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2.神は存在する
しおりを挟む先生から受け取った本を読み始めて数ページ目、昼食だと言われ泣く泣く本を閉じた。
今回の本の内容は、どこかの国の神話だった。戦いや争いが大好きな神様の話みたいだ。
神様、と一口で言ってもたくさんの神様がいる。火の神様、水の神様、土の神様みたいな自然の神様に、愛の神様、豊穣の神様、命の神様や芸術の神様なんてのもいる。そしてその神様や世界そのものを創った創造神様もいるらしい。
神様多すぎでしょ。
本当にいるかどうかもわからないような神様も多いけど、命の神様に関しては実在していると思ってる。というのもルークが母様に宿った時、神様の息吹を感じたんだ。ふわっと暖かな風を感じてそれがまるで『おめでとう』とか『ようこそ』って言っているように感じた。
それを父様と母様に言ったら2人共ぽかんとしてたっけ。まだ僕も小さかったから上手く説明できなかったけど、それでも父様達は分かってくれた。
読んだ本の中に似たような話があった。その話を読んだ時、昔は僕と同じ魔眼を持った人がいたんだと思った。だって僕みたいにそれを感じることが出来なければ話として残らないと思ったんだ。
だから僕はたくさんの本を読み、魔眼について、魔眼を持った人が書いた話について調べることにしたんだ。そこから何かが分かるかもしれないと思って。
「ジェフリーにルーク。久しぶり。また大きくなったな」
昼食を食べ終わってルークと部屋に戻ったら、なんとそこにはお祖父様とお祖母様が待っていた。
お祖父様はさっと僕とルークを軽々と抱き上げる。背の高いお祖父様に抱っこされると、一気に視線が高くなって見晴らしがいい。僕はこれが大好きだ。
「おじいちゃま、すご~い!」
ルークもきゃっきゃと楽しそうに笑ってる。
「2人共重くなったな。そろそろ2人一緒に抱き上げるのは辛くなってきた」
「とか何とか言って、全然平気そうだぞライアス。さ、2人共今日から3日間よろしくな」
そう言ってお祖母様は僕たちの頭を撫でてくれた。
お祖父様とお祖母様の膝の上に乗っけてもらって、今日はどんな授業だったか、読んだ本の内容はこんな本だった、剣術が楽しいなど、会えなかった間の事を話していた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていって、ルークはしゃべりつかれたのか眠そうに目をこすり始めた。
「ルークは昼寝の時間か?」
「や~だ~。まだお話する~」
「明日も明後日もいるから今は寝ような。さ、お祖母様と一緒に寝よう」
有無を言わさずルークを抱き上げてそのままベッドへ寝かせに行った。体をぽんぽんされたルークはあっという間に眠ってしまった。
「あれだけはしゃげばそりゃそうか。ははっ。やっぱ子供の寝顔って可愛いな」
「お祖母様、お願いがあるのですが…」
ルークが寝たのを確認して、僕は気になっていたことを改めて聞くことにした。
お祖母様の魂のことだ。
「僕がもっと小さかった時にも言いましたが、お祖母様はどこから来たんですか? 魂の色や形が皆と違うのがどうしても気になるんです。今日こそ教えてください、お願いします」
「ジェフリー……。どうしてそのことを知りたいのか聞いても良いか?」
「僕は母様から受け継いだ魔眼の事が知りたいんです。もしかしたら僕がこの目を受け継いだこと、母様よりも強い魔眼を持ったことに何か意味があるのかもしれない。だから本をたくさん読んで、どこかにそのヒントが書かれていないか調べています。
お祖母様の魂が他と違う事も、もしかしたらその答えの一つになるかもしれない。だから僕は知りたいんです」
「そっか……。うん、わかった」
「エレン、いいのですか? アシェルにもライリーにも言わなかったことですよ」
「本当はライアス以外言うつもりはなかったんだけど、ジェフリーはただの好奇心で聞いてるわけじゃないみたいだしな。その目の事は今のところ誰にも詳しい事は分からない。もしかしたらジェフリーの言うように、何か意味があるのかもしれない。それは分からないけどジェフリーは賢いし、きっと言いふらしたりすることはないだろう」
「もちろんです。お祖母様が今まで父様にも言わなかったことです。本当は知られたくないんだろうことも理解しています。僕の研究についてでしか利用しません。誰にも言いません。約束します」
「……お前本当に7歳の子供か?」
「? 正真正銘、7歳の子供ですよ?」
「…その受け答えがそうとは思えないんだよな。将来どうなるんだ、この子は……」
それからお祖父様がお茶を淹れてくれて、3人腰を落ち着けて話をすることになった。
「俺は魂の色や形がどういったものか視えないからわからないけど、ジェフリーが言うように俺は元々この世界の人間じゃない。というか、魂は異世界から来たんだと思う」
「異世界……?」
お祖母様の口から出てきたのは、僕が全く思い当たることのない話だった。
「俺は前世の記憶を持っている。それもこの世界ではなく別の世界だ。魔法なんかなくて、科学が進歩した世界だった」
お祖母様の話は本当に信じられない話だった。
元異世界の人間。そしてその時の記憶を持っている。
言葉も違う、魔法もない、魔物もいない、機械が動き、背の高い建物が立ち並び、人を乗せて空を飛ぶ乗り物まである。
「あんまり得意じゃないんだけど…」と言って絵を描いてくれた。それのどれもが見たことのない物、名前、姿形だった。
アシェル叔母様が作った画期的な魔道具、それもお祖母様の前世で当たり前にあった物を再現したものだそうだ。
書いてくれた文字は見たこのない形で、柔らかい曲線を描くものや線を組み合わせたような形、それを並べて使っているという。
「この世界じゃない、全く別の、違う世界…そんな世界があったのですね」
「びっくりしただろ? 俺だって異世界に転生してるっていう事実に驚いたよ。こんな話、普通信じろって言う方が無理がある。だから俺はライアス以外この話をしたことはない。
ジェフリーはどう感じた? こんなあり得ない話を聞いて、どうだった?」
「……正直言えば、頭がおかしいと思うでしょう。誰も知らない世界とか、荒唐無稽すぎて笑えません。
でも僕は母様以上に人に視えない物が視えています。動物の気持ちもわかるし、妖精も視えるし、神様を感じることだってあります。こんな事言っても誰も信じてくれません。だから僕はお祖母様の話を信じることが出来ます。それに異世界の魂だと言われて、納得出来ました。
むしろそうでなければその魂のことに説明がつきませんから」
人に言っても信じて貰えないようなこんな話、僕だからおかしいと思わずに納得できる。お祖母様の話は、僕が不思議に思っていたことをすんなりと納得させる内容だった。
お祖母様は存在そのものが稀有な人だったんだ。だから魂がこの世界の人の魂とは違った。
僕はその魂をもっとしっかり見ようと思って目に魔力を集めてみた。
「あれ………?」
どういうことだ? これって………。
「俺のこんな話、すんなり信じてくれるなんてさすがジェフリーだな」
「……ついでにもう一つお聞きしたいことがあります。ですが、少しお待ちいただけますか?」
「ん??」
僕にはまた気になることが出来てしまった。
まさかの展開だ。
急いで部屋を出て使用人の姿を見つけると、また目に魔力を集めて視てみた。
「うん、やっぱり……」
1人だけじゃなく、複数の使用人の魂を確認してみた結果、僕は確信を持つことが出来た。
「ジェフリーお帰り。一体どうした?」
「いえ、少し確認をしてきただけです。
ところで祖父様。お祖父様は、どういった家系の、どういった血筋の方なのですか?」
「どういう意味だ?」
いきなりそんなことを聞かれたお祖父様は、片眉を上げ怪訝そうな顔をした。
「お祖母様はなんとなくわかるんです。異世界から魂がこちらへ来たのであれば、きっと神様が関わっているのではないかと。ですがお祖父様の魂はこちらの世界の人と変わりません。
なのに――お祖父様の魂から、神様の気配を感じるんです」
「「……は?」」
先ほど、使用人の魂を視て確信した。お祖父様の魂の色や形はこちらの世界の人と同じだった。だけど魂の輝きが違った。それは異世界から来たお祖母様も同じ。
お祖母様はわかる。異世界からの転生者だから。そこに神様の気配を感じても、ああ、だからか。と納得できる。でもお祖父様はそうじゃない。だからお祖母様と同じ神様の気配を感じる理由がわからない。
だから何か特別な家系、血筋なのかと思ったんだ。
神様の子孫なのか、加護か、または祝福を与えられた人間なのか。それはわからない。
でも確かに神様を感じる。だからこその輝き。普通の人ではあり得ないほどの神々しさ。
だからお祖父様がここまで強いのだと理解した。
魔力量は大したことはない。だけど身体能力の高さ、戦闘センス、それがずば抜けている。父様はやっと最近になってお祖父様から一本取れるようになってきたと言っていた。
「肉体的な年齢を考えても、父さんのあの強さは異常だ」とは父様の言葉。お祖父様は歳を重ねても、身体能力が劣るどころか強くなる一方だったらしい。肉体的に若い父様が最近になってやっと追いついたと言っていた。
その秘密はお祖父様の魂にあったんだ。
「……お祖母様と同じく、お祖父様の魂にも神様の気配を感じるんです」
「……………」
どうしよう。とうとう2人共黙ってしまった…。
まぁそうか。いきなり神様の気配を感じると言われて、そうなんだ、とすんなり納得は出来ないだろう。事実、神様なんているかどうかも分からない存在なんだし。
「ちょっと事態を飲み込むまでに時間がかかりそうだが……。
俺は俺の血筋や家系はわからない。というのも、俺が子供の時に両親は亡くなり、それから数年孤児だったからな。だが、俺の両親は到って普通の人だったように記憶している。特別な力や能力といったものはなかったはずだ。…まぁ俺が小さい時の記憶でしかないから、それ以上のことはわからないが」
孤児…。お祖父様は子供の時に親を亡くしていたのか。
それは知らなかった。そう言えば、お祖父様の両親や兄弟の話は一度として聞いたことはなかった。今そんなことに思い当たるなんて。
「それは……すみませんでした。不躾な質問でした」
「いや、いい。気にするな」
そう言って笑顔で僕の頭を撫でてくれたお祖父様。考えなしに質問したことで、辛い記憶を思い出させてしまって申し訳ない気持ちだ。
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