おまいら助けてくれないか?ってスレ立ててみた

日暮 千疾

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小話 ある親子の争い・君を、想う

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ある親子の争い


 お母さん
 
 親父の口から出た言葉に俺は思考が止まった。いっしーが消えた場所に縋る様にうずくまり、幼い子供のような発音で親父が繰り返す「お母さん」をただ呆然と聞く。

 お母さん?
 いっしーが親父の?
 
 そう思うと同時に俺は動いていた。

 「どうゆうことだよ親父!」

 親父のスーツの襟元を強引に掴み立たせ、手はそのままに詰問した。ならそこに居るばあちゃんはなんなんだよ、そう言いそうになるのを必死に堪える。

 「お前こそ! なんでお母さんと一緒にいる!? どこで会った?! あの時のままだが、あれは! あれは私の母だ!!」

 親父は問いかけに答える事なく、興奮した様子で俺の胸ぐらを掴み返してくる。傍から見ればガチの親子喧嘩そのままだ。
 
 まともに起動してきた思考で、俺は思う。


 ああ、今夜は長い夜になりそうだ。

 


 ――――――――――

 君を、想う




 拉致られたこと? ああ、話したことあるよー。

 はっきり言って信じてもらえるとは思ってなかったし。バカにされようが痛い人と思われようが、こいつにだけは、いや、こいつだから、知っていて欲しいと思ってね。うん、信じなくても。

 正直、超ビビってた。俺の話しを聞いたこいつの目がどんな感情を映しているか知るのが怖くて、視線を伏せたままで言葉を待っていると、あいつ、あっけらかんとした声で言いやがったのよ。

 ねえ、続きは? それからどうなったの?って。

 まさかの反応だったね。これはさすがの俺もたまげたわ。なんか信じる信じないとか気にしてたのがバカみたいに思えて、どうでもよくなっちゃったよ。ん? ああ、勿論ちゃんと続きも話したよ。少し休憩っていって焦らしたら、あいつずっと引っ付いて早く早くってせがんでたもんだから危うく俺の理性が崩壊しかける一大事が水面下で勃発してたね。

 すんません、ちゃんと答えます。すみませんっごめんなさい。

 んで次は俺が還ってからのことを話したんだ。んー、まずは親父とガチ喧嘩しそうになったりー、って大丈夫大丈夫! 親父も俺も少し混乱してただけで特になんもなかったし!うん、すぐ冷静になったから!
 正直言うと、俺、知らなかったんだ。祖父ちゃんも、親父も、なにも言ってくれなかった。ごめん、言い訳だね。ただ、なんで親父は同居してんだろなって疑問は感じてた。え、だって祖父ちゃんと親父、仲悪いし。
 違う違う、逆だね。完全にお互いのこと無視してた。あー、聞こうとしたことあるけど、親父にすんげえ怖い顔で睨まれて撃沈した。ヘタレ言わないで! 親父超怖いんだって、まじで!

 話し戻すよ? あの後リビングで親父と二人でちゃんと話しあって、そんでやっと知ったわけ。
 もう完徹。しかも親父そのまま仕事行ったし。俺? お休みしました! 戻ってすぐだったし、少し考えを整理したかったからね。ズル休みちゃうから。 
 それからは……仕事行きながら、色々調べてみた。……うん、行ってきた。お姉さん、俺からしたら大伯叔母になるのかな? 元気そうだったよ。 いきなり訪ねた俺のことも疑わずに家の中に入れちゃってさ、こっちがある意味心配しちゃった。初対面ですよ!って。 
 うん、色々聞けた。一目惚れでガッツンガッツン押しまくったんだってねえー、すごい意外だったなー。あはは、照れない照れない、俺も同じだし。そうか、これは遺伝だったんだ!
 
 ……言おうか? ん、分かった。聞ける準備ができるまで待つよ。あ、ついでに大伯叔母はずっと独身だってさ。ちょ、なにその、だろうなってドヤ顔っ! それはあんまりじゃない?! 姉妹ってこんな殺伐としたもんなの!? 兄弟への夢ぶっ壊れちゃうからやめて!
 俺? 一人っ子だよー、可愛い妹とか欲しかったけどこればっかりはしょうがない。親父も一人っ子だし、親戚少なくて寂しかったもんだよ。主にお年玉とか。どしたの驚いて。え、居ないから。親父には腹違いの兄弟も存在しないよ。   
 まあ、その反動で俺は子供四人作っちゃいました! キリが悪いから五人にしようって言ったけどあいつが勘弁してくれ、もう無理って。俺は泣く泣く諦めたね。子作りが好きなだけって? はっはっは、子作りも勿論大好きだけど子育ても好きだよ。……チート使っちゃいましたけどね! 寝かしつけの学とは俺のことです。まじ術式助かりました。ズルじゃありません。有効利用です。
 てか随分話し脱線しまくったね。他にはなんか聞きたいことあるー? この際だから一杯聞いちゃって。

 ぶはっ! ちょ、なに、よりによってそれ聞いちゃう?! さすがに気が引けるっつうか……さいですか。
 
 あいつだったから俺は、男として夫として父として、そんでじいちゃんとして最高に幸せだったよ。

 こんなもんでもう許して。すっごい恥かしい、超恥かしい。耳まで真っ赤とか気付いてても言わないで! 本当、勘弁して下さい。

 ……だから、安心してね。俺は何かを我慢してここに居る訳じゃない。俺はあっちで全力で生きて、全うした。待たせちゃったけど、今度はこっちで全力を尽くすまでだよ。うん、頑張ろう。
 
 そんでさっさと終わらせて、ばあちゃんの再婚相手でも見つけよっか。お断り? 人生なにがあるか分かんないもんだよ、ほら、また一目惚れしちゃうかもだし? あははは、照れない照れない。

 んじゃそろそろ行こっか。

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