ、夏休みはどうして帰って来なかったんだって。」
「かわいい亜弥ちゃんをちょっとでも手元においておきたいんだよ。」
「でも…。」
「今日は荷物を持って来てるってことはまだ亜弥ちゃんのアパートには帰ってないの?」
「ええ、宗一おじさんに会いたくて、まっすぐにここに来ちゃいました。」
「嬉しいこと言ってくれるなぁ。でもひとつお願いがあるんだけど、その“おじさん”はそろそろやめてくれないかなぁ。おじさんって言うほど年は離れていないんだから。」
「すみません。じゃあなんて呼べばいいですか?」
「うん、とりあえず“宗一さん”でも“宗さん”でも“宗ちゃん”でもいいし。」
「じゃあ“宗さん”にします。」
「それから丁寧な言葉も辞めようよ。」
「はい。」
「それでね、前からずっと思ってたんだけど、いつも弁当を作ってきてくれるお礼に亜弥ちゃんを何処か遊びに連れて行きたいなってね。」
「ほんとに?どこでも?」
「うん、どこでも亜弥ちゃんの行きたいところにね。」
「う~ん、大好きな宗さんと一緒に行きたいところはたくさんあるわ。」
「そんなにたくさんあるんだ。だったら1番から順番に、かな。」
「そうねぇ、1番行きたいのはテーマパーク。」
「うん、お安い御用だ。」
「2番目はスキー。」
「うん、大丈夫。車を借りよう。」
「3番目は、う~んサマーリゾート。」
「良いねぇ。でも日帰りは難しいよ。」
「ええ、わかってる。でも行ってみたいの。」
「これは要検討だな。」
「じゃあ、サマーリゾートが1番!」
「えぇ~弱ったなぁ。」
「是非、宗さんと一緒に行きたい。」
「でも泊りがけならお母さんの許可を貰わなくっちゃ。」
「いや!私もう大人なんだからそんなもの関係ないわ。何でも自由にできるのよ。」
「そんなこと言ってもなぁ。」
「ふん、宗さんのウソつき。私の行きたい所にどこでも連れて行ってくれるって言ったのに!」
可愛く口をとがらせて拗ねてみせる。
「分かった分かった、亜弥ちゃんから嫌われるのは困るから連れて行くよ。」
「ほんとに?」
「うん、男に二言はない。」
「うれしいっ!」
言い終わらないうちに俺に抱きついてきてソファに横倒しになった俺の上に乗り、また唇を重ねた。俺は下からしっかり亜弥を抱きしめていた。
「宗さんに会えなくて、ほんとに寂しくて耐えられなかった。もう離れたくない。」
「俺も亜弥ちゃんがいないと思うとひとりで寂しかったよ。」
「ほんとにそう思ってるの?」
「ほんとだよ。」
「じゃあ、抱いて。私を宗さんだけのものにして。」
喘ぎながら言った。
「さっきから抱きしめてるよ。」
わざとからかって言うと
「もうっ!そうじゃなくて…、そのぅ、私の初めての男の人になってって言ってるの。」
恥ずかしそうに言って、俺の首の付け根に激しく吸い付いた。
「ふふっ、可愛いね。たまらないな。」
「知らないっ。せっかく宗さんに見てもらおうと思って可愛い下着買ってきたのに。」
「ほんとに?早く見せてよ。」
「いやっ、もう見せてあげない!」
「じゃ何もしないでこのままにしてる?」
「いやっ、嫌いっ!」
「ふふっ、拗ねた顔はもっと可愛いよ。」
「そんなに意地悪言うのなら帰るっ!」
亜弥は起き上がろうとしたが、俺はしっかり亜弥を抱きしめて離さない。ついでに足を亜弥の足に絡めて身動きできなくした。
「離してっ!」
「イヤだ、離さない。」
俺は唇で亜弥の唇を塞いだ。亜弥は少しの間もがいていたのだが、すぐにおとなしくなった。
「可愛いよ。」
亜弥はしばらく頬を俺の胸に押し付けていた。
「ベッドに行こうか。」
ささやくと亜弥はかすかに頷いたので抱きしめていた腕の力を緩めると、亜弥はゆっくりと起き上がった。俺も起き上がり、亜弥を“お姫様抱っこ”して寝室に入っていった。亜弥をゆっくりベッドの上に下ろすと、亜弥は恥ずかしそうに両手で顔を隠した。俺は亜弥の着ていたブラウスとスカートをゆっくり脱がしてブラとショーツだけにした。
「先にシャワー浴びさせて。途中、列車の中が暑かったからちょっと汗をかいたの。」
「うん、それじゃ一緒に浴びようか。」
「ぃやだ、恥ずかしい。」
「じゃあ先にシャワー浴びておいで。」
新しいバスタオルを出して渡すと亜弥は浴室に入った。しかしそのままおとなしく待っているつもりはない。亜弥が出てくる前に俺も裸になってそっと浴室に入っていった。
「いやっ、恥ずかしいっ。」
気付いた亜弥が身をかがめて言ったが、後ろから亜弥の胸に腕を回して両方の膨らみを掌でそっと包むと、亜弥はのけぞって頭を俺の肩に持たせてもたれかかった。そして大きくあえいでいた。
「はああっ」
「かわいいよ。」
「いじわる。」
「きれいだ、食べちゃいたいくらいかわいいよ。」
「はあぅっ。」
左手を下にずらして亜弥の下腹部の茂みを掻き分け、陰部の2枚の花びらの中に潜むクリトリスを探り当てて指で軽くつまんだ。
「ぐうっ。」
声にならない声を漏らして膝がガクッと崩れそうになったので、慌てて亜弥の体を支えた。
「もうやめて、耐えられない。」
喘ぎながら言った。
「じゃあ身体を拭いてあげよう。」
お湯を止めて亜弥をバスタオルでくるんで拭いてやると、亜弥は壁につかまりながらふらふらと浴室から出ていった。俺も手短にシャワーを浴びて裸のまま浴室から出ていくと、亜弥は淡いイエローグリーン色をしてひもで結ばれた小さなブラとショーツを付けてベッドに横たわっていた。
「う~ん、素敵だね。とってもセクシーなのに可愛いよ。亜弥ちゃんにピッタリだ。」
「恥ずかしかったけど、宗さんが喜んでくれるかなと思って買ってきたのよ。」
「ありがとう、すてきだよ。」
それまで上を向いて目をつぶっていた亜弥が目を開き俺の方を向いてオレ自身ペニスが視野に入った途端自分の顔を両手で覆って叫んだ。
「いやっ、見せないでっ!」
しかし言葉とは裏腹に、指の隙間からすでに怒張して上を向いて猛々しくそそり立っているオレ自身ペニスを凝視している。
「ああ、これは失礼。でも亜弥ちゃんがこんなにしたんだよ。」
わざとペニスを亜弥の顔の前まで近づけて言った。
「いやっ、そんな大きいの怖い。やめて!」
「亜弥ちゃんが可愛いからこんなになったんだ。」
「いや、それでも怖い!」
亜弥は相変わらず顔を覆った指の隙間から俺の顔とペニスを交互に見ている。
「大丈夫だよ、オレは普通サイズなんだから。」
「ほんとに?これで普通なの?」
「うん、触ってご覧。」
亜弥の顔を覆っている片手をとると素直に手を伸ばし、オレ自身は亜弥の掌に包まれた。
「いやだ、すっごく大きい!やっぱり無理!できない!」
と言いながらもペニスから手を離さないでいる。
「大丈夫だよ、十分に潤ってから入っていくから。」
と言いながらも亜弥が触っているおかげで更に膨らみをまして、ピクンピクンと脈打っている。
「でも~。」
「大丈夫だよ。女の人は皆最初はそう思うんだけど、大したことないみたいだよ。」
「ほんとに?」
「でも、亜弥ちゃんができないって思うのなら、無理にしなくてもいいんだよ。どうしても今日したいってことじゃないんだから。亜弥ちゃん次第だよ。」
「でもこんなに大きくなって、宗さんはもう準備できてるんでしょう?途中でやめたらかわいそう。」
「俺のことは構わないさ。」
「そしたら他の女の人にこれペニスを使うんでしょう?」
「はははっ、大丈夫だよ。これからは亜弥ちゃんだけにしか使わないようにするから。亜弥ちゃんが良いって言うまで待ってる。」
「優しいのね、やっぱり…欲しい。」
亜弥は手にしているオレ自身ペニスを自分の方に引き寄せた。俺は亜弥の上に屈んで亜弥の唇にそっと接吻した。そして亜弥をまたいで両膝をつき、ブラのひもをほどいた。それから両手で亜弥の乳房を柔らかく包むと亜弥は目をつぶったまま大きく息を吐いて身悶えした。
「はぁ~っ。」
完熟間近の乳房は柔らかみを持ちながらしっかり盛り上がっており、その頂上は固く、唇で挟むとコリコリと弾力があった。掌を亜弥の腹部を這わせて下に進めると小さなショーツに覆われた草むらがありその下には薄い生地を通してクリトリスが固く尖っていたのを感じた。ショーツの上からその部分を指で軽く押さえると亜弥は「アッッ」と言って全身をピクンと痙攣させた。そしてショーツもゆっくりひもをほどくと亜弥の肌を隠すものは何もなくなった。亜弥は今気づいたかのように慌てて右手で胸の膨らみを、左手で下腹部の薄い茂みをカバーした。俺は亜弥の右手を持ち上げて身体の横に置き、2つの膨らみの先端の乳首を順番に唇でくわえ、亜弥の左手もずらして茂みをオープンにしてその中心の小さな突起クリトリスも唇で挟んだ。亜弥はその度にピクン・ピクンと体を震わせていた。とても敏感に反応する。そうしながら俺は亜弥の両脚を割ってその間に入り、指で亜弥の2枚の花びらの間の潤いを確認してゴムをかぶせたオレの先端をあてがい、ぐっと力を入れて進んだ。
亜弥は
「く~~っ。」
と声を漏らして逃げようと身体を頭の方にずらす。しかし俺は亜弥の身体をしっかり抱き抱えて逃さない。もう一度身体を押しつけるとゆっくりとオレペニスは亜弥に入っていった。
「アァッッ。」
亜弥が叫んだ。俺はしばらくその体勢を保持していた。亜弥はしばらく顔をしかめて手を動かしていたのだが、次第に穏やかになってきた。俺は亜弥の様子を確かめながらゆっくり動き始めた。


 俺は亜弥に寄り添って横になり、先程までのセレモニーを思い返しながら、亜弥の白く滑らかな素肌を愛撫していた。
「気分はどう?」
「ふぅ~ん、いい気分。勇気を出して抱いてもらってよかったわ。」
亜弥はうっとりした顔で囁くように言った。
「大丈夫だったろう?亜弥ちゃんも敏感によく反応してたよ。」
「イヤだ、恥ずかしい。」
「敏感なのは良いことなんだよ。他の男の人に抱かれても褒めてくれるよ。」
「宗さん以外の人は嫌!そんな事言わないで。」
「ごめんごめん、そうだね。俺も亜弥ちゃんが他の男に抱かれてる場面なんて想像したくないよ。」
「私はずっと宗さんだけなんだから。でも宗さんは私を抱いて他の女の人も抱くの?」
「ううん、これからは俺も亜弥ちゃんだけだよ。」
「ずっと?」
「うん、ずっとだよ。」
「信じていいの?」
「うん、約束する。」
「絶対よ。」
 それから後は週末にデートをして、その後で亜弥のアパートに泊まりに行くのが慣例になった。週が明けて亜弥と離れ離れになるとすぐに亜弥が恋しくなり、週末になるのが以前に増して待ち遠しくなった。
 

 亜弥とは通常のデートの他に希望通りスキーやテーマパーク等にも行って同じ時を過ごしているうちに春休みになった。しかしこの休みは亜弥は適当に口実を作って帰省せずに、その間2人はそれぞれのアパートを行ったり来たりして過ごしていたのだ。
 春休みも終りが近づいたある休日、亜弥のアパートで遅い朝食をとっていると“ピンポーン”チャイムが鳴った。
「こんな時間に誰かしら。」
「は~い」亜弥が出てみると「えっ?お母さん!!どうしたの?」
「昨日こっちで。忘れたのかい?」
珠衣はしゃべりながら靴を脱いでさっさと上がり込んだ。
「ちょっとちょっと、お母さん待って!」
何だって、お母さん?珠衣さんか?こんなところを見られたらまずい。でも隠れるわけにもいかないし、朝食が2人分用意してあるんだ。なんて考えてる間に珠衣はもう部屋の中に入ってきた。
「あら、宗ちゃん、来てたの?今頃朝ごはんなの?え?その格好は。私まずいところにやって来たのかしら。いやだ、ごめんね。」
俺はまだパジャマ姿だったのだ。
「いや、その…。」
「あなた達いつからなの?」
「あのぅ、え~と…。」
「うん、やっぱり私の勘は当たってたんだ。去年の夏休みは帰省しなかったし、冬休みも正月過ぎたらさっさと行っちゃうし、この春休みも帰ってこないって言うじゃない、だから多分誰かいい人ができたんだろうなぁって思ってたんだ。だから同窓会のついでに確かめようと思って来たのよ。でも相手が宗ちゃんだとは思いもよらなかったな。」
「はい、すみません。」
「ううん、謝ることはないのよ。ちょうどよかった。あなたのお母さんとも前に話ししてたんだけどね。宗ちゃんがいつまでも結婚しないから亜弥をくっつけたらどうだろうって。そしたら全く知らない人と嫁姑の関係にならなくって済むし、私だって赤の他人に亜弥をさらわれていくのは嫌だったから、宗ちゃんだったら問題ないわねって。うん、そういうことだから手間が省けてよかったわ。よしよし。」
なんだって?話が勝手にどんどん進んでいく。
「そういうことなら早いほうが良いわ。結婚式の段取りをしなくっちゃね。亜弥の卒業前の挙式でも良いのよ。さっさと決めちゃおう。」
「ちょ・ちょっと待って。俺達まだそんなことまで話ししてないんだ。」
突然の話の展開についていけない。
「あら、亜弥と結婚するのは嫌なの?遊びで付き合ってただけなの?」
「とんでもない、嫌だなんて。」
「じゃあ、良いじゃない。亜弥はどうなの?」
「う・うん、私は宗さんとずっと一緒が良い。」
「亜弥ちゃん~。」
「よしっ、これで決まりね。めでたしめでたしだわ。」
珠衣さんの勢いに圧倒されて何も言えず、食事が済んだところで早々に退散した。珠衣さんはその日は亜弥のところに泊まって、翌日帰っていったそうだ。そしてその日のうちに母親から電話がかかってきた。
「あんたもやることはやってたんだね。良かった、亜弥ちゃんなら私も安心できるわ。亜弥ちゃんの今度の夏休みにでも挙式の段取りにしておこうかね。あんたも盆休みをとって帰ってくればいいだろう?」
なんてことだ。いつの間にか俺たちのいないところで勝手にどんどん話が進んでしまっている。まあ母親同士がツーカーだから仕方ないか。

 でもひとつ引っかかることがあるんだが、あの時珠衣さんは同窓会があるってことを亜弥に言ったって言ってたな。亜弥はそれを忘れてたのか、それとも珠衣さんが来ることがわかってて俺を泊めたのか?あの利口な亜弥が忘れることはないと思うんだけどなぁ。
 でもうれしいよ、亜弥。かわいい亜弥、これからもずっと一緒だよ。


   おわり



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