上 下
5 / 13

5、ルカと大斗

しおりを挟む

「北……山?」

「あれ、三嶋じゃん!それにさっきのイケメンくんも!」

  入ってきたのは北山だった

「社長!コンパニオンの2人を紹介してくれるんじゃなかったんですか!?俺会えるのすっごく楽しみにしてたのに」

  北山はまさか俺達がコンパニオンだとは夢にも思ってないようだ

「てかなんでお前らがここにいるんだ?ここ、芸能事務所だぞ?イケメンくんはまだしも三嶋まで」

「どういう意味だよ北山」

  まぁ、俺はお世辞にもイケメンとはいえない顔だし分かるが

「取り消してください、今の言葉」

  大斗が口を開いた

「大斗、いいんだ。俺も別に本気で怒ってるわけじゃ……」

  大斗は俺の言葉も聞かずに北山の胸ぐらを掴んで言った

「取り消せよ!」

  そんな俺らのやり取りをみていた社長が

「この2人がコンパニオンだよ」

  と独り言のように呟いた

「えぇ!?」

  北山は目を見開いて俺と大斗を交互にみた
  大斗はまだ北山の胸ぐらを掴んだままだった





「大斗、離せ」

  俺は大斗に呼びかける
  大斗は俺の声が聞こえていないのか顔を真っ赤にして掴んだままだ

「大斗!」

  俺の大声に大斗はビクッと驚きやっと北山を離した
  大斗は俯いたまま拳を強く握っている

「北山、悪い」

  黙ったままの大斗に変わって俺が北山に謝った

「なんでユートさんが謝るんすか!?」

  北山が悔しそうにこっちをみる

「お前が俺のユニットの相手だからだよ」

  そう言うと大斗は少し戸惑った後

「ルカさん、すみませんでした」

  と頭を下げた

「いいよいいよ、そもそも俺がお前をからかったのが悪いんだし」

  そして北山は笑って言った

「それよりさ!お前が大斗なんだよな!?俺さ、大斗の高音!あんなに高い声だせるの、羨ましくてさ!俺に教えてくれないか!?」

  大斗はあきらかに嫌そうな顔をして俺の方をちらっとみた
  俺は目でさっきの事もあるし、受け入れろと合図した

「い、いい、です、よ」

  北山はいやいや言った

「はは、お前は正直だな。じゃあ社長、俺達は向こうの部屋で練習してきます」

  大斗と北山はそうして部屋を出ていった

「じゃあユート、お前先に練習しとけ」

「はい」

  社長にそう言われて俺は先に練習を始めた





「ユートさん、俺やっぱりあいつのこと嫌いです」

  帰り道、大斗は俺にそう話しかけてきた

「なんでだよ、お前ら仲良さそうにしてたじゃないか」

  実際、俺が大斗と北山を見に行く度にちょっと距離が近い気がした

「そんなわけないじゃないですか!ルカも俺のこと嫌ってますし」

  いつの間に呼びすてにするほど仲良くなってたのか
  ん?なんか心臓のとこが痛いな

「そうか?まぁ、俺としてはお前らが仲良くしてくれたら嬉しいけどな」

「なら、なるべく、仲良くし、し、します、」

  つまってるけどな?

「あの、ルカってユートさんのこと好きなんですかね?」

「は!?急に何言ってんだ、お前」

  そんなわけない、というかそんな風に見えたことがない

「そんなはずないだろ」

「どうだかなぁ。ユートさん、鈍いもんな」

  鈍い? どこがだよ

「てかさ、大斗」

「はい?」

  本当は言おうか迷った

「俺のことも呼びすてで呼んで、タメで話してくれよ」

「……え?」

「いや、ほら、その方がユニットっぽいし、ほら、だから、その、だな、」

  やっぱり言うんじゃなかった
  めっちゃ恥ずかしい

「いや、やっぱりなしだ、なし。」

「ユート、好きだ」

「……っ!?」

  なんでそうなるんだ!

「ありがとう、ユート。俺嬉しい」

「お、おう」

  なんか少し照れくさいな





「三嶋!おはよ!」

「北山。お前、昨日は驚いたぞ」

「あー、俺もだ。まさかお前がな」

  まさかこいつがルカとは誰も思わないだろ
  って、それは俺も同じか

「三嶋、今日もレコーディングしに行くのか?」

「いや、今日は大斗だけだ」

「そっか。なら俺も行こっかな」

  なんで大斗が行くなら行くんだよ!
  くそ、この前から心臓の辺り痛いのなんなんだ

「まぁ、いいんじゃないか」

  やけになった俺は適当に返事を返して教室に向かった
しおりを挟む

処理中です...