『潮が満ちたら、会いに行く』

古代の誇大妄想家

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 次の日、僕とお父さんとジンさん、それと木を切る事が得意なウドさんが、白い石と、丸ごととれそうな木がある崖に行った。
「今にも倒れそうだな。でも、根っこがしっかり張ってあるから、そう簡単には一本丸々とはいかなさそうだな」
 ウドさんが剥きだしとなっている木の根を触り、地面を尖った石器の付いているヤリ先で、少し掘ってから呟いた。
「無理そうでしょうか?」
 僕が不安げに尋ねると、ウドさんは掘った後の土を指でつまみ、唾を吐いて土を湿らせた。
「いや、この土は水を含むと脆くなりそうだ。この崖も、雪解け水で自然と崩れたんだろう」
 ウドさんは僕の方を見て、ほほ笑みながら言った。
「あとは、誰がどの役目をするかですね」
 ジンさんは、さもやることに決まったかのようにお父さんに話しかけた。
 お父さんは、悩んでいるようだった。僕にはまだわからない、酋長としての『責任』の重さを感じているのだろう。
 結局、お父さんはその場で決めずに、「村に戻って、もう一度みなと相談する」と言った。僕も一緒に村に戻ったけれど、大人たちだけの話し合いになって、僕だけ話し合いの場に参加させてもらえなかった。
「ま、大丈夫だと思うぞ?」
 ウドさんが、僕の肩を叩いてから話し合いの場に向かった。
 僕は一人で家に戻ると、お兄ちゃんが一人で座っていた。
「カラ、あまりお父さんを困らせるな」
 どうやら、お兄ちゃんは少しばかり怒っているようだった。
「でも、ジンさんたち大人も賛成してくれたんだよ?」
 僕が反論すると、お兄ちゃんは一度口を開こうとしたけど、また口をつぐみ、黙ってしまった。
「お兄ちゃんは反対なの?」 
 僕の言葉に、お兄ちゃんは「そうじゃないけどな」と、歯切れの悪い言い方だった。
「どうなの?」
 僕が詰め寄るように尋ねると、お兄ちゃんは「お前はまだ、『責任』を知らないんだ」と言い、立ちあがって家の外に出て行ってしまった。
 家に一人残された僕は「責任って、どうやって知ればいいのさ」と言い、何だか腹が立った気分になった。
 僕はお兄ちゃんの言うとおり、『責任』をとる立場になった事は無い。でも、いつかは『責任』をとる立場になる事があるのだ。その立場になるまで、僕は知りたくとも、背負いたくとも『責任』をとり、持つ立場になれない。ならば、どうやって『責任』を知ればよいのだろう。
 僕は横になり、未だ体験した事のない『責任』という重さを、ただ空想する事しか出来なかった。

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