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26 隣国の王子様
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「ずっとこうしていたいが、姉上の仕事を手伝ってこなければ……」
オースティン……オーサがそう言って俺を膝から降ろしてくれた。最後に俺の頬をするりと撫でていき、名残惜しそうに部屋を出る。
「俺、どうしたらいいの……?」
顔の熱さが収まらない。今までにないオーサの態度と言葉に俺はずっと何も出来ずにされるがままだった。
「ヒカル様、失礼いたします」
オーサが部屋を出たからか、双子とランドルが俺の部屋へと入って来た。そして俺の真っ赤になったままの顔を見ると、慌てて駆け寄ってくる。
「ヒカル様!? もしや熱があるのですか!?」
慌ててレイフが俺の額に手を当てると熱くなっていたのだろう。「大変っ!」と慌てだしたので、何でもないと止めることになった。
「何でもないなんてそんなわけ……」
「ヒカル様、もしかしてオースティン様に何かされた?」
「えっ!? 何かって何を!?」
「「「え……」」」
双子とランドルは俺のテンパった様子を見て何か気が付いたのか。それぞれ顔を見合わせて頷きを1つ。
「そういうことでしたか。であれば大丈夫ですね!」
「え!? そういう事ってどういう事!?」
「ふふ。大丈夫ですよ。私たちは分かっていますから」
「だから何が!?」
そんな俺の様子を見て楽しそうに笑う3人。絶対何か勘違いしている気がするっ!
いたたまれなくなった俺は、恥ずかしさをごまかすために「疲れたから寝る!」と言って寝室へと逃げ込んだ。そのままベッドに横になりごろごろと転げ回ったが、そのまま本当に寝てしまい起こされたのは昼頃だった。
その後も生温かな視線を感じたものの、敢えて触れることはせずに2日が経った。
昼食を取った後、そのまま部屋でランドルが用意してくれた魔法の本を読んでいると、オーサが部屋へとやって来た。
「ヒカル様、今、隣国サザライト王国の第4王子がこの屋敷を訪ねて来た。それでヒカル様に会いたいと言っているがどうする?」
「え……? 隣国の、王子様……?」
王族と言われてびくりと体が竦んだ。この国の王族を筆頭にいい思い出がない。隣国なんてもっと未知数だ。
サザラテラ王国とサザライト王国は国名が似ている。その理由はサザライト王国はこの世界で2番目に興された国で、『神獣人の子孫が興した国』という同じルーツを持つことから兄弟国として親密な関係を築いていたからだ。
今はもう、その関係もなくなったそうだけど……。
だけどこの国と親密な関係だった隣国の王族ならもしかしたら――。
そう思って、浮かない顔をした俺に気が付いたオーサは柔らかな声で話してくれた。
「ヒカル様が会いたくないなら会わなくていい。強要するつもりは一切ないから安心して欲しい。ただ、弁明するわけではないがサザライト王国の王族の人柄は保証する。それと事情もあり、出来れば会って欲しいとは思っている」
なんでもオーサが学生の頃、隣国の第4王子が留学生として同じ学院に通っていたらしい。そしてオーサとは親友とも呼べる間柄なんだとか。
隣国の王族はユニコーンの神獣人が先祖にあたる。そしてこの公爵家同様、神子や神獣人に対し敬意を払う人達なんだそうだ。だから自国の人達ですら避ける先祖返りのオーサともすぐに仲良くなったらしい。
「そっか。そんな人なら会ってもいいけど……俺の顔に火傷の跡があるから隠しても大丈夫、ですか?」
「それは構わない。ヒカル様の好きにして貰って大丈夫だ」
という事で、火傷の跡がある右側だけを隠す仮面を付けて隣国の第4王子と会う事になった。
部屋を出て応接室へと向かう。前にオーサとランドル。横にはレイフ、後ろはローリーといういつもの布陣だ。
とある扉の前へ来るとランドルがノックし、俺の到着を告げる。中からブレアナさんの声が聞こえ、ランドルが扉を開けた。
中へ入ると広々とした部屋の中央にソファーがいくつか置いてあり、そこにブレアナさんとブレアナさんの執事であるジャックさん、そして初めて見る男の人が2人いた。
俺の姿を目に留めると全員立ち上がり、片膝を付き頭を下げた。
「神子様、お初にお目にかかります。サザライト王国第4王子、ルーファス・サザライトと申します。本日は私の願いをお聞き届けいただき感謝申し上げます」
「あ、えっと……今井光です。10代目神子として召喚された、と思います」
全員が片膝を付き挨拶されるなんて初めての経験で、びっくりしてしまってちょっと自分でもおかしなことを言った自覚はある。
これが本当の神子への対応なのか……。
「えっと頭を上げてください……?」
どうしていいかわからないから、とりあえずこう言ってみた。疑問形なのはご愛敬だ。一般庶民にそういったことを求めないで欲しい。
だがそれで合っていたようで全員が頭を上げてくれた。そのまま座るよう促すと「ありがとうございます」と一言の後、ソファーへと腰掛けた。
俺もレイフに案内されたソファーへと腰掛ける。俺は1人用の一番立派なソファーだった。恐らく、普段ならブレアナさんが座るであろう席だ。
「今回サザラテラ王国へ訪問したのは神子召喚の事で確認したいことがあったからです」
目の前にお茶が用意されたのを確認したルーファスさんは、今回の訪問理由を説明してくれた。
以前から、召喚陣に魔力が満ち次第すぐに神子召喚の儀を行うと言っていたのに、神子が召喚された報告が全くなかった。
ルーファスさん側も大体この辺りで召喚するだろう日にちは分かっていたため、何度かサザラテラ王国へ問い合わせを行った。が、それに対する返答はなく、全く情報が得られない日々が続いた。
神子が召喚されているのなら、もうそろそろ派遣についての確認や褒賞のことも連絡が来るはずなのにそれもない。
神子が旅に出る前に必ず褒賞の件で契約を結んでいる。それもこの国、サザラテラ王国に有利過ぎるバカバカしい内容の。その内容も事前に確認したいのにそれも出来ない状況が続いた。
そして魔物による被害も拡大しているのもあって、直接確認しようとこの国を訪れたそうだ。
サザラテラ王国の国王との面会は出来たものの、信じられないことを聞かされた。
「神子は召喚したが、アレは神子というより化け物だ。一応神子としての力はあることを確認しているが、化け物は未だに力を扱えない。旅に出ないのは我々のせいではなく、いつまで経っても力を扱う事の出来ない化け物神子のせいだ」
そう言われたらしい。
オースティン……オーサがそう言って俺を膝から降ろしてくれた。最後に俺の頬をするりと撫でていき、名残惜しそうに部屋を出る。
「俺、どうしたらいいの……?」
顔の熱さが収まらない。今までにないオーサの態度と言葉に俺はずっと何も出来ずにされるがままだった。
「ヒカル様、失礼いたします」
オーサが部屋を出たからか、双子とランドルが俺の部屋へと入って来た。そして俺の真っ赤になったままの顔を見ると、慌てて駆け寄ってくる。
「ヒカル様!? もしや熱があるのですか!?」
慌ててレイフが俺の額に手を当てると熱くなっていたのだろう。「大変っ!」と慌てだしたので、何でもないと止めることになった。
「何でもないなんてそんなわけ……」
「ヒカル様、もしかしてオースティン様に何かされた?」
「えっ!? 何かって何を!?」
「「「え……」」」
双子とランドルは俺のテンパった様子を見て何か気が付いたのか。それぞれ顔を見合わせて頷きを1つ。
「そういうことでしたか。であれば大丈夫ですね!」
「え!? そういう事ってどういう事!?」
「ふふ。大丈夫ですよ。私たちは分かっていますから」
「だから何が!?」
そんな俺の様子を見て楽しそうに笑う3人。絶対何か勘違いしている気がするっ!
いたたまれなくなった俺は、恥ずかしさをごまかすために「疲れたから寝る!」と言って寝室へと逃げ込んだ。そのままベッドに横になりごろごろと転げ回ったが、そのまま本当に寝てしまい起こされたのは昼頃だった。
その後も生温かな視線を感じたものの、敢えて触れることはせずに2日が経った。
昼食を取った後、そのまま部屋でランドルが用意してくれた魔法の本を読んでいると、オーサが部屋へとやって来た。
「ヒカル様、今、隣国サザライト王国の第4王子がこの屋敷を訪ねて来た。それでヒカル様に会いたいと言っているがどうする?」
「え……? 隣国の、王子様……?」
王族と言われてびくりと体が竦んだ。この国の王族を筆頭にいい思い出がない。隣国なんてもっと未知数だ。
サザラテラ王国とサザライト王国は国名が似ている。その理由はサザライト王国はこの世界で2番目に興された国で、『神獣人の子孫が興した国』という同じルーツを持つことから兄弟国として親密な関係を築いていたからだ。
今はもう、その関係もなくなったそうだけど……。
だけどこの国と親密な関係だった隣国の王族ならもしかしたら――。
そう思って、浮かない顔をした俺に気が付いたオーサは柔らかな声で話してくれた。
「ヒカル様が会いたくないなら会わなくていい。強要するつもりは一切ないから安心して欲しい。ただ、弁明するわけではないがサザライト王国の王族の人柄は保証する。それと事情もあり、出来れば会って欲しいとは思っている」
なんでもオーサが学生の頃、隣国の第4王子が留学生として同じ学院に通っていたらしい。そしてオーサとは親友とも呼べる間柄なんだとか。
隣国の王族はユニコーンの神獣人が先祖にあたる。そしてこの公爵家同様、神子や神獣人に対し敬意を払う人達なんだそうだ。だから自国の人達ですら避ける先祖返りのオーサともすぐに仲良くなったらしい。
「そっか。そんな人なら会ってもいいけど……俺の顔に火傷の跡があるから隠しても大丈夫、ですか?」
「それは構わない。ヒカル様の好きにして貰って大丈夫だ」
という事で、火傷の跡がある右側だけを隠す仮面を付けて隣国の第4王子と会う事になった。
部屋を出て応接室へと向かう。前にオーサとランドル。横にはレイフ、後ろはローリーといういつもの布陣だ。
とある扉の前へ来るとランドルがノックし、俺の到着を告げる。中からブレアナさんの声が聞こえ、ランドルが扉を開けた。
中へ入ると広々とした部屋の中央にソファーがいくつか置いてあり、そこにブレアナさんとブレアナさんの執事であるジャックさん、そして初めて見る男の人が2人いた。
俺の姿を目に留めると全員立ち上がり、片膝を付き頭を下げた。
「神子様、お初にお目にかかります。サザライト王国第4王子、ルーファス・サザライトと申します。本日は私の願いをお聞き届けいただき感謝申し上げます」
「あ、えっと……今井光です。10代目神子として召喚された、と思います」
全員が片膝を付き挨拶されるなんて初めての経験で、びっくりしてしまってちょっと自分でもおかしなことを言った自覚はある。
これが本当の神子への対応なのか……。
「えっと頭を上げてください……?」
どうしていいかわからないから、とりあえずこう言ってみた。疑問形なのはご愛敬だ。一般庶民にそういったことを求めないで欲しい。
だがそれで合っていたようで全員が頭を上げてくれた。そのまま座るよう促すと「ありがとうございます」と一言の後、ソファーへと腰掛けた。
俺もレイフに案内されたソファーへと腰掛ける。俺は1人用の一番立派なソファーだった。恐らく、普段ならブレアナさんが座るであろう席だ。
「今回サザラテラ王国へ訪問したのは神子召喚の事で確認したいことがあったからです」
目の前にお茶が用意されたのを確認したルーファスさんは、今回の訪問理由を説明してくれた。
以前から、召喚陣に魔力が満ち次第すぐに神子召喚の儀を行うと言っていたのに、神子が召喚された報告が全くなかった。
ルーファスさん側も大体この辺りで召喚するだろう日にちは分かっていたため、何度かサザラテラ王国へ問い合わせを行った。が、それに対する返答はなく、全く情報が得られない日々が続いた。
神子が召喚されているのなら、もうそろそろ派遣についての確認や褒賞のことも連絡が来るはずなのにそれもない。
神子が旅に出る前に必ず褒賞の件で契約を結んでいる。それもこの国、サザラテラ王国に有利過ぎるバカバカしい内容の。その内容も事前に確認したいのにそれも出来ない状況が続いた。
そして魔物による被害も拡大しているのもあって、直接確認しようとこの国を訪れたそうだ。
サザラテラ王国の国王との面会は出来たものの、信じられないことを聞かされた。
「神子は召喚したが、アレは神子というより化け物だ。一応神子としての力はあることを確認しているが、化け物は未だに力を扱えない。旅に出ないのは我々のせいではなく、いつまで経っても力を扱う事の出来ない化け物神子のせいだ」
そう言われたらしい。
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