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26 魔物の罠ですね
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「くそっなんだこれは……!」
「うわあ!」
あちこちで騎士たちの悲鳴が聞こえる。
「やったあ、隠し扉発見!」
「あ、だめだよリン! またいきなり開けたら……」
ドオン! と激しい音が鳴り響き、辺り一面が土ぼこりに覆われた。
「――全く。一体ここはなんだんだ……」
安全を確認した部屋で休憩するとカルヴィンはため息をついた。
「ダンジョンじゃないですか」
リンが答えた。
「ダンジョン?」
「強い魔物やお宝がたくさんあるんです。向こうの世界では定番ですよ」
「向こうの世界に魔物はいないのではないのか」
「ゲームの中にはうじゃうじゃいますよ」
リンは皆がぐったりしている中、一人楽しげに周囲を見渡した。
「ここには魔物はいないみたいだけど。でもやっぱりダンジョン探索はRPGの醍醐味よね!」
「殿下」
あきれた顔でリンを横目で見ていたカルヴィンにアリスターが歩み寄った。
「これはおそらく、魔物の罠ですね」
「罠?」
「この建物の中のあらゆる場所から同じ魔力を感じます。幻術によってこの迷路を作り出しているかと」
「幻術だと」
カルヴィンの眉がぴくりと動いた。
「……魔物はこんな巨大で高度な幻術を生み出せるのか」
「ええ。驚きました」
アリスターはため息をついた。
「我々は魔物を侮っていたようです」
孤島に不審な城があるという情報を得たのは十日ほど前のことだった。
魔物が多い、人の住めるような土地ではない島にある怪しげな城。
第二王子カルヴィンをリーダーとする一行がこの島に到着したのは二日前のことだった。
一行は二日かけて城までたどり着いた。
その間何体もの魔物を見かけたが、彼らはこちらを襲うことなくじっと見つめていた。
聖女を辞めたいと訴えるリンに、聖女としての役目を継続させる代わりに不要な魔物討伐はしないと約束したため、襲ってこない魔物をこちらから攻撃することはできない。
逃げることなくこちらを見続ける魔物の、不気味な視線を感じながら一行は城の中へと入った。
城の扉を開くには同行した魔術師たちが全魔力を注ぎ込まなければならなかった。
なんとか入ることができた城は薄気味が悪い空気に満ちていたが、生き物の気配はしなかった。
「何もいないのか?」
誰かがつぶやいたその瞬間、入ってきたはずの扉が消えた。
「なんだこれは!」
「罠か!?」
「ええ、すごい!」
「落ち着け!」
リン以外の全員が動揺し、パニックになりかけたのをカルヴィンの一喝で収め、脱出を試みた。
けれど扉はどこにも見当たらず、仕方なく前へと進もうとしたのだが、あちこちに落とし穴や隠し通路などが仕掛けられ、まるで迷路のような城内を半日ほどさまよい続けていたのだ。
「幻術……『魔王』か?」
「さあ、そこまでは……。ですが、我々人間の魔術師ではここまでのものを作るのは不可能です」
カルヴィンの問いにアリスターはため息とともに答えた。
これまで魔物というのは動物に似た存在だと思われていた。
異世界からきた聖女リンは「魔物とそれ以外の生物の違いが分からないんだけど!」と憤慨していた。
魔王というのは強大な力を持つとされていたが、このような建造物の幻を作れるとは。
(人間には作れないものを作るということは、少なくとも魔王は……人間より上位の存在だというのか)
カルヴィンは内心焦りと恐怖が入り混じった嫌な感覚を覚えた。
「……しかし、ここには本当に魔物はいないのか」
「おそらく。全く気配がありません」
アリスターは答えた。
「一旦外に出たほうがいいか。……出口が見つかればだが」
「そうですね」
「……僕たちここから出られないのか?」
カルヴィンたちの会話を聞いていたロイドが言った。
「まあそう簡単には出られないだろうけど、方法は必ずあるでしょ」
リンはそう答えた。
「なんでリンは楽しそうなの?」
「だってリアルダンジョンよ! テンション上がるに決まってるじゃん!」
「……そうなんだ」
「お宝あったらいいわよね。楽しみだわ」
「楽しみ……なんだ」
期待に目を輝かせるリンに、ロイドは顔をひきつらせた。
「うわあ!」
あちこちで騎士たちの悲鳴が聞こえる。
「やったあ、隠し扉発見!」
「あ、だめだよリン! またいきなり開けたら……」
ドオン! と激しい音が鳴り響き、辺り一面が土ぼこりに覆われた。
「――全く。一体ここはなんだんだ……」
安全を確認した部屋で休憩するとカルヴィンはため息をついた。
「ダンジョンじゃないですか」
リンが答えた。
「ダンジョン?」
「強い魔物やお宝がたくさんあるんです。向こうの世界では定番ですよ」
「向こうの世界に魔物はいないのではないのか」
「ゲームの中にはうじゃうじゃいますよ」
リンは皆がぐったりしている中、一人楽しげに周囲を見渡した。
「ここには魔物はいないみたいだけど。でもやっぱりダンジョン探索はRPGの醍醐味よね!」
「殿下」
あきれた顔でリンを横目で見ていたカルヴィンにアリスターが歩み寄った。
「これはおそらく、魔物の罠ですね」
「罠?」
「この建物の中のあらゆる場所から同じ魔力を感じます。幻術によってこの迷路を作り出しているかと」
「幻術だと」
カルヴィンの眉がぴくりと動いた。
「……魔物はこんな巨大で高度な幻術を生み出せるのか」
「ええ。驚きました」
アリスターはため息をついた。
「我々は魔物を侮っていたようです」
孤島に不審な城があるという情報を得たのは十日ほど前のことだった。
魔物が多い、人の住めるような土地ではない島にある怪しげな城。
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一行は二日かけて城までたどり着いた。
その間何体もの魔物を見かけたが、彼らはこちらを襲うことなくじっと見つめていた。
聖女を辞めたいと訴えるリンに、聖女としての役目を継続させる代わりに不要な魔物討伐はしないと約束したため、襲ってこない魔物をこちらから攻撃することはできない。
逃げることなくこちらを見続ける魔物の、不気味な視線を感じながら一行は城の中へと入った。
城の扉を開くには同行した魔術師たちが全魔力を注ぎ込まなければならなかった。
なんとか入ることができた城は薄気味が悪い空気に満ちていたが、生き物の気配はしなかった。
「何もいないのか?」
誰かがつぶやいたその瞬間、入ってきたはずの扉が消えた。
「なんだこれは!」
「罠か!?」
「ええ、すごい!」
「落ち着け!」
リン以外の全員が動揺し、パニックになりかけたのをカルヴィンの一喝で収め、脱出を試みた。
けれど扉はどこにも見当たらず、仕方なく前へと進もうとしたのだが、あちこちに落とし穴や隠し通路などが仕掛けられ、まるで迷路のような城内を半日ほどさまよい続けていたのだ。
「幻術……『魔王』か?」
「さあ、そこまでは……。ですが、我々人間の魔術師ではここまでのものを作るのは不可能です」
カルヴィンの問いにアリスターはため息とともに答えた。
これまで魔物というのは動物に似た存在だと思われていた。
異世界からきた聖女リンは「魔物とそれ以外の生物の違いが分からないんだけど!」と憤慨していた。
魔王というのは強大な力を持つとされていたが、このような建造物の幻を作れるとは。
(人間には作れないものを作るということは、少なくとも魔王は……人間より上位の存在だというのか)
カルヴィンは内心焦りと恐怖が入り混じった嫌な感覚を覚えた。
「……しかし、ここには本当に魔物はいないのか」
「おそらく。全く気配がありません」
アリスターは答えた。
「一旦外に出たほうがいいか。……出口が見つかればだが」
「そうですね」
「……僕たちここから出られないのか?」
カルヴィンたちの会話を聞いていたロイドが言った。
「まあそう簡単には出られないだろうけど、方法は必ずあるでしょ」
リンはそう答えた。
「なんでリンは楽しそうなの?」
「だってリアルダンジョンよ! テンション上がるに決まってるじゃん!」
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「お宝あったらいいわよね。楽しみだわ」
「楽しみ……なんだ」
期待に目を輝かせるリンに、ロイドは顔をひきつらせた。
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