【完結】異世界に召喚された賢者は、勇者に捕まった!

華抹茶

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30.最終話

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 俺とフェリクスは、婚約してから一年後に式を挙げてめでたく夫夫となった。
 大公となったフェリクスに嫁ぐ形になったから、俺は『大公夫人』だ。男なのに夫人……違和感がすごいがこの世界では普通のことらしいので、仕方なく受け入れている。
 名前も少し変わって、ソウタ・タケウチ・アーマンドとなった。

 俺とフェリクスの結婚式はすごかった。何がすごいって規模が。
 魔王討伐の英雄の結婚式で、かつフェリクスは元王族。国を挙げての結婚式となったため、世界各国の王族の方々が招待客として参列してくれた。
 それ以外にも俺とフェリクスの友人たちも多く参列してくれたし、王都のパレードは多くの人でごった返し、一週間続くお祭りまで開かれたのだ。
 多くの人にたくさん祝ってもらえて嬉しかったのだが、ここまですごいことになるとは思っていなかった。
 
 おまけになんだか変なあだ名まで付けられていたことが発覚。
 パレード中、『勇者様』や『賢者様』と声をかけてもらったのだが、中には聞いたことのない『雷神様』という声まであった。
 雷神様ってなんだ? とフェリクスに聞いたら、俺のもう一つの二つ名だという。

 二回目の魔王討伐の時にキャンプ地近くで大型結界を張り、空を埋め尽くすほどの雷魔法を使ったことでそう言われるようになったらしいのだ。
 俺もちゃっかり『雷鳴よ轟け! 神のいかづち!』なんて中二病全開で叫んでいたし、それを聞いたキャンプ地の人がそのことを人々に語って聞かせたらこうなったとのこと。

 やめてくれ……中二病全開なんてやるんじゃなかった……まさしく黒歴史で恥ずかし過ぎる……

 そして魔王と隣国の関係だが、こちらも調査が進み理由がいろいろとわかった。
 なんと隣国ジュリヴァ王国が魔王を造っていたことがわかった。最初から魔王を造ろうとしていたわけではないようで、魔物を使った兵器を造ろうとしていたそうだ。

 それはなぜか。理由は単純。世界征服をしたかったから。
 ジュリヴァ王国は元々野心の強い国だったそうで、昔からあちこちに戦争を仕掛けるようなところだったそうだ。だが敗戦したことで方針転換を図り、それが魔物兵器の研究だった。

 王宮の中に極秘の研究所を作り、王家主導の元その研究が進められていた。ある程度研究が進むと、ジュリヴァ王国の端、つまりは最初の魔王が誕生した付近に実験場を設立。
 そこで魔物をいろいろとかけ合わせたりと実験を繰り返したところ、突然変異で魔王が誕生。実験場は魔王が誕生したことで、生まれた魔物たちにより蹂躙され消滅。

 生まれた魔王はジュリヴァ王国が他国を蹂躙するために造ったものだから、生まれた魔物もジュリヴァ王国へ流れ込むことはなかった。だからその時はジュリヴァ王国は無事だったのだが、二回目の魔王の誕生で王国は消滅した。

 一度目の魔王を俺たちが倒したことで、ジュリヴァ王国は焦ったのだ。あの大量の魔物も魔王も倒す存在がいると証明されてしまったから。
 だからより強い魔王を造らなければと王宮の研究所で研究を急がせた。王宮内の研究所でそんな危険なことをするなんて正気の沙汰だが、一度目の時に自分たちが襲われなかったことで高をくくっていたんだ。

 ところが実験を急ぎ過ぎたからか、実験中に巨大な爆発が起きた。王宮があった辺りにできていた巨大なクレーターはその跡だそうだ。
 しかもその爆発によって魔王が三体生み出され、次々と魔物が生れ落ちていく。失敗した実験で生まれた魔物はジュリヴァ王国も関係なく蹂躙。王都が壊滅していたのはそういった理由だそう。
 
 実験は失敗したのにアーマンド王国への侵攻命令は成功していたらしく、魔物はアーマンド王国へ大量に流れてきた。
 アーマンド王国への侵攻命令がされていたのは、魔王を倒したのがアーマンド王国だったからだ。まずはそこを潰してしまわないとジュリヴァ王国の世界征服は遠のいてしまう。

 なぜここまで詳細がわかったかというと、アーマンド王国から派遣された調査団が研究者のひとりを発見したから。
 実験が失敗して爆発した時、その研究者は実験用の材料などを買い付けに他の地域へ行っており、たまたま助かったそうなのだ。
 
 買い付けから戻ってみれば、ジュリヴァ王国が壊滅しており途方に暮れていた矢先、調査団がやってきたとのこと。アーマンド王国の調査団だとわからず助けを求めてしまい、捕まってしまったのだ。
 そして尋問を行ったところ、逃げられないと悟ったのか、正直にジュリヴァ王国の機密を話してくれたそうだ。

 魔物兵器の研究なんて恐ろしいことをよく考えたよな。今後そんなことが二度と起こらないように、僅かに残っていた研究資料などはすべて破棄したそうだ。
 これからの未来で、また同じことを考えるような人が出てこないことを祈りたい。



「ソウタ、そろそろ準備はいいかい?」
「ああ、大丈夫だ」

 そして数年後。今日は念願の『魔法学校』完成式典だ。
 俺たちは領地経営もないし政治に関わることもないので、特にこれといった仕事がなかった。
 そこで俺はこの世界の本格的な魔法革命を起こそうと思い、『魔法学校』の設立をすることに決めた。

 魔法学校とはいうが、魔力量も身分差も何もかも関係なく、学びたい人に門戸を開く予定だ。
 魔力量には個人差があるものの、この世界の人々は魔力を必ず持っている。魔力は何も魔法だけに使われるわけじゃない。魔道具だって魔力を使って起動しているのだ。
 そこで学校では魔力が少ない人でも魔道具関係の勉強ができるようにしたのだ。それ以外にも医療関係、研究者、討伐士、騎士など幅広く授業ができるようにしている。

 そのため校舎はかなり大きく造られることになり、建設地の選定から校舎の設立、教師陣の募集や採用、それ以外にも準備しなければならないことが多々あり、開校するまでにかなりの年数を要した。
 それがやっと出来上がったのだ。

 開校は来月からで、今日はそのお披露目会。ちょくちょく視察にも行ったし、会議にもバンバン出てかなり忙しくしていた。もちろんフェリクスも一緒だ。

「あー! とうとうここまできたのか!」

 このプロジェクトにはアーマンド王国も協力してくれている。そしてこの学校はこれから他国にも広がる予定になっていて、実現すればこの世界の魔法は大きく変わることになる。

「この世界にはなかった奨学金制度の初導入でもあるし、これからが楽しみだね」
「ああ。協力してくれたスウェインや宰相様たちには頭が上がらないよ」

 奨学金制度については、フェリクスが向こうの世界にあったこの仕組みを導入してはどうかと提案したのだ。これには賛否両論いろいろと巻き起こったものの、スウェインと宰相様が賛同してくれ実現と相成った。

「じゃ、行ってくるよ」

 両親とばあちゃんの写真に向かって手を合わせる。
 異世界に引っ越す時に、家族の写真も一緒に持ってきた。それに今はもうこの写真は伏せられることなく飾られている。
 フェリクスとちゃんとした恋人となってから、家族の写真を見ても胸が痛むことはあっても悲しくなって苦しむことはなくなった。
 以前フェリクスが言ってくれたように、俺の悲しみを半分背負ってくれたからだ。
 俺にとってフェリクスの存在はそれだけ大きいものになった。

 早速馬車に乗って移動だ。転移魔法で行けばすぐなのだが、俺は馬車に乗って流れる景色や街並みを眺めるのも好きなので、特に急ぎじゃなければ馬車を使っている。
 俺たちが乗る馬車はやがて学校へと到着した。式典に参加してくれる人も続々と集まっており、俺のワクワク感はより高まっていく。

「ソウタさん!」
「シャノンにモーリスくん!」

 式典が始まるまで控室に通されると、シャノンとモーリスくんに声をかけられた。実はこの二人は魔法学校の教員として働いてもらうことになっている。
 モーリスくんは魔法全般、シャノンには身体強化の使い方について教えてもらう予定だ。

「先ほど校舎の中を見学させてもらいましたが、本当に素敵な学校ですね!」
「俺もこれからめちゃくちゃ楽しみっす!」

 教員の仕事を俺から直接依頼したところ、二人共快く引き受けてくれた。討伐士としてノリに乗った二人だから無理かなと思ったから、「ぜひさせてほしい」と言われた時は嬉しかった。

「ソウタ殿、開校おめでとう」
「国王様! こちらこそ、この件に多くのご協力を賜り感謝いたします」

 シャノンたちと話していると、国王様に王妃様、スウェイン、お姫様のヘルミーナという王族一家もお見えになった。その後ろには護衛で付いているダグラスの姿もある。
 そして宰相様や各大臣の方々も到着され、みなさまにも挨拶させていただいた。この方々の協力がなければ絶対に実現しなかったことだ。
 それだけじゃなく、教員には宮廷魔導士の人や医療に精通している人など、本当にたくさんの人に集まってもらえた。協力してくれた人には本当に感謝しかない。
 
「そろそろ式典の開始時刻となりますので、みなさまお集まりください」
「お、時間だな」

 学校の事務担当の人に呼ばれ、俺たちも移動することに。
 式典は正面玄関で行われる。そこへ向かうと入学を予定している生徒や教員、そして学校を設立するのに協力してくれた方々が大勢集まってくれていた。
 いよいよ式典の始まりだ。まずは国王様からの挨拶から始まる。

「数年前、この世界に魔王が現れた。魔王は強大で、我々では手の打ちようがなかった。そんな中、古代の残された召喚魔法を作り上げ、ソウタ殿が召喚された」

 懐かしいな。最初はふざけんな! 今すぐ帰せ! って文句言ったんだっけ。今じゃフェリクスと結婚してこの世界に移住するなんて、召喚された当初は考えたこともなかった。

「賢者であり、雷神でもあるソウタ殿は見事魔王を討ち果たしてくれた。それにはソウタ殿の新しい魔法が必要不可欠だった。だがその魔法はこの世界の人々でも扱えるものだ。ソウタ殿は魔法の可能性を広げてくれたのだ」

 まさか攻撃魔法しかないなんてびっくりしたんだよ。『攻撃は最大の防御』という脳筋な考え方で、せっかく魔法という素晴らしいものがあるのに勿体ないしかなかったんだよな。

「その魔法をソウタ殿は多くの人が使えるように、更に発展できるようにとこの学校を設立した。我々もそれに協力できたことは喜ばしいことである。ではこの先は学校長であるソウタ殿に挨拶をしていただこう」

 国王様に促され、俺は壇上へと上がる。高い位置に上ると集まってくれた人の顔がよくわかる。みんな非常に楽しみにしてくれているのか、いい笑顔を見せてくれていた。

「ご挨拶に預かりました、学校長となりますソウタ・タケウチ・アーマンドです。まずはこの一大計画にご協力いただきました方々に深く感謝申し上げます」

 ただのサラリーマンが、異世界で学校長をやるなんてこれもまさかの展開だ。ここまで大変だったけど、ここからがスタートだ。

「俺は魔法には無限大の可能性があると思っています。魔法はまさに想像力。いろんなことを可能にする、不思議で、そして素敵なものです。それをこの世界のみなさんにもっともっと発展させてもらいたいと考えています」

 フェリクスは魔力量が多かったからというのはあったが、魔王を倒すことができた。異世界からチートを持つ人を召喚しなくても、この世界の人たちでもやれるのだ。この世界の人々にはその可能性がちゃんとある。
 俺はその可能性をたくさんの人に知ってもらいたかった。

「みなさんで作っていきましょう。この世界の新しい魔法を。この世界の未来が明るいものになる素敵な魔法を。どうか俺に、みなさんの可能性を見せてください。楽しみにしています」

 俺の挨拶が終わると盛大な拍手と共に『賢者様!』や『雷神様!』という声が上がった。だから雷神様はやめてくれと言っているのに……
 これ以上はいたたまれないと壇上を降りようとしたのだが、フェリクスが『ちょっと待って』とジェスチャーで俺を留める。
 なんだ? 挨拶は終わったぞ?
 不思議がる俺を余所に、フェリクスは壇上へ上がってくるとにっこりと微笑んだ。
 え、やだなに? 嫌な予感がするんだけど……

「ここでみなさんに開校記念としてお見せしたいものがあります。あちらをご覧ください」
 
 フェリクスがにこやかに話だし、そして軽く手を振る。その次の瞬間、何もなかった場所にいきなり巨大な銅像が現れた。

「……は? はぁぁぁぁぁぁぁぁ!? お、おまっ……! あ、あれ!!」
「ふふふ。びっくりしたでしょ? ソウタの銅像だよ」

 そこに現れたのは俺の銅像。指を一本天に向けて勇ましい顔で立っている、俺の銅像。
 こいつ! 俺に内緒でこんなものを用意しやがったのか! しかもバレないように隠ぺいの魔法を使って!

「こちらは開校記念像として、王都の職人が作り上げた逸品です。題名は『雷神』。この学校の卒業生から次の雷神が現れることを望みます。みなさん、ぜひお互い切磋琢磨して楽しい学校生活を送ってください」

 フェリクスが爽やかにそう宣言すると、俺の時以上の拍手が巻き起こった。
 なんてことしやがる!! 最後の最後にこんな恥をかかされるとは思わなかった!!

「ソウタはみんなの希望なんだよ。これくらいは当然なんだから」
「だからって! 『雷神』なんて恥ずかし過ぎるんだよ!」

 中二病を全開にした過去の俺の馬鹿ぁぁぁぁぁ! 黒歴史が残り続けてるじゃないかぁぁぁぁぁ!!

「でもみんな嬉しそうでしょ?」
「くそっ……」

 俺は恥ずかしくてたまったもんじゃないが、フェリクスの言う通りみんなの顔はいい笑顔だ。ぐぬぬぬぬ……俺ひとり犠牲になれば済む話だ。ここはもう吹っ切るしかない!

「だー! もう! みんな、俺に続けーー!!」

 こうなったらやけっぱちだ!
 俺が拳を突き上げ大声で叫ぶと、会場からは「おー!」と元気な反応が返ってきた。
 みんながヤル気に満ちてくれるのなら、俺の黒歴史くらい受け入れてやる!

 こうして最後にとんでもないサプライズを発表されたが、式典は無事に幕を閉じた。
 空はどこまでも青く澄んでいる。これからのこの世界の未来を祝福しているかのようだった。








✿ ✿ ✿ ✿ ✿ ✿ ✿

最後までお読みいただきありがとうございました!

来月の10日ごろ、拙作『あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~』が

『欠陥オメガは孤独なα令息に愛を捧ぐ あなたと過ごした五年間』

と改題して、アンダルシュノベルズ様から書籍化していただけることになりました!

こちらの作品もどうぞよろしくお願いいたします!

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