【完結】僕は『番狂い』の竜人

華抹茶

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1. 僕は竜人

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 今から約千年前。このホルストラ王国に一匹の美しい白竜が舞い降りた。
 竜が人里へと下りてくるなど前代未聞のことで、当時の王国は国が滅ぼされるのではないかと大変な騒ぎとなった。だが白竜の目的は国を滅ぼすことでも荒らすことでもなく、命を救われた当時の第三王子に恩返しにやってきただけだった。
 竜は人化することが出来、好奇心旺盛な白竜は度々人里へと遊びに来ていたのだ。人化だけではなく自身が望むいろいろな姿に変化することも出来、たまたま猫の姿になって王都で遊んでいた。屋根の上でぽかぽかとした陽気を当てて昼寝を楽しんでいたその時。突然その家が大きな音を立てて崩れ落ちた。馬が突然暴れ出し馬車ごと家に突っ込んだのである。
 その拍子に猫に化けていた白竜は放り出され、未だ暴れる馬に運悪く蹴飛ばされてしまった。竜であれば負けることもないが猫の弱々しい姿ではなすすべもなく、瀕死の状態で地面に打ち付けられることになった。
 そこへたまたま視察へと出ていた第三王子に見付けて貰い、治癒魔法を施され一命を取り留める。
『もうこんな怪我をしてはいけないよ』
 優しい声と、同じく優しく体を撫でるその手に白竜は嬉しくなりその第三王子のことが大好きになった。だから翌日白竜は本来の姿のまま王宮へと姿を現し降り立ったのだ。
 『我を救ってくれたそなたの国を、この白竜が守護しよう』
 世界は領土を広げるために日々国同士で争っていた。このホルストラ王国も日々どこかの国から狙われていた。だが白竜が守護したことからその脅威から逃れられ、今では魔法大国へと発展を遂げている。
 白竜は後に運命の番である一人の女性を娶ることになる。二人の間に子が生まれ、そしてその血は今も脈々と受け継がれている。竜の血を引いた子供は竜人となり、普通の人間よりも魔力が高かった。
 その一族は偉大なる竜という意味を持つ『マグヌス』の性と爵位を与えられることになった。それが僕の家の成り立ちだ。

 そして竜の血を引く僕達は自分の『番』を見つけ溺愛する。この世界にたった一人だけ存在する運命の番。その愛は非常に重く、僕達一族は『番狂い』とも呼ばれている。
 運命の番は必ず近くに現れる。そして見つけたが最後、恐ろしいほどの執着で何としても自分と番わせようと奮闘する。それは僕も例外ではなかった。

「ディオン! 好き! 大好きだよ! 僕と番になって!」
「げっ! またお前か! 俺はお前みたいな男はお断りだと何回言ったらわかるんだ! 俺に近寄るな!」
 
 ディオン・マーティネス。王立学園魔法科の二年生で僕の同級生だ。ディオンは僕とは違って普通の人間なのに、豊富な魔力を持ち『魔法の天才』と呼ばれている。生まれは平民で孤児院育ちだけど、長身で少し浅黒い肌に黒髪黒目の美丈夫だ。体つきもしっかりしているし、何よりそのエキゾチックな雰囲気が他にはない色気を醸し出していてとても人気がある。実際凄くモテるし彼の隣はいつも違う女の子がいて皆から羨望の眼差しで見られているんだ。
 だから彼は無類の女好きと言われていて、彼自身もそれを認めている。だから男である僕がいくら好きだと言っても全く相手にしてもらえない。
 彼と初めて会ったのは学園の入学式。僕は一目見て彼が運命の番だとすぐにわかった。だからその瞬間、彼と番になりたくて猛アタック。だけど男である僕のことなど眼中にないし、僕が毎日のように『好き好き!』と言ったせいで煙たがられてしまった。それでも僕は全くへこたれないし、そんなディオンを可愛いと思っている。

「カミーユ、いい加減諦めたら?」
「えー!? そんなの無理だよ! だって彼は僕の運命の番だもの!」
「……マグヌス家の『番狂い』って大変だな。ま、ほどほどに頑張れ」

 同じ魔法科の友人であるペドロは呆れながら僕の肩をぽんぽんと叩く。僕の家であるマグヌスの『番狂い』は有名だ。歴代のマグヌス家の伴侶への愛の深さは物語として語られているほど。守護竜だった白竜の血を引く僕達は、何代続いてもこの番への執着は薄れることはなかった。僕の父様も母様への愛情は深くて、見ているこちらが恥ずかしくなるほど母様にいつも愛を囁いている。

「うん、ありがとうペドロ! 僕頑張るね!」
「……その精神力が凄いよ」

 マグヌス家は白竜の血を引くお陰で、白い肌にサラサラの銀髪、そして金の瞳を持って生まれてくる。マグヌスの血を引く者は必ずこの色で例外はない。ディオンは逆に全体的に黒い色を持っているから、僕達は白と黒の対比だ。ディオンがこの色で生まれてきたのも僕の運命の番だからだと思っている。
 だけどディオンは普通の人間だから、僕達が運命の番なんだってわからない。僕がいくら伝えても理解してもらえない。でも僕はそれくらいで諦めるなんてことは出来ないし、ディオン以外と番うなんて絶対に無理。だからまずは僕のことを知ってもらおうと毎日毎日ディオンの元へ行って告白をしている。最近は「近寄るな!」って言われて逃げられちゃうんだけど。
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