光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!

ほんわか

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第172話 強制イベント

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闇夜の舞踏会の聖女イベントが起こらなかったことに、ミリアはこれから先の未来が自身のバッドエンドへと進んでいくことを悟り、その場で泣き崩れていた。

ヒカリは、ミリアがなぜそこまでヒロインであることに固執しているのか理解できないでいた。

(やりようはいくらでもあるはずなのに……)

ヒカリには、ミリアが選べる道は他にもたくさんあるように思えた。聖女イベントに固執するあまり、他の可能性を見失っているように感じられたのだ。

強制イベント:漆黒の矢
会場内は落ち着きを取り戻したその時、突如として漆黒の矢が現れ、ヴォルグへと放たれた。

(え?なにこれ)

ヒカリは戸惑いながらも、すぐさまヴォルグに向かってシャインシールドを展開する。ヴォルグに矢が到達する前に、彼の前に光の盾が現れた。

(間に合った……!え?)

漆黒の矢が光の盾に当たったかに見えたが、矢は光の盾をすり抜け、ヴォルグの左腕に突き刺さった。

「ぐ!」
ヴォルグはあまりの痛さに膝をつき、うずくまる。
すると、今まで泣き崩れていたミリアがスッと立ち上がると、まっすぐヴォルグへと歩みを進めた。

「ヴォルグ団長、大丈夫ですか?」

「ひ、左腕が……」

ミリアはすぐに左腕の治療に取り掛かるが、ヴォルグの痛みは消えない。

「な、何故キズは塞がったのに……」

(あれ、このセリフって……)

ヒカリはミリアとヴォルグのやり取りをどこかで見たことがあったような気がした。

「ぐ……、左腕には呪いが……」
ヴォルグが苦しそうに絞り出す。

「分かりました」
ミリアは毅然とした表情でヴォルグの左腕に解呪の魔法を唱える。すると、ヴォルグの左腕が金色の光に包まれた。

金色の光が収まると、ヴォルグは驚いた顔をする。

「な、呪いが消えている……」
周りの貴族たちがざわついた。

ヒカリの中では、現状が全く理解できていなかった。
(え?呪いはクラリスが治したはずだよね?なんで……さっきの矢で呪いをもらった?……やばい……)

ヒカリの脳裏に、ある恐ろしい可能性が思い浮かんだ。
(やばい、やばい、ヒロイン補正だ!)

(今の下りって、闇夜の舞踏会の聖女イベントだ!)

ヒロイン補正を目の当たりにしたヒカリは絶句していた。ヒロイン補正があまりに強すぎることに。

ヒカリは、自分がゲームの世界にいることを再認識させられた。いくらシナリオを改変しようとしても、「ヒロイン」としてのミリアの立ち位置を強制的に補正する力が働いているのだ。

(まさか、聖女イベントが強制発動されるなんて……!しかも、俺のシャインシールドをすり抜けて、ヴォルグに呪いをかけるとは……)

ヒカリは、自分の防御魔法が破られたことに驚きを隠せない。一般的な物理攻撃ならともかく、呪いを込めた攻撃を防ぎきれなかったのは、完全に想定外だった。

「ミリア様……!本当にありがとうございます!」
ヴォルグが立ち上がり、ミリアに深々と頭を下げる。

彼の顔には、苦痛から解放された安堵と、ミリアへの感謝の念が満ちていた。

会場の貴族たちも、ミリアの奇跡のような力に感銘を受けている。ざわめきは、称賛と驚嘆の声へと変わっていった。

「まさか、これが聖女の力……!」

「ミリア様は、真の聖女様だ!」

そんな声が、会場のあちこちから聞こえてくる。ミリアは、皆からの称賛を浴び、自信に満ちた表情で頷いていた。

(これよ……!この感覚よ……!)

ミリアの心には、失われていたはずの優越感と達成感が満ち溢れていた。彼女は、再び聖女としての輝きを取り戻したのだ。

ヒカリは、クラリスの隣で呆然と立ち尽くしている。
「ヒカリ……今の、どういうこと?」

クラリスが不安そうにヒカリを見上げた。彼女には、目の前で起こった現象が理解できないのだろう。

「ごめん、クラリス。後でちゃんと説明するよ」
ヒカリはそう言って、改めてミリアを見つめる。

ヒロイン補正という、ゲームシステム的な力が働いている以上、半端な対策では意味がない。

(こうなったら、徹底的にやるしかないな……!)

ヒカリの心に、新たな決意が宿った。ミリアの聖女としての地位が確固たるものになれば、それだけ彼女の言動が周囲に与える影響も大きくなる。それは、場合によってはクラリスにとって危険な状況を生み出す可能性も秘めている。

(聖女イベントが強制発動されるなら、俺は俺で、それに合わせた対策を立てるしかない。ミリアが聖女として表舞台に出るなら、こっちもそれなりの手を打つ必要がある)

ヒカリは、冷静に今後の展開を予測し、自身の行動を決めようとしていた。ヒロイン補正が働く以上、ミリアを完全に排除することは難しいだろう。ならば、彼女が暴走しないように、あるいは暴走しても対処できるように、こちらが力をつけていくしかない。

「陛下、賊は完全に退却しました。しかし、ヴォルグ団長が負傷されましたが、ミリア様の御力で呪いは解除されました」

ハリスが国王に報告する声が聞こえてくる。国王は、ミリアの活躍に満足げな表情を浮かべていた。

「うむ、聖女ミリアお主の功績は、この王国にとって計り知れないものだ」

国王の言葉に、ミリアは再び深々と頭を下げた。彼女は、この瞬間を心待ちにしていたのだ。

舞踏会の終盤に起こった予期せぬ事件は、ミリアの運命を再びゲームのシナリオへと引き戻した。そして、それはヒカリにとっても、新たな戦いの始まりを意味していた。
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