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しおりを挟むそして風呂から上がりタオルで優しく水気を取る。軽くガウンを着せベッドルームへ。
サイドテーブルに軽くお酒と果実水を出しておく。手に取ったのは果実水。お酒は飲まなかった。
そしていよいよ本番だ。俺もベッドへと上がり、テオ様に抱き着く。はぁ、胸板がすげぇ。脂肪でぽよぽよしてない胸板なんて久しぶりだ。程よい弾力を楽しむかのように頬をすりすり。
そして少し潤んだ瞳でテオ様を見上げる。
「テオ様…可愛がってくださいませ」
これで大抵の奴は獣のように俺を襲う。襲う。…襲う。…襲うはず。…おい襲えよっ! なんでそのまま固まってんだよっ!
「……すまない。先に説明を…」
は? 説明? なんの? 今からあーしてこーして、それから突っ込んでもらいますねーとか順番をあらかじめ説明しろと? まさか童貞か? ヤり方を知らないのか?
「…つまり…その。俺……うなんだ」
「はい? なんて?」
「いや、その…。俺は……………『不能』、なんだ…」
「………………………は?」
なん、だと? 今、不能、って言ったか? え、不能なの? 嘘でしょ? は? じゃあなんであんたは俺を買ったんだよ!? 俺を抱くつもりで買ったんじゃないの!? え!? 何!? どうしたらいいの!?
「すまない……その…」
俯きながらぼそりぼそりと呟いたのは、俺を買った理由。
なんとテオ様はお隣の国、ヴィエール王国の人だった。わざわざこっちまで来た理由が、向こうでは顔が割れているから不能だとバレると不味いからだそうだ。ま、お貴族様なんて弱みを握ったらこれ見よがしにつついてくるだろうしな。
そして俺を買った理由は、この国の貴族が争うようにして追い求める伝説の男娼がいるという噂を聞いたからだった。その男娼ならばもしかして自分の不能を何とかしてもらえるんじゃないかと、淡い期待を持ってここまで来たらしい。
仕事も忙しく自由になれる滞在時間は一週間のみ。それも無理やり作った時間だそうだ。そしてその後はすぐに国へ戻らなければならないらしく、一分一秒たりとて無駄に出来ないため、ここで朝から晩まで俺と過ごす。そしてヤれるだけヤって不能をなんとかしようと思ったそうだ。
「あの…いつから不能、なんですか?」
「…発覚したのは15歳の時だ。閨教育で勃たなかった。それからあらゆる手を尽くしてみたが全く…」
「なるほど…」
聞けばテオ様は御年28歳。貴族で独身。そろそろいい加減、跡継ぎの事もあるし結婚しなければならないが、不能のためのらりくらりとその話を断り続けてきた。ま、そりゃいい人がいても不能じゃな。子供を作ることが出来ない。
この世界は、男同士でも子供を作ることは可能だ。300年前に男同士でも子供を作れる方法を編み出してから、今じゃ男女の性別なんて趣味嗜好に変わってしまっている。
だが体内に精を注がなければならないのは変えられなかったから、どうしてもテオ様は子種を注がなければならない。だけど不能。それが出来ない。
お世継ぎを残せない。そうなればお家断絶。古くからある伝統的な血筋のようでそれは絶対に回避しなければならない。だけど不能。もうそろそろ隠し通すことも難しくなってきた。どうしよう。で、俺のところに来た。
え。これ、俺の責任デカすぎない? テオ様の不能を治せなかったら俺どうなるの? え。最悪、首と胴体離れちゃう? うそん。
「…子供が出来なければ家は断絶してしまう。それだけは避けねばならない。だが、どうしても…。最近は悩みすぎてあまり寝れなくなって、仕事も上手くいかなくなっている。もう藁にも縋る気持ちでここへとやって来たんだ…」
…うわぁ、すげぇストレスじゃん。それ精神的にやられちゃってない? 大丈夫? って大丈夫じゃないよな。
「だから…その…」
「話はわかりました。私で何とかできるかはわかりませんが…とりあえず頑張ってみましょうか」
出来るか出来ないかじゃない。やらなきゃいけない。どうにかしてやり通さなきゃならない。もう腹をくくってやるしかねぇ!
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