19 / 33
19・告白とお願い
エレンさんと会った後。俺は意を決してディルクに自分の気持ちを伝えることにした。
どうせあとわずかな命。なら後悔しないようにちゃんと伝えておこうと思ったんだ。
なんだけど…。
告白ってすげえ勇気がいるんだよ! ディルクと両思いなのは分かってる。けど今改めて自分の気持ちを伝えるのって物凄く恥ずかしい! いざ言うぞ! と思っても結局口から出るのは「あー」とか「うー」とかただの呻き声。
俺ってマジでチキンすぎて嫌になる。
そうやって言えずに数日が過ぎ、宰相とヴィンセントさんとライリーさん、そして王太子殿下までもが揃ってこの部屋にやって来た。
「急な訪問失礼する」
「いえ。とんでもございません。本日は皆さまお揃いでいかがなさいましたか?」
王太子までやってくるなんて嫌な予感がする。
「単刀直入に言おう。ガンドヴァが侵攻を始めた」
「「!?」」
…やっぱり。とうとう戦争が始まる。
「…そうですか。では宣戦布告があったのですね?」
「いや、ガンドヴァらしくそういったものはない。潜伏している諜報員によると奇襲をかけるために進軍を始めたということだ。既にこちらも手を打って、ガンドヴァ王都の転移門を破壊しすぐにこちらへ来れないようにした」
マジか。仕事早っ。やっぱり通話の魔道具があるとリアルタイムで交信できるから動きが早いな。
「だが、それで進軍そのものを止めることは難しい。今行っていることはただの時間稼ぎだ。いずれはこの国へとやってくる」
「そうですね」
「残された時間は多くはない。…そなたの覚悟を確認に来た。このまま我が国との全面戦争が起こる。そして問題なく制圧し我が国の勝利となるだろう。その時はそなたの命を貰い受けると伝えたはずだ。その事に異論はないか?」
「はい。もちろんです。私の命を持ってガンドヴァの民の命と尊厳を守っていただけるならば、どうぞお受け取りいただきたく」
そう言って最上の礼を取った。
「…相分かった。軍議が終わり次第すぐにこちらも動くことになる。また詳細が決まり次第連絡をしよう」
「かしこまりました」
「殿下、とうとう始まるのですね」
「ああ、そうみたいだ。…しっかしアドリアンの奴、宣戦布告もなしに奇襲とか。本当に卑怯な奴だよな」
王太子ご一行が去ったあと、部屋に残された俺とディルクはソファに腰掛けて遠い目をしていた。
宣戦布告は戦争を始めるにあたって必ず相手国に出さなければならないものだ。戦争の目的、そして戦場になる場所を伝え、非戦闘員の避難や周辺国へ注意を促す目的もある。そうしなければ甚大な被害が出てしまうからだ。
だが、ガンドヴァはそんなことはお構いなく、少しでも勝率を上げるために卑怯な手を使った。それがいきなりの開戦だ。
俺は知らなかったんだが、ドラゴンや爆発の魔道具の事件以降もスタンディング辺境伯領との小競り合いは続いていたらしい。
だがスタンディング辺境伯領の戦力が高すぎていずれも失敗していたそうだ。失敗続きだったために、結果についてはアドリアン陣営が漏らさないよう情報を操作していた。
なんでもスタンディング辺境伯領の『金銀の双璧』が、ガンドヴァの進行を一切許さず固く守っていたらしい。そしてその『金銀の双璧』がなんとエレンさんの息子夫夫だということだ。
エレンさんの家族、マジで最強。
焦れに焦れたアドリアンは早くリッヒハイムへ全面戦争を仕掛けたく、王や王子たちを襲撃し王位を継いだ。それが俺の宮が襲われたあの日だ。
王を殺した3日後には戴冠式を行い正式に即位。そしてその後国民から徴兵し、全戦力の確認をした。
そして昨日、リッヒハイムへ進軍を開始。その連絡が入ってきたことでさっきの顔ぶれが俺がいる離宮へとやって来た。
転移門を破壊したということは徒歩での進軍になる。徒歩となるとここまで来るのに1ヵ月は掛かるだろう。だがリッヒハイムもガンドヴァ軍がここまで来るのを大人しく待つのだろうか。
俺ならさっさと攻め込んで制圧するな。律儀に待つより短期決戦を望む。
となるなら俺の命はあと1ヵ月もないんだろうな。
「なぁディルク…」
もう恥ずかしいとか言っていられない。今ここで言わなければ俺は絶対後悔する。
腰を上げディルクの正面に立った。
「殿下?」
「なぁディルク…。お前が俺の事を好きだと言ってくれて嬉しかった。ありがとう」
お前の気持ちは本当に嬉しかった。こんな俺を『死ぬときは一緒』だと言ってくれるほど想ってくれたことが。
「俺の命はもう1ヵ月もないだろう。もしかしたらもっと短いかもしれない。お前だけでも生きて欲しいけど約束だからな。一緒にあの世へ行こう」
ディルクの頬を包み込む。これもお前がよく俺にしてくれたことだ。その手が温かくてどれだけその温かさに励まされたか。
「だけどその前にお前にどうしても伝えたいことがあるんだ。……俺もお前の事が好きだよ」
「……殿下…?」
ははっ。すげえびっくりした顔してんじゃん。お前のそんな顔久しぶりに見た気がする。男前だとどんな顔でも男前だな。
「だからさ。死ぬ前にお前との思い出が欲しい。いいか?」
「思い出? 俺に出来ることならなんでも。貴方の望みを叶えたいです。なんなりとお申し付けを」
「うん、ありがとう。じゃあさ……」
――俺を抱いてよ。お前と一つになりたい。
耳元で囁いて、初めて俺からディルクへキスをした。
まさか俺がこんな大胆なことが出来るなんて思わなかった。もう死が目の前に迫っているとなんだって出来るもんだな。
ちゅっと音を響かせてディルクから離れる。ディルクの顔を見てみれば呆然としていた。可愛いな、ちくしょう。
「ディルク。俺のお願い、聞いてくれる?」
「ほ、本当、ですか? 殿下も、俺の事…」
「こんな事、嘘や冗談で言えるわけないだろ」
「で、ですが…。俺はただの専属護衛で殿下は神の愛し子で…」
「ソレ、お前が言ってるだけだからな。俺は俺だ。何者であってもそれは変わらない。お前だって俺の専属護衛だろうがディルクはディルクだ。俺はディルクという人間が好きなんだよ。お前がお前だから好きなんだ。…で? お前の返事は?」
「御意」
短い返事の後は噛みつくようなキスを贈られた。ギュッと抱きしめられて貪るように口内を蹂躙される。くちゅくちゃと水音が響き俺の気持ちは段々昂っていく。
舌を絡ませお互いに求め合う。もっともっとという言葉が聞こえそうなキスだった。
「ん…ふ…」
「は…殿下…殿下っ……」
そのままソファに寝かされて上からディルクが伸し掛かってくる。その間もキスは止まらずより激しくなる。もうお互いの唾液も混ざり合って溢れ出して顎を伝って流れていった。
「んはっ…ディルク、名前。名前で呼んで。今は、今だけは殿下じゃなくて…」
「ヴォルテル…ヴォル。俺のヴォル。こんな事が俺の身に起こるなんて…。愛しています。誰よりも」
「俺も。ディルクと出会えて本当に良かった…。ありがとう」
またちゅっちゅとキスを重ねてからディルクは俺を抱き上げた。向かう先は寝室。
これから俺たちは一つになる。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
贖罪公爵長男とのんきな俺
侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。
貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。
一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。
そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。
・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め
・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。
・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。
・CP固定・ご都合主義・ハピエン
・他サイト掲載予定あり
本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.
事なかれ主義の回廊
由紀菜
BL
大学生の藤咲啓嗣は通学中に事故に遭い、知らない世界で転生する。大貴族の次男ランバート=アルフレイドとして初等部入学前から人生をやり直し、学園で出会う無愛想で大人顔負けの魔法の実力者であるヨアゼルン=フィアラルドと親友になるが、彼に隠された力に翻弄され次々と襲ってくる災難に巻き込まれる。終いには、国家の存続を揺るがす大事件にまで発展することに・・・
異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます
ひと息
BL
突然の過労死。そして転生。
休む間もなく働き、あっけなく死んでしまった廉(れん)は、気が付くと神を名乗る男と出会う。
転生するなら?そんなの、のんびりした暮らしに決まってる。
そして転生した先では、廉の思い描いたスローライフが待っていた・・・はずだったのに・・・
知らぬ間にチート能力を授けられ、知らぬ間に噂が広まりみんなから溺愛されてしまって・・・!?
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です