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3. 番を助けるための選択
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その後、クラスに戻りいつも通り授業を受けるもディオンのことが気になってそれどころじゃなかった。ディオンが運ばれた病院もわからない。でも父様に聞いてみたらわかるかもしれない。僕は授業が終わるとすぐに家へと帰った。
父様は家で仕事をしていることが多い。急ぎ父様の執務室へ訪ねてみるも、そこに父様の姿はなかった。こんな時に限ってどこへ行ったのか。その父様は夜遅くに帰ってきたようで慌てて父様の部屋へと突撃した。
「ディオンのことか?」
父様は僕の目的がわかっていたようでいきなり訪ねてきた僕を追い出すことはなくそう聞いてくれた。ディオンが僕の番だとわかってから家族にはディオンのことを話していた。だから当然ディオンのことを知っているけど、今日ディオンが病院に運ばれたことは言っていない。
「父様、もしかしてディオンの治療に行っていたの?」
「そうだ。かなり珍しい症例だったため、私が呼ばれた」
やっぱり。父様は医療協会のトップだ。しかも魔法治癒士としても有名で、現在父様以上の人はいない。その父様が呼ばれたということはディオンは――
「カミーユ、よく聞いてくれ。ディオンの病は『魔宝玉凝固化』だ。この病を持つ者が国に一人いるかどうかの珍しいものだ。そしてディオンの凝固化はかなり早く、持ってあとひと月というところだろう」
僕達は体の中に『魔宝玉』というものを持っている。そこが魔力の元であり、魔法を使うためには必ず使用する大切な器官だ。体内で魔力を作るだけじゃなく、空気中に漂う魔素を取り込む器官でもある。体内の魔力が少なくなっても魔素を取り込むことで魔法を使うことが出来るが、その魔宝玉の大きさは個人差がとても大きい。
ディオンは元々その魔宝玉が大きくて取り込める魔素も多いため、大量の魔力を使うような難しい魔法でも難なく扱うことが出来る。だから魔法の天才と呼ばれているのだけど。
そしてこの魔宝玉は、人が死ぬと硬くなり宝石のような形になる。遺族はそれをアクセサリーにして身に着けたり部屋に飾ったりして故人を偲ぶのだ。生きている間は硬くなることはない。だがディオンの病名は魔宝玉凝固化。生きている間は硬くなることはない魔宝玉が硬くなっていく病気。このまま完全に硬くなってしまったら、ディオンは死ぬということだ。
「そんなっ……!」
「だがディオンが助かる方法はある」
「え!? 助けられるの!?」
「ああ。だが、場合によっては大きな犠牲が必要になる」
父様は僕の目をしっかりと見つめている。僕にそれを聞く覚悟があるのかと言われているようだった。
「お前と番になり繋がることか、お前の『竜玉』を渡すことだ」
僕達竜人は『運命の番』と番になるためには体を繋げる必要がある。でもそれだけじゃ番関係は成立しない。相手も僕達のことを心から好きになって相思相愛になっていなければ、番関係にはなれないのだ。
お互いを想い合い番になると、竜人と番の間に不思議なパイプが繋がる。お互いの魔力を共有することになるのだ。そうなればディオンの病気も治すことが出来る。
でも僕はディオンに好かれるどころか嫌われている。今まではそれでもいいと、いつかはわかってくれると思っていた。でももうそれを待っている時間はない。
残されるのは僕の竜玉を渡すこと。竜人は魔宝玉ではなく竜玉と呼ばれるものを体内に持っている。機能としては魔宝玉とさほど変わらないのだけど、大きさも魔力量も何もかもが桁違いに大きい。だから僕達竜人は魔法に関しては特別なんだ。
だけど、当然僕の竜玉がなくなれば僕は死ぬ。番になれなければ竜玉を渡すしかディオンを助ける手段はない。
「父様。僕の竜玉をディオンに渡して」
「……それでいいんだな?」
「もちろん。父様もわかるでしょう? 番が危ない時は番を優先する気持ち」
「そうだな。私も番が助かるなら、私の命を差し出すことなど容易いことだ」
「うん。だから僕の竜玉をディオンにあげてほしい」
「……わかった。お前の覚悟を受け取ろう」
「ありがとう、父様」
これでディオンは助かる。僕の命と引き換えにして。
でもそれが悲しいとか辛いという気持ちは全くない。僕は番を助けることが出来るんだ。こんなに嬉しいことはない。
僕の竜玉がディオンの中に入るということは、ディオンが生きている限り僕はディオンとずっと一緒ということだ。いつかは番になることを夢見ていたけど、これはこれで悪くない。ずっとディオンと一緒にいられるなんて、こんな素敵なことが他にあるだろうか。
そして二日後。僕は寝台の上で横になっていた。すぐ側には父様が。これから僕の竜玉を取り出す魔法を使う。
「……何か伝えることはあるか?」
「ディオンに『幸せになって』って伝えてくれる?」
「わかった。約束しよう」
「ありがとう、父様。それじゃあお願いします」
父様の手が僕のお腹に当てられた。するとすぐにぽかぽかと温かいものが体の中に入ってくる。それを感じながら目を瞑った。
ディオン。君はこの先もずっとずっと生きられるよ。大好きな魔法をこれからもいっぱい使えるよ。君の将来が幸福で溢れるよう祈っているからね。
そうディオンへの祈りを捧げた時、僕の意識は闇に落ちた。
父様は家で仕事をしていることが多い。急ぎ父様の執務室へ訪ねてみるも、そこに父様の姿はなかった。こんな時に限ってどこへ行ったのか。その父様は夜遅くに帰ってきたようで慌てて父様の部屋へと突撃した。
「ディオンのことか?」
父様は僕の目的がわかっていたようでいきなり訪ねてきた僕を追い出すことはなくそう聞いてくれた。ディオンが僕の番だとわかってから家族にはディオンのことを話していた。だから当然ディオンのことを知っているけど、今日ディオンが病院に運ばれたことは言っていない。
「父様、もしかしてディオンの治療に行っていたの?」
「そうだ。かなり珍しい症例だったため、私が呼ばれた」
やっぱり。父様は医療協会のトップだ。しかも魔法治癒士としても有名で、現在父様以上の人はいない。その父様が呼ばれたということはディオンは――
「カミーユ、よく聞いてくれ。ディオンの病は『魔宝玉凝固化』だ。この病を持つ者が国に一人いるかどうかの珍しいものだ。そしてディオンの凝固化はかなり早く、持ってあとひと月というところだろう」
僕達は体の中に『魔宝玉』というものを持っている。そこが魔力の元であり、魔法を使うためには必ず使用する大切な器官だ。体内で魔力を作るだけじゃなく、空気中に漂う魔素を取り込む器官でもある。体内の魔力が少なくなっても魔素を取り込むことで魔法を使うことが出来るが、その魔宝玉の大きさは個人差がとても大きい。
ディオンは元々その魔宝玉が大きくて取り込める魔素も多いため、大量の魔力を使うような難しい魔法でも難なく扱うことが出来る。だから魔法の天才と呼ばれているのだけど。
そしてこの魔宝玉は、人が死ぬと硬くなり宝石のような形になる。遺族はそれをアクセサリーにして身に着けたり部屋に飾ったりして故人を偲ぶのだ。生きている間は硬くなることはない。だがディオンの病名は魔宝玉凝固化。生きている間は硬くなることはない魔宝玉が硬くなっていく病気。このまま完全に硬くなってしまったら、ディオンは死ぬということだ。
「そんなっ……!」
「だがディオンが助かる方法はある」
「え!? 助けられるの!?」
「ああ。だが、場合によっては大きな犠牲が必要になる」
父様は僕の目をしっかりと見つめている。僕にそれを聞く覚悟があるのかと言われているようだった。
「お前と番になり繋がることか、お前の『竜玉』を渡すことだ」
僕達竜人は『運命の番』と番になるためには体を繋げる必要がある。でもそれだけじゃ番関係は成立しない。相手も僕達のことを心から好きになって相思相愛になっていなければ、番関係にはなれないのだ。
お互いを想い合い番になると、竜人と番の間に不思議なパイプが繋がる。お互いの魔力を共有することになるのだ。そうなればディオンの病気も治すことが出来る。
でも僕はディオンに好かれるどころか嫌われている。今まではそれでもいいと、いつかはわかってくれると思っていた。でももうそれを待っている時間はない。
残されるのは僕の竜玉を渡すこと。竜人は魔宝玉ではなく竜玉と呼ばれるものを体内に持っている。機能としては魔宝玉とさほど変わらないのだけど、大きさも魔力量も何もかもが桁違いに大きい。だから僕達竜人は魔法に関しては特別なんだ。
だけど、当然僕の竜玉がなくなれば僕は死ぬ。番になれなければ竜玉を渡すしかディオンを助ける手段はない。
「父様。僕の竜玉をディオンに渡して」
「……それでいいんだな?」
「もちろん。父様もわかるでしょう? 番が危ない時は番を優先する気持ち」
「そうだな。私も番が助かるなら、私の命を差し出すことなど容易いことだ」
「うん。だから僕の竜玉をディオンにあげてほしい」
「……わかった。お前の覚悟を受け取ろう」
「ありがとう、父様」
これでディオンは助かる。僕の命と引き換えにして。
でもそれが悲しいとか辛いという気持ちは全くない。僕は番を助けることが出来るんだ。こんなに嬉しいことはない。
僕の竜玉がディオンの中に入るということは、ディオンが生きている限り僕はディオンとずっと一緒ということだ。いつかは番になることを夢見ていたけど、これはこれで悪くない。ずっとディオンと一緒にいられるなんて、こんな素敵なことが他にあるだろうか。
そして二日後。僕は寝台の上で横になっていた。すぐ側には父様が。これから僕の竜玉を取り出す魔法を使う。
「……何か伝えることはあるか?」
「ディオンに『幸せになって』って伝えてくれる?」
「わかった。約束しよう」
「ありがとう、父様。それじゃあお願いします」
父様の手が僕のお腹に当てられた。するとすぐにぽかぽかと温かいものが体の中に入ってくる。それを感じながら目を瞑った。
ディオン。君はこの先もずっとずっと生きられるよ。大好きな魔法をこれからもいっぱい使えるよ。君の将来が幸福で溢れるよう祈っているからね。
そうディオンへの祈りを捧げた時、僕の意識は闇に落ちた。
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