『潮が満ちたら、会いに行く』

古代の誇大妄想家

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僕は入江でサキさんから聞いた『レイの排便の臭いを消す薬草』を三内周辺でアマさんらと探し、土器の中で茹で、湯気が立ったまま宿泊所の中に持ち込んだ。
しばらくして、湯気にかき消されたのか、臭いがだいぶ少なくなったように思えた。
「ああ、助かったよ。あいつらはもう出禁にしてやりたいよ」
ハキさんは疲れ切った顔で、僕たちにお礼を言った。
「三内に来る途中に人に会って聞いたんですけど、二年後に交代するらしいですね」
 僕が尋ねると、ハキさんは「そうだな。これでやっと、アマと静かに暮らせるさ」と答えた。
「お前に、子供はいないのか?」
 ウドさんが尋ねると、ハキさんは「いないさ」と、少しぶっきらぼうに答えた。
「アマに一人で子育てをさせられないし。しても俺は子供に会えない。アマと結婚したのは去年だが、頻繁に会えるわけでもない。三内の維持・管理も大変なんだ」
 ハキさんは湯気の少なくなった土器の中身を覗き、「これって飲んでも大丈夫か?」と尋ね、僕は「飲めますよ」と答え、アマさんが器を持ってきた。
「私は面白いものがたくさん見れて嬉しいけど、やっぱり夫婦で一緒に暮らすのが一番だと、私は思ったわ」
 アマさんはそう言って、ハキさんの肩に手を置いた。
「さて、二年後、数年後、ハキには何人の子が出来るか楽しみだ」
「そうですね。三内で得た知識を使えば、妊娠中の食事や精のつく薬草、出産の前後も安定した生活を送れそうですね」
 ウドさんが揶揄う様に言い、ロウさんは当然のような口ぶりで二人に言った。
「おいおい、揶揄うなよ」
 ハキさんはそう言ったが、アマさんは嬉しそうに顔を赤くしているだけだった。
「まったく、いいよなぁ」
 ラドさんだけ、少し離れた場所で二人を見つめていた。
 臭いが少し残る宿泊所で一泊した次の日、僕たちは秋頃に秋田の人たちと再会する大体の時期を話し合い、それぞれ村に帰る事となった。
「カラとロウは完全に顔を覚えたんだ。三内に来る人間の顔と名前を完全に覚えているのは、十人くらいしかいないんだ。会えなくなったら、寂しいもんだ」
 ハキさんは本心から言っている様で、僕はハキさんの本来住んでいる村の場所を、詳細に尋ねた。
「来ても、何も面白い物はないぞ?」
 ハキさんはそう言ったが、僕は「いいえ、ハキさんが面白いから行きます」と返した。
「何を言ってやがるんだ」
 ハキさんは乱暴に、僕の頭を撫でた。

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